表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

まっすぐなあたしたちの家族模様

作者: 一河善知鳥

 あたしはお風呂に入ると、必ずシャンプーとコンディショナーの区別がつかなくなる。

 ―えっと、青いやつがシャンプーで、水色がコンディショナーだから…って、あれ? どっちが青あろう。

 その二つはすごく曖昧な色をしていて、湯気とかシャワーの水とかで、もういったいどっちがどっちだかわからない。一か八か向かって右のほうを出すとそれは必ずリンスだ。あたしはなんだかもったいなくなって、コンディショナー→シャンプー→また、コンディショナーという二度手間を踏んでしまう。なので洗い終わった後は必ず左右を逆にしている。

 だけど、問題なのがお母さん。お母さんはいつもあたしよりも先に入って、まずシャンプーとコンディショナーの位置を入れ替えてから、髪を洗う。だからあたしの努力はまったく無意味なわけで、そのくせその後にお風呂に入るとあたしはそれを度忘れして向かって右のほうを出す。

 ちなみにお父さんはあたしの後に入るので、あたしが入れ替えた後の順番を記憶している。


 そこであたしはふと思った。じゃあ、もしあたしが二つを入れ替えなかったらお父さんとお母さんは間違ってしまうだろうか。二度目のコンディショナーの後にあたしはあえて何もしないでおいた。

「いやあ、参ったわ。シャンプーしようと思ったらコンディショナーだしちゃった」

「あれ、お前もか」

「ええ、あなたも?」

次の日のお母さんのお風呂あがりに二人が話してて、あたしはちょっと笑った。

「それじゃあさ、入れ物変えようよ?」

あたしは首を突っ込んでみたけど、微笑してしまって、

「もしかして、梨佳ちゃん…!」

お母さんがあたしに疑いの目を向ける。えへへ、とあたしは苦笑い。

「だって、どーなるかなー、なんて」

「たははは、単純な家族だな」

お父さんが笑った。

「確かにそうね」とお母さんも。

「ねー、だから入れ物買いに行こうよ」

あたしはお母さんに寄り添って言う。シャンプーのいい匂いがする。

「…なにか可愛いの見つけたんでしょ?」

「まーね」

「やっぱ、単純だなぁ」

今度は三人が同時に笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして、咲笑(Sae)といいます。 とても暖かいお話をお書きになるんですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