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十三話

戦闘描写って、難しいですよですよ。

 さて、トラウマと対面した夜でも日はまた昇る、ということで新しい朝である。ホルスにとっては希望に満ちた朝なのである。

 そう、昨日のベサニーとの対話での最大の収穫、宿での仲間探しの時間だ。

 

「ふーんふーん」


 鼻歌を歌いながら、周りから見たらどうみても怪しい人を演じながら、該当しそうな人がいないか探してみる。

 寝癖でぼさぼさなくすんだ金髪を梳きながら、隣にいる茶髪の男に声をかける商人風な男性。明らかに大胸筋です、と言わんばかりの胸をプレートメイルで覆っている短髪な、筋肉むっきむきなお姉さん。

 こっくりとベットの上で船を漕いでいるまだ若い少年を起こすのは、先ほどのくすんだ金髪のおとこで、残っているのは二人――かと思ったら軽装なレザーメイルを着込んだ男性は大胸筋な女性に声をかけて連れ立って出て行く。

 いや、まだ希望は! とホルスの血走った目に留まったのはチェインメイルを着込んでいて、鍛えあげられた筋肉が嫌が応でも目に入る、綺麗なオイルでも塗ってあるのだろう、艶やかな金髪の髪を後ろ手に撫でつけ、背中に大きなクレイモアと呼ばれる大剣を背負った男性だ。

 もう他の人は出て行ってしまって、部屋の中にはホルスとその男性の二人っきり。出遅れた、ともチャンスだとも思う、意を決したホルスは勢いよく立ち上がり――――男性と目を合わせないように部屋から出て行く。

 

「お先に」


 そう一言つけることも忘れない。うん、挨拶は美点だよねなんて考えながら、足早に逃げるように立ち去る。


(あれは無理。うん、何が無理って、なぜ裸にチェインメイル!? あれだ、きっと赤薔薇様とか呼ばれるような人だ!)


 酷く主観的で酷い意見ではあるが、そんな裸チェインのあだ名はゴンブトさんだ。

 ホルスが目を合わせないように出て行ったとき、彼の目はホルスのお尻に注がれていたとかいないとか。

 

 閑話休題。

 出遅れたせいで既に宿内でもぼっちだったホルス。そんな彼を哀れに思ったのか、ホルスの食器のスープだけ具沢山なのだが、考え事に没頭しているホルスは機械的に口に運ぶだけだ。

 

(だーむ。宿での仲間探しは無理ですかそうですか。便所はどこだ!? ぼっちだって思われるだろ!)


 さて、そんなホルス君だが、今日の目標は迷宮の四階まで行くことだ。三階まではガルムだし、このままだったら比較的簡単にいくだろうと考えてのことだ。

 なによりも宿を変えたい。もっと活気の溢れる、出会いとロマンに溢れた宿に、なんて仮作しているのだ。待っているのは現実だけだろうが。

 

「ご馳走さまー」

「おう、気ぃつけてな」


 すでに顔馴染みな店主に挨拶をし、宿を出る。因みにこのスープは300ギルで食べれます。育ち盛りなハルスには多少足りないのだが、朝から胃を満たして動きを鈍くすることもあるまいとそれで満足する。

 宿を出て迷宮の方に、何時もより時間をかけて歩いていく。よくよく考えたら、迷宮にだけ目が行ってしまっていて、街並み、景観をよく見ていないことに気が付いたのだ。

 

 仕事に行く途中なのか、くたびれたように歩いていく男性。同じ冒険者らしい赤髪でレイピアを腰にさした男性とは目があう。家の前で打ち水をしている中年の女性。子供が遊びに行く途中なのか、横で盛大に転んだが、直ぐに起き上がって走り去っていく。

 色々な人が各々の生活の為に動いているのを見て、なんだか楽しくなってきたホルスは、背中に担いだバッグと布で巻いた槍の重さを確かめて、今度は普通に鼻歌を歌い始めた。

 

「~~ん」


 昔よく聞いた、アップテンポなジャズのような旋律が気に入ってた一曲。

 身体全体が楽器になったかの様に音を紡いでいく。時折足を強く鳴らして。手を腰に当ててリズムを取りながら。

 こううの、悪くないなーなんていつの間にか朝の出来事を忘れたホルスは、今日もご機嫌で迷宮に潜って行くのだ。

 

 

 

「っは」


 流石に迷宮の中では鼻歌交じりとはいかない。ふとした切欠が、命を落とすことになる。昔住んでいた場所は、この世界よりももっと科学が発達した、遥かに人が死ににくい場所だった。

 それでも、朝は元気に別れの挨拶をした人が、帰ってこないなんてこともあるのだ。用心に用心は重ねるに越したことはないし、油断をするのは自殺志願者だけで十分だ、なんて乱暴な持論を持っているホルスである。命のやり取りは常に真剣に行うべきだと考えているのだ。

 とはいいつつも、既にガルムの行動パターンも覚え、ただ飛び掛ってくるしかない狼を下すのに問題なんかあるはずもなく、順調に二階の探索を終え、三階の半分以上を踏破していた。

