格付け試験
「ふむ、では少年よ。ここで少し待っておりなさい」
そう言った学院長はファビオラさんを連れてどこかへ行ってしまった
(いきなり試験って言われてもなぁ・・・一体何をするんだろう?やっぱり魔法が使えないっていうのは大きいよな・・・でも、出来るだけのことはしないとな!)
そんなやる気と不安の入り混じった不安定な感情のまま待つこと数分
「君が奈鶴君だね?私は、ビビアナ。よろしくね」
突然若い女性が部屋に入って来て挨拶してくる
たぶん人間族なのであろう
西洋の地球人と殆んど変わり無い
ただ、物凄く美人である
身長は165~170cmと高く、スカートから露出する長い足
艶やかな長い茶色の髪に、茶色の瞳
地球であったら絶対トップモデルになっている
「よ、よろしくお願いします」
「じゃあ早速、闘技場のほうへ行きましょう。ついてきて」
そう言うと廊下のさらに奥へと歩き始めるビビアナさん
さっきの魔方陣のようなものが描かれたエレベーターのようなものがずらっと並んでいる部屋に着いた
「じゃあ、ここに乗って」
そのうちのひとつに乗り込む
「テレポート」
またしても、光に包まれる、必然的に僕は目を瞑ってしまう
目を開けるとそこは石作りの神殿のような場所にいた
「よし、じゃあまずはこれを持って。君の魔力保持量を測らせてもらうわね」
「えっ?」
いきなりのことで何がなんだかわからない
「もう試験は始まってるのよ~ほらほら~持った持った~」
「え、あっ、はい」
握りこぶしくらいの透明の水晶のような物を持たされた・・・その時
パリーン
水晶が僕の手にのった瞬間、粉々に砕け散ってしまった
「っうわ!」
破片が辺りに飛び散る
「え、えっと・・・割れちゃったんですけど・・・」
「・・・・・・。」
急に黙りこくってしまうビビアナさん
(やばい、すごい高級なものだったとかか?)
急に不安が襲ってくる
「・・・うん、よし!いい魔力を持っているね君!」
「え、えっと、コレ壊れちゃって大丈夫だったんですか?」
粉々に飛び散った水晶を指さしながら問いかける
「あぁ~そんなのどうせ安物だから大丈夫、大丈夫!」
(ふぅーよかったぁ)
もしこれが超高級品とかであったら僕の入学は取り消しなんてこともあるかもしれない
「よし次は、私と実戦です。最初は魔法なしで戦ってもらって、その後に魔法のみで戦ってもらいます。まぁ試験の内容はこれだけだから安心して。武器はそこにあるもの自由に使っていいから」
色々と並べられた武器という武器
全て木製ではあるが木刀のようなものや棍棒のようなもの、さらには矢が木で出来ている弓まである
(これは流石に危ないんじゃないか・・・?)
「え、えっと実戦ってビビアナさんと僕がですか?」
仮にも相手は女性だ、それに美人だし・・・
「そうよ、私じゃ不満?」
「いや、不満とかじゃなくて・・・危ないなと・・・ビビアナさんを傷つけてしまうかもと・・・」
「へぇ~君、面白いこと言うのね?その点は心配しなくていいわ。私を殺す気できなさい。私もそのつもりでいくから」
満面の笑みを浮かべながら物凄く怖いことを言っている・・・
「私はこれでいいわ」
そういって一本の木刀を手に取るビビアナさん
「えっと、じゃあ僕もそれを」
僕も木刀を手に取る
「それじゃあ、こっちに来て」
木刀を持った僕たちはそのまま神殿の奥へと進んでいく
少しいった所で大きな石の扉が現れる
ドガーン
「っ!?」
一瞬何が起こったのかわからなかった
ビビアナさんがその扉に向けて手をさしだしたところまでは理解できる
そしたら次の瞬間、扉が粉々に・・・
「さぁ、早速始めましょう」
「え、えっと・・・今のもま、魔法ですか?」
(もしそうなら僕もあんな風に・・・)
考えただけでゾッとする
「えっ?ただ扉を殴り壊しただけだけよ?」
当然だといわんばかりにこちらを見て微笑む
あの笑顔は作り物だ・・・
「わかったでしょ?手加減は無用よ」
扉の中は丸く広いスペースとなっていた
全てが石でできていてとても頑丈そうなものとなっている
「では、今から試験を始めます」
高らかにビビアナさんが告げる
とほぼ同時であった
シュッ
目の前で空を斬る音
開始の合図とともに僕に斬りかかって来たのだ
(この人、今本気で殺しに来た)
今の一撃、躊躇の欠片もなく振りぬかれたものだと素人目にもわかる
シュッ
シュッ
シュッ
シュッ
幾度となく続く連撃
右に左に避けていく
そこには振られる木刀の動きを見極めることができている自分がいた
明らかにこの世界に来てから身体能力が上がっている
「へぇ~やるじゃない!じゃあ徐々にギア上げてくわよ」
そう言うとビビアナさんの剣を振るスピードが上がる
シュッ シュッ シュッ
徐々に余裕が無くなってくる
何も考えず後ろに後ろにと下がっていた為、壁際へと追いやられていく
ドンッ
背中が壁にぶつかる
それを見たビビアナさんは地面を蹴り一気に加速しながらこちらへ剣を振るってくる
その間ほんの0.01秒
ほんとに咄嗟の判断であった
僕は自分の右手にある木刀を自分へと向かってくる剣に向かい振りぬいた
バキッッ!!!!!!!!
