まっすぐなあたしたちの家族模様
あたしはお風呂に入ると、必ずシャンプーとコンディショナーの区別がつかなくなる。
―えっと、青いやつがシャンプーで、水色がコンディショナーだから…って、あれ? どっちが青あろう。
その二つはすごく曖昧な色をしていて、湯気とかシャワーの水とかで、もういったいどっちがどっちだかわからない。一か八か向かって右のほうを出すとそれは必ずリンスだ。あたしはなんだかもったいなくなって、コンディショナー→シャンプー→また、コンディショナーという二度手間を踏んでしまう。なので洗い終わった後は必ず左右を逆にしている。
だけど、問題なのがお母さん。お母さんはいつもあたしよりも先に入って、まずシャンプーとコンディショナーの位置を入れ替えてから、髪を洗う。だからあたしの努力はまったく無意味なわけで、そのくせその後にお風呂に入るとあたしはそれを度忘れして向かって右のほうを出す。
ちなみにお父さんはあたしの後に入るので、あたしが入れ替えた後の順番を記憶している。
そこであたしはふと思った。じゃあ、もしあたしが二つを入れ替えなかったらお父さんとお母さんは間違ってしまうだろうか。二度目のコンディショナーの後にあたしはあえて何もしないでおいた。
「いやあ、参ったわ。シャンプーしようと思ったらコンディショナーだしちゃった」
「あれ、お前もか」
「ええ、あなたも?」
次の日のお母さんのお風呂あがりに二人が話してて、あたしはちょっと笑った。
「それじゃあさ、入れ物変えようよ?」
あたしは首を突っ込んでみたけど、微笑してしまって、
「もしかして、梨佳ちゃん…!」
お母さんがあたしに疑いの目を向ける。えへへ、とあたしは苦笑い。
「だって、どーなるかなー、なんて」
「たははは、単純な家族だな」
お父さんが笑った。
「確かにそうね」とお母さんも。
「ねー、だから入れ物買いに行こうよ」
あたしはお母さんに寄り添って言う。シャンプーのいい匂いがする。
「…なにか可愛いの見つけたんでしょ?」
「まーね」
「やっぱ、単純だなぁ」
今度は三人が同時に笑った。