 三階からは通路が広くなり、ガルムが三匹以上の群れで襲ってくることが度々でてきてはいるが、それも新調した黒炎刀のおかげでなんら問題なく探索できているのだ。

 

「んー盾が欲しいかも」


 ぼやくホルスだが、どうしてもソロだと攻撃直後の死角、というものが出来てしまう。無論今の時点では問題はないだろうし、速度で補っているというのもある。

 だが、あったらあったでまた戦いに選択肢が出るのである。

 

(機会があったら、鎧と合わせて見に行こう)


 一人決心するホルス。とはいっても槍兵であるホルスでは大きな盾は邪魔なだけだし、肩や脇を固めるようなプレートメイルましてや全身を金属で覆うフルプレートメイルでは、動きが阻害されるし、なによりも強みであるはずの俊敏さがなくなってしまうので却下だ。

 そのために、いままでは特に装備を変えることなく、簡単な皮で出来た鎧だけで過ごしてきたのだから。

 

「っと、階段か。よっしゃ! 次は蝙蝠野郎だな! 俺様がぎったんぎったんに料理してやるぜ!」


 あまり似ていない声真似に、自分自身で心が折れそうになりながらも、階段を下っていく。因みにホルスは地図をギルドで購入している。十階までの地図だが、十階単位で一部1000ギルで百階までの分がギルドで販売されているのだ。

 それ以降になると、広大なマップを作製できる人材がいないため、自分たちで地図を作りながら進んでいくしかないのだ。

 

「って、うお!?」


 十分に警戒しながら歩いていたホルスではあったが、後ろから急に風を切る音が聞こえてきたのでつんのめりながらも横に移動する。

 っさ、とホルスの頭があった場所を、黒い影が通過する。大体羽が三十センチ程の大きな翼を持つ蝙蝠が、天井近くまで飛行し、またホルスを目掛け、今度は正面から襲い掛かってくる。

 

「ふん!」


 武術、というのは本来ならば対人に作られたものだ。上から滑空してくる相手に有効な一撃、と言うのはどの様な武術でも驚くほど少ない。なぜなら、人間は飛べないものだから、である。

 しかし、ホルスはこの世界に産まれて初めて槍を握り、鍛えてきたものだ。更には神の祝福により、槍に対する扱い方も熟練したそれになっていて、その場でもっともいい判断をくだした。

 刃を上に向け、槍を跳ね上げるように下から上に掬い上げたのだ。もし避けられたとしても、相手の攻撃もホルスには届かないようにする一手。

 しかしその心配は杞憂で、避けようとした蝙蝠に迫った刃は、右の羽を切り落とす。

 急にバランスが取れなくなった蝙蝠は、きりもみしながら地面に叩きつけられる。動けないだろうが、なにがあるかも分からないので、素早く槍を動かし蝙蝠の首を刎ねる。

 蝙蝠の魔石は胸の中心にあるようで、ガルムのそれよりも一回り小さい。その代わり無事だった方の羽は素材として使えるらしく、一枚だけ羽が手に入った。これからは出来るだけ頭を狙おうと思うホルスだ。

 そして本人は気がついてはいないが、蝙蝠に刃が当たったのは、地味にランクアップの恩恵が大きい。動体視力も上がっているのだ。槍使いのときでは蝙蝠の動きがしっかり追えたかは怪しいのだ。

 

「しっかし、バットがこれなら八階位までは簡単にいくかもなー」


 なんて気軽に足を進めるホルスだが、その考えは五階に下りて直ぐ改めさせることになった。

 空から襲ってくるのが一匹だけならいい。速度的にも槍で追えるくらいだ。問題は二匹三匹と多角的に攻めてきたときである。

 槍は大きなリーチを持つために小回りが効かないのだ。一匹倒した時点で二匹目がこめかみにぶち当たりそうになったときには死にそうにった。

 

「死ぬ! ふぁっく!!」


 口汚い言葉でも、この世界では通用しないのでセーフである。ホルス的には。

 息も絶え絶えと言った体で四階まで戻ってくるホルスは、まずはレベルを上げることにする。きっとステータスが上がればあの程度! なんて考えて、武器を変えることに頭が回っていない。

 昔やったRPGではとりあえず強い武器でぼっこなホルスだが、この世界の冒険者はその時々で武器を変えるのが普通なのである。少なくても二種類。多いものだと五種類の武器を使い分ける器用なものもいるのだ。

 

「かかってこいやー!」


 ホルス:ヒューマン 血槍鬼Lv17

 祝福:混沌の神のケイオス(混沌と破壊を司る神々の長。混沌の系譜でもっとも強い力をもつ)

 

 筋力:Ⅱ34

 耐久:Ⅰ61

 俊敏:Ⅱ77

 魔力:Ⅰ80

 体力:Ⅱ6

 

 スキル(血槍)

 

 備考:ミズール都市ギルド所属

み な ぎ ってきた(嘘

なんか話的にそろそろ鬱回が出てくるかも。回覧注意が出たら、嫌いな人は回避してください。


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