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十四話

上から下からマーライオンの如しっ!

風邪引きました←


くっそ、更新が……

「こんのっ。当たって砕けちまえ!」


 未だに蝙蝠と奮闘しているホルス。初めて蝙蝠と複数、つまり五階に下りた日から三日経っても、五階の探索が半分も終わらないでいた。

 理由は未だに蝙蝠の素早い動きを複数同時になるとどうしても動作が大きくなる槍一本では捕らえきれないこと。

 蝙蝠の魔石がガルムと比べて一回り小さく、買取金額も落ちてしまって毎日10,000ギル稼ぐのがやっとで貯金が溜まらず、防具の充実が図れていないこと。

 降りては上がりを繰り返すことで戦闘以外での体力の消耗が激しく、やる気メーターの溜りが著しく低いことが挙げられた。つまり面白くないのだ。

 

「このふっぁきん脊椎動物亜門哺乳綱コウモリ目どもめ! 地べたを統べる人間様舐めるな!」


 無駄知識を披露しながら、この世界では同じ生物かも分からない(魔石があることから明らかに違うのだが)黒く飛翔する生物を二つに切り分ける。魔石も同時に割れる音がして一言また毒づきそうになるのを、溜息でこらえる。

 と、お馴染みの感覚、よりどこか違っているレベルアップ。

 普段なら直ぐに納まるレベルアップの高揚感が何時もより強いことに疑問を感じたホルスは、すぐさま槍を地面に刺し、ステータスカードを表示させる。

 

 ホルス:ヒューマン 血槍鬼Lv31

 祝福:混沌の神のケイオス(混沌と破壊を司る神々の長。混沌の系譜でもっとも強い力をもつ)

 

 筋力:Ⅲ21

 耐久:Ⅰ99

 俊敏:Ⅳ17

 魔力:Ⅱ21

 体力:Ⅲ75

 

 スキル(血槍)

    (霞)

    

 備考:ミズール都市ギルド所属

 

「お、おぉぉおー!!?」


 三日でレベルが十四も上がっているのがどれだけ異常なのかは一人で迷宮に潜り続けているホルスには気付けない。普通は一年間で五十も上がればよい方なのだ。それも、ほぼ休みなしで迷宮に潜り続けてだ。

 神の気まぐれで自分がどれほど規格外になってきているか、周りに比べる指針がないホルスには分かりようがないのだ。

 さて、新しくホルスのスキルとして登録されている《霞》という文字が増えていた。固有能力である《血槍》以外の初めてのスキルである。

 そもそも《血槍》は特殊職の固有能力だけあって燃費・使い易さともに異常なほどで、使っている本人が自覚をしていないほどなのだ。つい、力を込めるとともに発動していた、なんてざらなのだから。

 

「っしゃーついに格好よさげな必殺技解禁か! 迷宮に潜り始めてからの苦節の日々、今日でお別れかと思うと少しも寂しくない!」


 迷宮で一人で潜り続ける人特有のスキル。ついつい大声で自分に語りかける、が発動した。ちなみに、誰もいないと思っているホルスだが、少し離れた場所を通っている同業者が肩を震わせているのを知らないのは、さて幸か不幸か。

 蝙蝠と戦いはじめて降下気味だったテンションがスーパーハイテンションになったところで、新たなスキルの検証である。とは言っても、初めて覚えるスキル、言うならば初級スキルである。

 過度の期待は禁物、と自分に語りかけながら(これも一人で潜り続ける弊害の一つである)横に置いてある槍を手に取り構える。

 

 左足を大きく前に出し、スタンスを取る、腰を落とし、両手で掴む槍は、左手は上に軽く添えるだけ。

 穂先を大きく下に落とし、身体の重心を前へ移動させておく。これがホルスがこの三日間で考えた“対空用”の構えである。下から大きく上にはじくように槍を出せ、相手の細かい動きにも即座に対応できるように力はギリギリまで入らないようにしておく。

 相手が離れていった場合にも、この構えなら直ぐに突進し追っていける。

 

「――フゥー」


 呼吸をとめ。

 大きく吐き出す。

 

 自分の中に“気”が充実したところでスキルを発動させようと考えた、瞬間にホルスの身体から何かが抜ける気配。

 

「ッし」


 短い呼気で槍を繰り出すと、確かに“何かが”発動した感触が手に残る。これがスキルの発動か、と少しだけ重くなった身体で、見失わないように穂先を追う。

 

「――――あれ?」


 確かに、確実にスキルは発動した。その手ごたえ、充実感は残っている。

 でも、確かに目を離さないように、瞬きもせずに見ていた槍は。

 何にもアクションを起こさないまま空を切った。

 普段よりも早いということも無かっただろう。

 

「おっかしい、な?」


 首をかしげ、何があったのかを確認するが、一向にわからない。対象が必要なのかなーと近場の岩に向かってスキルを繰り出すも、何も起きる気配は無い。

 

