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第1話-2 二人の転校生 一人目の転校生

初っ端から核弾頭級のヘタクソな挿絵が入ります。

挿絵表示をオフにして、シャットアウトすることをおすすめ……します。

翌日。

俺が夏のクソ元気な日差しと気温の猛攻撃に悶えながら学校に向かい、

俺の座席(オアシス)を求めて教室に入ると、騒々しかった。

いや、騒がしいのはいつものことなんだが、今日はなんか雰囲気が違う。

皆のテンションがうわずっている。

つうかさ、俺の隣、なんか席一つ多くね?


「よう、コウ!お前、転校生見た?」

ジョーは鼻息荒く興奮気味にイスに腰をおろした俺に話しかけてきた。

そういや、昨日転校生がどうのこうのと言ってたな。

ま、このクラスに人間が一人増えたぐらいで、

俺の生活に影響を与えることはないだろうが。

これは俺の経験則に基づく信頼できるシミュレート結果だ。


「あのさ、昨日俺が言ってた転校生、さっき見ちゃったんだ」


「ああ、そう。がっかりもんだっただろ?

 かわいい女子かと期待したら、残念なタイプの男子だったとか」


何が残念かはあえて言うまい。


「ちげーよ!それどころか大当たり!

 超かわいい女子だぜ!白髪の!」




「お前のかわいいは当てになんないんだよ!

 平安時代のオカメさん顔が美しいとか言い出すお前の感性ではな!

 時代遅れだ。1300年ぐらい」


「お前、今全国のオカメさん顔フェチを敵に回したぞ!

 ていうか、俺はオカメさん顔フェチでも何でもないし、

 第一いつそんなことを俺が言った!?」


ジョーが怒った。

こいつをおちょくるのは楽しい。


「俺はちゃんと現代にフィットした感性もってるからな!」


それは置いといて、転校生が気になる。

白い髪の転校生……まさか、杖ついて歩く高齢者じゃあるまいな?

若い女子がわざわざ老人風情よろしく髪を白に染めあげるとは思えない。

もしかしてあれか?

第二次世界大戦中に学生だった人が、未だ受け取っていない卒業証書を求め、

足りない単位を補うためにこの学校に転校してきたとか。

前にそんなニュースをテレビで見たことがある。

……だが、今ジョーは超かわいい女子と語った。

と、いうことは――


「……ジョー、お前のストライクゾーンは広いんだな」


「な、何をいきなり」


「お前が(よわい)70越えの超熟女が好きだと、俺は今初めて知った」


「はあ? 何をどうしたらそういう発想になる!?」


白髪(しらが)の転校生なんだろ?

 まさか流行に敏感なイマドキのモダンな女子高生が自ら髪を白に染めて老けてる感を出すとは思えない。

 そういうのが流行ってるとも聞いたことがない。

 ということは、今回の転校生は第二次世界大戦中に

 卒業証書を貰いそびれた学生が単位を取りに来た、という最も有力で確信に近い仮説を立てることができる。

 もしその仮説が正しい(True)ならば、戦後60年以上経っている現在、

 当時学生だった彼らは既に70歳を超えている。

 つまり、お前のが見たのは超かわいい年齢70越えのおばあちゃんってことになる」


「……お前の想像力には感服するよ、その、暴論を一瞬で組み立てる能力には。

 だけど、違うんだな~

 そのまさかで俺たちと同じ年の白い髪の転校生なんだ」


「ハハハッ、そうなのか? 自ら白髪スタイルにするとは、とんだ物好きだな」


「まあ、楽しみにしてなって」


ヤバかった。

担任に連れてこられ、やってきた女子は、確かに美人だった。

年はジョーの偵察情報通り、俺らと同じぐらい。

やや小柄ですらりと長い髪、アイドル顔負けの美貌だった。


目はウサギのような透き通る赤で、髪は雪のように白い。

担任の長い話を要約すると、なぜこんな姿に生まれてきたのかの原因は不明だそうだ。


一時限目の授業が、不幸にも担任の授業だったため、自己紹介タイムになった。

周りのやつが自己紹介していくのを、俺は転校生をぼんやりと見ながら聞いていた。

中には自己紹介で

「趣味はクラシックを聞きながら小説を読むこと」

などとねつ造しているやつもいた。

確かにそいつは読書好きなのだが、そいつの専攻は小説じゃなく、

ベッドの下のイヤラシイ本だったりするのだが。

まあ、これくらい冗談としておこう。


次は俺の番か…

俺は頭の中で必死に完成させたテンプレを披露した。

「俺の名前は足立光秀。コウって呼ばれてる。

 特に言うことはないが、穏健派ということでよろしく」

こんなもんでいいだろう。

最後、若干蛇足がついたのはご愛矯ということで。


「最後に、転校生本人に自己紹介してもらおうかな」

担任がその少女を教壇の前まで連れてきた。


ところが、しゃべろうとしない。

ずっと遠くを見ているような目をしている。


挿絵(By みてみん)


「はは、ちょっと緊張してるのかな?」

担任は笑って、乱暴に黒板に少女の名前をでかでかと書いた。

乱暴に書くのは担任のデフォルトだ。

字が汚く、筆圧も強いから、黒板を消すのに苦労する。


「嵩文 零雨」


担任はそう書いた。

「この子の名前は《タカフミ レウ》。

 仲良くしてやれよ!」


嵩文零雨…俺が珍名に認定してやろう。

認定理由?

零雨なんてフツーいねぇし、俺が親なら、もっとマシな名前にする。

それが理由だ。

異論は受け付けない。


もし、

近くに名前に竜獣と書いてドラゴンと読むやつとか、

羽星と書いてパスタと読むやつがいたら教えてくれ。

俺の気が乗れば独断で審査・珍名認定してやる。

一応言っておく。審査・認定は無料で行ってやるつもりだ。


で、まさかとは思うが、昨日までなかった机が俺の隣にあるのは…

担任は零雨の手を引き、その席に座らせた。

下の名前で呼ぶのはなぜって?

嵩文よりも零雨の方が覚えやすいと思ってさ。


「そういう訳だから、コウ、仲良くしてやってくれ」


「はあ……」


これが、俺とそいつの初めての出会いだった。

2010年10月21日投稿

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