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三話

説明ばっかで申し訳ありません(´・ω・`)

もう少ししたら話が進められる、はず!

《我混沌を司りし系譜の長、ケイオスの名において汝を祝福しよう。どうか、その人生に幸多きことを》

 

 

 神が与える祝福というのは、人が考えている以上に単純だ。神がその人の一生を見てみたい、と思える魂の輝きを持つ相手に力を貸すだけなのだから。

 魂の輝きとはその人の在り方そのものともいえるもので、悪魔がよく願いをかなえる対価として奪っていくのも、その人の存在している在り方を欲しているからだ。

 つまり、面白い人間ほど神は力を与えるということで。転生などを経験してる“普通ではない”ということだけで神が力を与える理由には十分なのだ。

 

「……あー混沌の系譜の、長? …………って、どう考えても中級以上、だよなぁー」


 寝起きのまだ働かない頭を頑張って硬い布団の上で回転させながら、あくびをかみ殺すホルス。昨日寝入ってから頭の中に響いた声を吟味し、色々と危ない単語が出てきているのを、とりあえず便利そうだしいっか、と切り捨てる。

 

「あ、ホルス起きた? 御飯あるから食べなさい」


 この世界の朝は早い。電気も水道もガスもまだない世界なのだ、夜は日が落ちたら眠りに付き、麻は日が昇るころには活動を始める。まさに時は金なり、そんな生活を続けていれば、ただれた学生生活などにはもう戻れそうもない。

 父と母と兄とホルスの四人の家族で生活するには少し小さい小屋でホルスは産まれた。産まれたときは混乱しまくったが、むしろ赤子と言うことで下手に動けないことが幸いし、落ち着く時間が得られた。

 

(はっきり地球じゃないってわかったときはそりゃ驚いたけど、むしろこれは得してるよなー)

 

 普通は一回きりの人生。死んだら終わりのそれを、なぜか男の浪漫とも言うべき異世界に転生できたのだ。向こうでの生活も、悪いものではなかったがどこか物足りなさを感じていたころだ。

 アウトローにもなりきれず、犯罪者にもなれない。でも他の皆と同じようには生きていたくない、などと中途半端に生きていた人生だ。だったらこの異世界で自分の力でどこまで行けるか、などと考えてしまっても仕方ないのだろう。

 

 ぼーとした顔をしたまま普段家族で食事をしている居間のような場所に行くと既に家族が揃っていた。

 

「おはようホルス。体の調子はどうだ?」


 厳つい、体を震わせるような声は初めて聞くと怖さを感じるかもしれないが、その本質が優しさだというのはこの世界に産まれたときからずっと一緒に生活している身はよく知っている。

 ホルスの父親で、この村の狩猟長でもあるケビンは四十を過ぎてまだ引き締まった体をしていて、白髪の混ざり始めた癖毛を、無理やり押さえつけたような髪型をしている。

 母親は逆にほっそりした人で、柔らかそうなライトブラウンの髪を腰元を超えるまで伸ばしている。

 

「んで、どんな神様の祝福を受けたんだ?」


 そしてホルスの四つ上の兄であるジュウである。顔はホルスとは違い母親に似たのであろう。彫りの浅い、繊細な感じの顔にホルスより多少大きいほどの身長しかないのがコンプレックスになっているような、その年頃特有の病気を発症している痛い兄である。

 

「神に愛されし兄が聞いてやろう!」


 重ねて言うが痛い子である。だがまぁそれも仕方のないことで、このシャゼン村には一般神以上の祝福を受けているのは、彼を含めて二人しかいないのだから。

 ジュウ 鷹の目の一般神 レベル十五の狩人が彼のステータスで、その年頃の子にしては珍しく、ステータスの平均値がⅢにまで及んでいるのだから。

 

(そう、ステータスなんてあるから、兄さんは残念な人になっちまってるんだよなー)


 アズガルドでは祝福を受けた歳からレベル、というものが発生する。筋力・耐久・俊敏・魔力・体力の五つの数値があり職業により補正がかかったりするものの、大体の明日として、それがその人の努力の証。強さの証明として使われる。