「うーん……うん?」


 ホルスが更に三回ほどスキルを使用し、身体に倦怠感を感じ始めたころ、お馴染みの気配が近づいてきているのに気付いた。

 始めはまったく姿を見つけられなかった蝙蝠も、何回も倒しているうちに独特の気配がするのに思い至ったのだ。

 

(キーンって耳鳴りの音。そんなに強くないってことは一匹か)


 そう、蝙蝠は超音波を出して、それをレーダーのように使用することで洞窟内を自由に飛び回る。こちらの魔物としての蝙蝠も同じ特性を備えていたようで、近くにいると微かに、数が多いと明らかに耳鳴りが発生するのだ。

 そして耳鳴りが始まったということは、敵が近くにいる、ということだ。

 ホルスは、スキルの検証の為に丁度いいと思い、倦怠感が纏わり付く身体に活をいれ、構えを取る。

 

 呼吸は深く、長く。静かに肺に入れ、大きく巡回させるようにしてから吐き出す。身体中に、臍の下から呼吸を行き届かせる感覚を。

 前世では気、と呼ばれていたものだ。丹田から四肢の隅々にまで呼吸を通す感覚。そこにあるか分からない不確かなものではなく、自分の身体の中にある当たり前のものとして。

 血を、何時もより強く循環させるイメージで。数呼吸で身体が完全に自分の支配化に置かれる感覚。これもこの世界に来てから培ったものだ。

 

(見え、た!)


 そう思った時には身体が勝手に動いていた。条件反射で、何千振ったか分からない、身体に染み込んだ動きを身体が、勝手に行う。

 槍に力を込め、敵に向かって身体ごと突っ込みながら突き出すと同時にスキルを忘れずに発動させる。

 

「え?」


 斬、と。穂先が微かな音を立てて蝙蝠の頭を貫いた。反応できなかったかのような蝙蝠の反応にホルスは戸惑ったのだ。

 普段なら大なり小なり回避行動をとられ、避けられることもある小さな標的は、一直線に飛んでくる槍に反応することも無く絶命した。

 この現象は、幾つか考えられる仮説があるのだが、いかんせん情報が足りない。

 スキルが発動したのは確認した。その結果がこれなのだから。

 

「一時的に身体能力、特に俊敏が上がってるのか、敵の感覚を惑わせているのか……霞って名前だからなぁーんー」


 こうなったら検証あるのみ。早速ホルスが取り掛かったのは、槍なしで突進しながらのスキルの発動。これでスキルが発動して大きく前進したなら前者。もし結果が残らなかったら後者の能力だと仮定してもよいだろう。

 

「せーの、っは!」


 クランチングスタートの構えを取って、スキルの発動をしようとし――スキルの発動が確認できないことが分かった。

 

「うん、つまりこれは槍自体に発動してるってことかな?」


 ぶつぶつと検証を続けていくホルス。槍を持っていないとスキル自体が発動しないことから、槍を突き出すことに限定された能力だと仮定した。

 

「霞……穂先が霞んで見えなくなるとか、かな?」


 それだとさっきの蝙蝠野郎の反応も納得いくし、と納得させる。実際、蝙蝠には槍が見えていなかった。

 超音波での感知すら出来ず、迫り来る穂先の出す、風きり音すらも感じ取れていなかった、というのはホルスには分かっていないのだが。

 

「んーじゃ、これは幻影系のスキルか! んー一人でハイド(隠行)してからの奇襲だと有利なスキル。ついでに避けられにくくなるって所かなー」


 これで狩りの効率が上がる! などと喜んでいるホルスだが、実際のこのスキルの有用性が発見されるのはまだ先だったりする。

 

「よっしゃーキテマス、キテマスヨー! これで蝙蝠も怖くない!」


 実際、この後のホルスの進行速度はグン、と上がる。

 敵が槍を避けないのだ。ただ敵が突っ込んでくる射線上に穂先を置けば大体それだけでことが片付いてしまうのだ。戦闘の効率は数倍にはなっているだろう。

 更にこのスキル、消費する体力は連続で使うと中々バカにならないのだが、ホルスは休むことなく使い続ける。

 《霞》と同時に《血槍》が発動しているのだ。ホルスも始めは気付いていなかったのだが、《霞》を発動させようと力を込めただけで《血槍》が同時発動して、敵から体力を奪えるのだ。

 

(これチート(反則)じゃね!?)


 なんて、今更ながら驚くホルスは、一日で五階を踏破するのであった。

 

 ホルス:ヒューマン 血槍鬼Lv33

 祝福:混沌の神のケイオス(混沌と破壊を司る神々の長。混沌の系譜でもっとも強い力をもつ)

 

 筋力:Ⅲ44

 耐久:Ⅰ99

 俊敏:Ⅳ25

 魔力:Ⅱ67

 体力:Ⅲ82

 

 スキル(血槍)

    (霞)

    

 備考:ミズール都市ギルド所属

て、手抜きなんかじゃないんだから!


誤字脱字・感想をおもちしておりますのよー

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