目が覚めたら
ドン
「っ、ぐわぁぁぁっ」
背中にものすごい衝撃が走る
(何がどうなってるんだ?)
突然の衝撃に目が覚める
「何だよ!?何だよここ!?」
辺りを見回すと一面木、木、木
(僕は自分の部屋で寝ていたはず・・・)
わけがわからない・・・
自分の格好は昨日シャワーを浴びた後に着替えた寝巻きのままだ
「落ち着け・・・まずは落ち着こう・・・」
そう自分に言い聞かせる
(もしかしたら・・・いや有り得ないよ・・・)
思い当たる節が1つある
でも、そんなこと有り得ない
異世界に飛ばされるなんて・・・まさかね・・・
しかし、現実に起きてしまっている
ベッドで寝ていたはずなのに周り一面木しかない
木漏れ日も見えないような深い深い森の中である
(とりあえず人を探そう・・・)
迷子になったときはその場で待機という教えがあるが今は違う
こんな深い森の中に人が来るとも思えない
僕はわけがわからないまま歩き出した
どれくらい歩いただろうか・・・
(1時間、いや2時間は歩いたんじゃないか?)
辺りの景色は全く変わらない
「・・・まずいな」
適当に歩いていれば森から抜け出せると思っていた
誰か他の人にも会えるであろうと思っていた
それどころか生き物という生き物もいない
聞こえてくるのは僕の足音だけだ
(喉も渇いてきた)
そんなことを考えていたときであった
ガサッガサガサッ
木の枝がが揺れる音がした
「っ!?」
つい驚いてしまう
木の上に目線を向ける
「・・・嘘だろ?」
そこには見たこともない大きさの鳥がいた
2メートル、いや3メートルはあるだろうか?
鷹とか鷲を近くで見たことはないがそんなレベルじゃないと思う
恐竜といってもいいくらいの大きさ
こんなのに襲われたらひとたまりもないだろう
幸いこちらには気づいてないようだ
足音をたてないように・・・
1歩2歩と下がっていく、その時だった
バキッ
落ちていた枝を踏んでしまう
キェェェェェェェェェェェ
(気づかれた!!)
勢いよく走り出す僕
その時、僕は自分の異常に気づく
自分が物凄いスピードで走っているのだ
体力に自信はあるほうだったし、足も決して遅いほうではなかった
でも明らかに異常なスピードである
5分ほどその異常なスピードで走り続けた
(撒いたか?)
立ち止まり目線を上へと向ける
「マジかよ・・・」
キェェェェェェェェェェェ
それに答えるかのように聞こえる雄たけび
それと共に急降下してくる鳥
「やばっ!」
(どうする・・・どうすれば・・・)
咄嗟に飛んできた鳥を殴る
ドサッと地面に落ちる巨大鳥
「はぁはぁはぁ・・・」
心臓がバクバクなっているのがわかる
(助かった・・・)
地べたに座り込む僕
巨大鳥はもうピクリとも動かない
(それにしてもさっきの僕、一体どうなってるんだ?)
尋常じゃなく速く走れる足、巨大鳥を一撃で沈めることが出来たパンチ
それに精神的な疲れはあるが体力的なものは一切無い
5分間ダッシュを続けることが出来るなんて有り得ない
「一体どうなっちゃってるんだよ・・・」
(まさか本当に異世界に来ちゃったとかね・・・)
笑っちゃうよ・・・
そこで少し休憩した後、僕はまた歩き出した
その後、1時間いやもっと歩いただろうか?
さっきの鳥のような獣に襲われることもなくただひたすら歩いた
「はぁ・・・喉かわいたな・・・」
僕の喉の渇きは限界を迎えていた
川らしいものも無いし人にも会うことは無かった
完全に諦めムード全開でとぼとぼと歩いていた時である
シュッ
首筋に光る鋭利な刃物がつきたてられる
「動くな」
耳元で囁かれる声
背筋が凍る
再び高鳴る鼓動
「お前どこから来た?何故この森にいる?」
男のものだと思われる低い声で問われる
「え、えっと・・・に、日本という国から来ました。なんでこの森にいるかは・・・わ、わからないんです。目が覚めたらここにいて・・・」
「判定」
男が小さく呟く
「嘘は無いようだな・・・」
「は、はい」
「私に敵意はあるか?」
「全くもってありません」
「判定」
またしても、男が呟く
その言葉と共に男はナイフをしまう
「私は、ファビオラだ。君は?」
ファビオラと名乗る男が尋ねてくる
「僕は、東堂 奈鶴です」