1/4
霜河ジュンの回想
霜河ジュンは、鈴鹿ミキヒコが狂っていることを、知っていた。
それは二人が初めて出会った小学三年生の夏、女子生徒が校庭で遊んでいた時、一人だけ男子生徒のような短髪だったジュンのことを、ミキヒコが校舎の窓からじっと、20分間の休み時間が終わるまで、その分厚いメガネの奥から見つめていた時から。
霜河ジュンは、学級委員の鈴鹿ミキヒコが狂っていることを、知っていた。
それは中学一年生の冬、ジュンが所属していた陸上部の大会で、客席に「授業を受けているはずの」ミキヒコがさも当たり前のように座っているのを見た時から。
霜河ジュンは、放送部部長の鈴鹿ミキヒコが狂っていることを、知っていた。
それはつい先日、高校三年生になったばかりのジュンに、ミキヒコが耳障りなノイズしか鳴らないCDを満面の笑顔で手渡した時から。
霜河ジュンは、鈴鹿ミキヒコが狂っていることを、知っていた。
霜河ジュンは、鈴鹿ミキヒコを狂わせたことも、知っていた。