表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

第1話-6 二人の転校生 ミステリアスな転校生

その日の昼休み。

神子上麗香の机の周りには大勢の生徒がいた。

「ねぇ、誕生日っていつ?」

「どの辺りに住んでるの?」

「付き合ってる彼氏とか……いちゃったりする?」

などなど。


その反則級のかわいらしさと愛想の良さで初対面からたったの数時間でクラスに馴染んでいる。

速すぎる。

俺が小学校の頃に転校したときは、馴染みだすのに3日はかかった。


たぶん彼女には人の心を引きつける何かがあるんだろう。

いるよなー。そういうニクい奴。



……?

俺は一つ、あることに気がついた。

神子上は質問に対する答えのうちのほとんどを、

「うーん……秘密。」

と言ってそらすのだ。

趣味は何?

部活とか何部やってたの?

好きなアーティストとかいる?

こんな感じの質問さえだ。

何故秘密にするのだろう。


「ねぇねぇ、コウ。」

「何だ?」

俺の座席(オアシス)の後ろから女子の声がした。


振り返ると、メガネをかけた木下千賀(キノシタ チカ)、通称チカがいた。


人物紹介をすると、

昨日、一昨日と所用で学校を休んでいた。

俺の友達の一人で、性格はやや活発。

髪が波打っていて、クセ毛なのは生まれつきだそうで、本人曰く

「私、ストレートヘアの遺伝子を持って生まれたかった」

とのこと。

本人は納得してないが、俺的視点から言えば、

今のヘアスタイルの方が雰囲気的に似合ってる。

一度俺が、

金出してパーマかける奴もいるんだから、

そいつらから見れば、ストレートになりたい、

とはちょっと贅沢な悩みだな、

と言ったことがある。


その瞬間にチカの目の色が変わったね。鬼に。


「あんた、私の悩みなんて分からないでしょ!?

 髪の手入れは面倒だし、櫛は髪にすぐ絡まっちゃうし、

 朝は寝癖が直らなくて地獄!分かる!?」

と、怒ったチカに俺はぶっ飛ばされた。

髪の質で悩んでるやつに軽率な発言は慎むべきだと学習したよ。

と、まあどこにでもいそうないなさそうな、そんな感じの女子。


「昨日休んでたからよく分からないんだけど、

 嵩文零雨ってどんな性格の子なの?」

と、隣の席の零雨に聞こえないようにヒソヒソ声で話すチカ。


「変人。この一言に尽きるね。」

俺も声を潜める。


「変人ってどの辺りが?」


「全体的に。

 まず、しゃべらない。動かない。話しかけても無反応。

 自分でQRコードを作ることができるという、無駄にスゴイ技を持ってる。」


「え!?QRコードって、ケータイとかでピッと読みとるアレ!?

 アレ作れるの!?」

チカが思わず声をあげる。


「QRコードが何だって?」

その声を聞きつけたジョーが乱入。


「嵩文さんが自分でQRコードを作れるってお話。」

チカが控えめに言う。


「え、コウ、お前何で知ってるんだ、そんなこと?」

ジョーは声を潜めることなく普通に言う。空気読め。隣は零雨だぞ。


「昨日の放課後に、嵩文が教室に一人残っててさ。

 俺が忘れ物取りに戻った時に会ったんだよ。」

俺はジョーに目で隣に本人がいるぞと牽制しながら言うと、

ジョーは小さく2,3回うなずいた。


「じゃあお前嵩文としゃべったのか?」


「んー、まあ、な。俺が教……!?

誰かが俺の背後から急に口を手で塞いだ。


「コーちゃん、だったっけ?

 ちょっと今日の放課後、教室に残ってくれる?」

俺の口を塞いでいたのは、神子上だった。

それと、俺はコーちゃんじゃなくて、コウだ。

俺はコーちゃんなどいう、ラブリーなあだ名はごめんだ。


神子上はそういうと俺から手を離し、人差し指を口元で立てて、俺の目を見た。

今の話を黙ってろと?


「俺はコーちゃんじゃなくて、コウっていうんだ。

 愛称で呼ぶなら出来ればコウって呼んでくれ。

 それとお前、嵩文と知り合いなのか?」

俺が聞くと、

「え、あ、まあね。」

と答えた。


なぜ初対面の転校生同士が知り合いなのか、

俺の理解の範疇を越えているが、それは気にしないでおく。

俺は、黙っておくよ、という意味を込めてうなずいた。

すると神子上はありがとう、と一言言って去ってしまった。

ジョーとチカにジロジロ見られながら。


「何なの?あの人。

 いきなり私たちの話の腰を折って!」

チカがやや不満そうにつぶやいた。

「謎だな。」

ジョーも言う。


ミステリアスキャラはクラスに二人も要らないと思ってるんだが、どうよ?

あんまりにもミステリアスで強烈な奴が多いと、なんかクラス全体がカルト化しそうで怖い。

「とにかく、放課後は俺残るから先に帰っててくれ。」

俺がそういうと同時に、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

2010年10月22日投稿

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