霜河ジュンの回想・2
その夜も、霜河ジュンは思い出そうとしていた。
ミキヒコが何故狂ったのか。
それをどうしても、彼女は思い出せなかった。
ある日突然、彼は狂った。
ジュンの身からすれば、そのようにしか感じられなかったのだ。
ミキヒコが狂う前日、学校から帰る時は何も変わっていなかった。
一緒に帰路を歩き、いつもの様に別れの挨拶をして。
何も変わらない、いつもの二人のやりとりだった。
なのに、その翌日から彼は狂った。
「……何で?」
ジュンは苛立っていた。
彼が狂った理由を、彼に一番近いはずの自分が知らないということに。
そして、今の彼が、石津サキと逢瀬を重ねていることに。
「ミキヒコがおかしくなったのと、サキとくっついた時期はほぼかぶってる……けど」
けれど、サキが原因ではない、と、ジュンは思っていた。
何故かわからないが、それだけは確信が持てたのだ。
その瞬間。
「……っ!?」
ジュンは、全身が氷のように冷えるような感覚を覚えた。
ゾッとして、そのまま黙ってしまう。
そう、まるで
――その先を考えることを、自身の全てが止めているような、そんな気がして。
「――――ミキヒコ……」
彼の名を呼ぶことしか出来なかった。
まるで救いを求めるかのように。