「っいたたたた」
一体何が起こったのだろう
「なかなかいい動きだったじゃないか」
そこには何事もなかったかのようにビビアナさんが立っていた
「君の実力は把握した、異常で魔法無しの戦闘は終了だ。続けて魔法の戦闘をすることも可能だがどうする?」
そして何事もなかったように試験の話を繰り出してきた
「えっと・・・そのですね・・・」
「ん?どうする?」
「僕、魔法という類のものを1つも知らないんです」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ある程度の事情をビビアナさんに話す
「・・・では魔法による戦闘は棄権ということで結果を出すことにします。当然棄権というのはマイナスの評価となっちゃうけどそこは了解してね」
「あ、はい!それで構いません!」
「それじゃあ戻りましょう」
石の神殿を出てあのエレベーターのようなものを使い学院長室へ戻ってくる僕たち
「それじゃあ結果が出るまで少しここで待機していてね」
そういうとビビアナさんはまたどこかへ行ってしまった
僕はさっきの戦闘を思い返す
(あの時、咄嗟に木刀を振りぬいて・・・)
そこには折れた木刀が2本が床に落ちていて、僕の倒れていた場所の石が砕けていた
たぶん衝撃で後ろへと吹き飛ばされたのだろう
(でも、もう痛みは無いんだよな・・・身体能力だけでなく身体自身も強くなっているとか・・・)
その疑問を必死に考えながら結果が出るのを待つのであった
コンコン
「ビビアナです」
「入れ」
学院長のお許しを得て部屋へと入る
「それで、どうだった?異世界から来たという少年は?」
「はい、まず魔力の保持量は未知数です。水晶が割れてしまいました」
私がその言葉を発すると室内がどよめく
「次に魔法外戦闘のほうの結果も未知数です。私の剣の腕ではまともな一撃を入れることは出来ないと判断しました。また、既にお気づきの方もおられると思いますがたった1度私の振った剣をなぎ払われただけで私の右腕はつかいものにならなくなりました」
再びどよめく室内
「しかしですね、魔法が1つも使えないと言うもので魔法戦闘のほうは行っておりません。その為、魔法戦闘の結果も未知数です」
ガヤガヤガヤガヤ
”どうする?””この場合特例でSクラスなのでは””いや、しかし・・・”
そのような会話が室内を飛び交う
「ふむ、それでビビアナ君はどう思うのだ?」
学院長の一言で静まり返る室内
「私は彼の潜在能力、戦闘能力、魔法が使えないという欠点、その全てを考慮してBクラスが妥当だと考えます」
「ふむ、よかろう。東堂 奈鶴はBクラスとする」
「はい、ありがとうございます」
「以上で、会議を終了する!あとビビアナ君の怪我を治療してあげてくれ、カリーナ君」
「はい、わかりました」
会議が終了し室内から出て行く他の先生方
「フフ、良かったわねビビアナ」
治療をしてくれているカリーナが話しかけてくる
「何がだ?」
「東堂君のことよ、うまく自分のクラスに引き込めたじゃない」
どうやら彼女には全てお見通しらしい
「同じ水晶を壊したもの同士仲良くやっていけるんじゃない?」
「魔法の全てを1から叩き込める、こんな面白いことは他に無いわよ!私色に染められるのだもの」
「あらあら、大変そうね」
つい笑みがこぼれてしまう
(これからが楽しみだよ)