 

 一般の騎士の場合は大体 筋力Ⅴ・50 耐久Ⅳ・30 俊敏Ⅳ・80 魔力Ⅲ・90 体力Ⅵ・20 程度とされている。Ⅰが100になればⅡに熟練度が上がる、といった具合なのだ。そして常に鍛えている騎士の平均がⅤ程度なのだから、ジュウは一般的に見るとかなり優秀な部類なのだ。

 

「あーなんか、混沌? とかの系譜の神様らしいんだけど……」

「ほう、それはまた珍しい神の祝福を得たものだ。混沌の神々は世界の創世に深く関わっているらしく、最下級のものでも一般神位らしいぞ?」


 父親の発言から、凄い顔でホルスを見ているジュウに対して、アイデンティティを崩されそうなのはわかるけど、こっちをうざいから睨まないでください、などと考えていると、母親がちょうどよく朝食を運んできてくれる。

 といっても、貧困層の食事などいつもと変わらず芋をふやかしたものと、硬い黒ずんだパンに塩味のスープだけなのだが。一日二食なので、しっかりと朝食べないと夜まで持つはずもなく、話は一旦そこで途切れる。


「今日は祭りだが、明日には神殿に行くために街に行こうか」

「あれ、仕事の方は大丈夫なの? 早くいけるんなら、僕はそれで嬉しいんだけど」

「構わんよ。この時期は獲物が多いから、そう頻繁に森に入る必要もないからな。今日とて、道具の点検で森にはでないしな」


 この時期になると、このシャゼン村の近くの森には色々な命が芽吹き始める。ウサギや猪のような生き物と行った具合にだ。それらを狩り、肉や毛皮を売ったり、森で薬草などを採取して生計を立てている猟師にとってはありがたい季節なのである。

 

「そっか、うん。じゃーとりあず僕も今日は槍の点検しようかなー」

「そうしろ。ジュウお前も明日は連れて行くから、準備があったら今日のうちにしておくといい」

「わかった。この俺がいるんだ、町までの道中の安全は確保されたようなものさ!」


 そうか、と家族に生暖かい目で見られていることに気づかず胸をはるジュウに、昔の黒歴史を浮き彫りにされ、思わず頭を抱えそうになったホルスだが、気力で押さえ込む。

 

(それにしても神殿かー。職業、なんか面白いものあるといいなー)

 

 アズガルドにはレベル・神の祝福ともう一つ、職業というものがあり、例えば農民・騎士・魔術師・彫金士などがあり、猟師もそれに含まれるのだが、これらはステータスの補正だけではなく、職業によって覚えられるスキルなどもある。逆にこれらの職業に就かずにその技を覚えようとすると、その職業についている人の三倍は時間がかかってしまう程、大きな恩恵をあたえられるものなのだ。

 むろんこれは、なりたいものに誰でも成れる、といったわけではなく、本人の才能と条件が存在する。特殊なものでいくと、巫女《神に与えられた職業》・王《国を興すこと》・魔剣士《魔法使いと剣士の職業を極める》などがある。

 レベルというのは、この職業の熟練度と同意で、レベルが百になるか、特定な条件を満たすと新たな職業が与えられるのだ。

 ホルスを神殿に連れて行く理由は、神殿で発行されるステータスカードを受け取るためだ。そのカードに、祝福を授けてくれた神の詳細が書かれていたり、自分のステータスを確認することができるのだ。

 これも神が発行するものらあしく、祝福を受ける前に行ってステータスカードを受け取っても、なにも書かれないのだ。

 ちなみにこのカード、他人には自分の名前しか見ることが出来ないのだが、その人の承認を得て、そのカードに自分の血を垂らすと承認したことまでなら回覧が可能になるという神様クオリティなのだ。

 

「まぁ、とりあえずは今日の祭りだよね!」


 色々と期待を膨らませながら、とりあえずは目先にあるお腹が膨らむ行事を全力で楽しもうと思うホルスだった。

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