第1話-5 二人の転校生 二人目の転校生
翌日。
俺が教室に入ると、また席の数が増えているような気がした。
デジャヴ?
いや、気のせいだろう。
今までの疲れが俺に悪影響を及ぼしているんだ。きっと。
いやまて、1、2、3……
多い。やっぱ席一つ多い。
俺は頭がイカれてしまったらしい。
幻覚が見える。
何でだろう。
煙たい葉っぱとか、怪しい葉っぱとか、危ないキノコとか、変なクスリとか、
手錠はめられそうなやつには手を出してないんだが……
とにかく、病院に行かなくては。
……ああ、保険証、実家においたままだった気が。
俺が席に座ってふと横をみると、
すでに嵩文零雨が昨日と同じく着席したまま、機能停止している。
しばらくして、担任が教室に入ってきた。
「今日も、うちのクラスに転校生が来た。
二日連続ってのも珍しいが、まあ今日の一時限目もそういった訳で、時間割変更。
また自己紹介タイムだ。」
おいおい、自己紹介の時間とか、もうめんどくさくてやってらんねーよ。
昨日のテンプレそっくりそのまま言ってやるから覚悟しとけ。
「おーい、転校生、入ってこい。」
担任の手招きで、転校生が入ってきた。
おお……マジか……
またもやのBINGO!
黒髪のこれまた可愛らしい女子。
少し照れているようだ。
「それじゃ、今日は自己紹介はこの子から先にしようか。」
と担任。
一言言わせてもらうとだな、
普通は転校生から自己紹介するもんじゃね?
担任は、転校生を教卓の前へ。
「私の名前は、神子上麗香っていいます。
よろしくお願いします。」
にこやかな顔で、やや緊張気味に言った。
神子上麗香か……
珍しい名前ではあるが、昨日の名前と比べるとアリな名前だ。
そして、どっかの無口ちゃんとは真逆の性格だ。
彼女にしたいね。
ただ、あまりアクティブすぎる性格だと、
なにかと面倒だからそうではないことを祈る。
で、ここからは俺たちの自己紹介だ。
自己紹介でねつ造しているやつらが昨日より明らかに増えている。
が、また冗談の範疇としておこう。
一人一人自己紹介を済ませ(俺もテンプレ披露)、
そしてとうとう零雨の番になった。
どんなあいさつをするのか、気になる。
零雨はすーっと静かに立ち上がり、無言で一礼して座った。
おお、シンプル、そして無難!
所要時間わずか3秒。
見事にクラス最速タイムを叩き出しやがった。
自己紹介のタイム競ってるんじゃないんだが……
苦笑いの担任がすぐさまフォロー。
「ああ、この子が昨日転校してきた子で、名前は嵩文零雨。
シャイで、人とお話するのが苦手らしいんだ。」
神子上は、わかりました、とうなずくと、
また次の生徒が自己紹介を始めた。
5分後、自己紹介も終わり、
神子上は担任に席を指定され、
そこに向かう途中で俺と零雨の間を通り過ぎた。
そのとき、
「みーつけた」
と神子上が零雨に小声で言い、
ニコリとしたのを俺は見逃さなかった。
2010年10月21日投稿