第1話-7 二人の転校生 大切な話
で、待ちに待った放課後。
俺がガラリとドアを開けて教室に入ると、
神子上麗香、嵩文零雨の二人がいた。
他には誰もいない。
「あ、コウ君」
神子上は俺が入ってくるのを見つけると、
俺が開けっばなしにした教室のドアをバタリと閉めた。
教室の窓の鍵は全て閉まっている。
なるほど、簡易の密室完成ってわけか。
俺が今さっき入ったドアには鍵が掛かってないから、あくまでも簡易だ。
誰の机か忘れてしまったが、とにかく窓際の適当な机に俺は腰掛ける。
神子上は腰掛けた俺に近づき、向かい合って俺と同じく机に腰掛ける。
で、零雨はというと、自分の席に座り、何もない黒板をただひたすら見つめている。
ぱっと見、これはいったい、どういうシチュエーションなのかと
疑う人はいるだろうか?
いや、疑わない人はいないだろう。
なにせ、俺と神子上は問題ないが、零雨が……
ついでに俺の気持ちを率直に五文字で言おう。
帰 り た い 。
「初対面なのに、呼び出してごめんね」
と、神子上が話を切り出した。
悪いと思っているなら、どうか手短に。早く帰りたいんで。
「あなた、1.7f……あ、じゃなくて、嵩文さんと会話したって本当?」
「ああ、そうだが……」
今、無機的で奇妙な単語が聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。
多分テスト疲れだ。うん。そうしか考えられない。
神子上は振り向いて零雨に声を掛けた。
「嵩文さん、終わった?」
すると零雨はコクリとうなずいた。
あれ?零雨が会話に反応した。
昨日は俺の言葉を「意味不明」とか言ってたのに。
俺が滑舌悪い?
いや、滑舌が悪いなんて言われたことは、
俺のクソッタレな人生の中で一度もない。
逆に聞き取りやすいと言われるぐらいだ。
「うまくいったみたい」
そんな俺の疑問をよそに神子上が言う。
もちろん、俺には何が終わって、何がうまくいったのかさっぱりだが、
そんなことは俺の知ったこっちゃない。
とにかく神子上はそういうと、
俺の目を見て、真剣な顔をしてこう言った。
「盗み聞きされちゃうといけないから、ちょっと移動してもいい?」
「そんなに重要な話なのか?」
「うん、とっても大事な話」
「信用できるかもわからない初対面の俺に?」
戦場みたいな生きるか死ぬかの世界では命取りだ。
平和ボk……平和な日本で良かったな、神子上。
「絶対にあなたでないといけないの」
「なぜ、俺?」
「それも、後で話すわ。
とにかく、移動していい?」
神子上が立ち上がる。
「どこまで移動するんだ?」
「私の家」
おおっと、まさかの展開!
俺お持ち帰り!?
え、何、俺に一目惚れ?
……冷静になれ、俺。
よく考えたらまずあり得ない。
零雨がいるし。
それに、今日の昼休みの意味深な言動も、それだと説明がつかない。
そして何よりも、神子上の顔が真剣そのものだ。
一瞬異常に上がった俺のテンションを冷却しながら、
「もう一度聞くが、家まで俺を呼ぶほどの大事な話なのか?」
と聞くと、神子上は首を縦に振る。
「うん……多分あなたの想像以上に。」
ふと思ったんだが、神子上の家、急に引っ越してきたなら、
まだ荷解きとか終わってないんじゃ……?
まさかまさか、いや、あり得ないと思うが、
親か誰かに「男手が足りないから一人連れてきてちょうだい」
って言われてるとか……
そうならソッコーで帰宅しよう。
「部活は入ったのか?」
「一応、帰宅部がいいって言われたから、それに入ったわ。
コウくん、今日は用事はある?」
「大丈夫だ。」
早く帰りたいが、それはただ俺の気分であって、
特に用事があるわけでもない。
強いて言うなら、観たいTVがあるってぐらいなもんだ。
「じゃあ、行きましょ。」
神子上が鞄を手にとると、零雨も同じく鞄を持って立ち上がった。
神子上の家、遠かったら帰んのだるいな……
と、思いながら、俺は今日初めて会った神子上とかいう人の家に、
自動的にお邪魔することになった。
2010年10月22日投稿




