第1話-3 二人の転校生 動かない人形
一時限目も終わり、休み時間になった。
零雨というこの少女は、休み時間になっても俺の隣の席に座ったまま、
少し下にうつむいて、担任に連れられて座ったときと変わらない姿勢、まさに「微動」だにもしなかった。
二時限目の授業が始まったが、
零雨はまったく静止していた。
彼女の机の上に何もないのは、転校があまりに急で教科書をまだ持っていないかららしい。
その次の休み時間も、機能停止したアンドロイドの如く。
クラスの男子や女子から声を掛けられても、一切動じなかった。
気味が悪い。
「えっと、嵩文零雨、だったっけ?
俺、牧田っていうんだ。よろしくな。」
ジョーが近づいて話しかけるも、轟沈。
反応は一切示さなかった。
そうしてやってきた昼休み。
俺たちが弁当を食っているときも、人形は動こうとしない。
腹は減らないのか?
それとも、弁当がないのか?
「…おい、弁当持ってるか?」
零雨の無反応に、俺のなけなしの勇気は儚く散った。
「何かあったら俺に言えよ。
厄介事以外は少しぐらいなら手助けしてやるよ。」
そう言って、零雨から離れた。
昼休みも終わり、とうとう午後の授業が始まった。
彼女は朝からかれこれ5時間以上静止したままだ。
嵩文零雨とは一体何者なんだ?
一体どんな過去があってああなったんだ?
少なくとも彼女が赤ん坊だったときは、俺らと変わらなかったはずだ。
赤ん坊…きっと生まれたときから美人素質全開だったんだろうなぁ。
ミステリアスな少女、嵩文零雨。
俺はそいつにちょっとした好奇心を抱いた。
2010年10月21日投稿