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第1話-9 二人の転校生 Be Friend Or Delete

「恥ずかしいことなんだけど……」

神子上が視線を俺から少し逸らす。


「ステージ0に大規模な障害があって、

 ステージ25に関するデータと、私のプログラムの一部が吹っ飛んじゃったのよ。

 障害の原因は分からないけれど」

神子上の顔が赤くなる。


「私は自分自身のデータを、嵩文さんはステージ25のデータを補いにきたの」


「嵩文の理由は分かったが、

 なぜお前さんのデータの補充に、この世界に来たのかが、よく分からないんだが」


「ステージ25が、今の私を作らせる理由、

 つまりアップデートの理由だったから。

 私の失ったプログラムが、なぜ私に必要だったのか、その理由が見つかれば、

 それを補充することで、私は失われたプログラムを補ったことになるわ」


どうやら、プログラムのバックアップ(緊急用の予備)は用意してないらしい。


「それじゃ、失われたデータの理由が見つからない可能性がある。

 100%回復するかどうか怪しいんじゃないか?」


「う……それは仕方ないわ」

神子上はこの指摘をされることが、一番恐かったらしく、声が一気にトーンダウンした。


「あ、それと」

神子上は声をやや強引に元の調子に戻し、言った。


「感情を持たない嵩文さんが、変なことをしないように見張る、監視役ってのも

 私がここに来たもう一つの理由だよ」


神子上はまた、さっきとは微妙に違う、やや機械的な笑顔を見せる。

まあ、大層な話で。

まさしく、「世界を飛び回る」とはこの2人のことだな、などと俺は思った。


………!!


また空を眺めていた零雨が、突然ビクっとした。

その次の瞬間に、零雨はゆっくり瞳を閉じ、下をむいてしまった。


隣の神子上が特にそれに関して無反応だったため、

俺もスルーしてよいものと認識し、スルーする。

もしかしたら、一定時間何も操作しないと自動的に電源が切れるとか、

そういったエコ機能搭載のシステムかもしれない。


「最後に一つ聞きたいんだが、なぜ俺だけを放課後に呼び出したんだ?

 そして、なぜ俺なんだ?」

まだまだ聞きたいこともあるが、早く帰りたいからこれで最後に。


「あなたが嵩文さんと最初に交流したから。

 昨日、これ使ったでしょう?」

神子上は、瞳を閉じた零雨の通学鞄から、あの黒の翻訳機を取り出し、俺に見せた。


「ああ、昨日、嵩文が持ち出してきた」


「嵩文さんがこの世界に現れたとき、

 どこにいるか、全く見当がつかなくってね、

 私もこの世界のどこに降りればよいのか、分からなくて困ってたの。

 そんな時、あなたがこれを使ってくれたおかげで、

 この機械がステージ0の言語データベースにアクセスしているのを傍受して、位置の特定ができたの」


なるほど、嵩文がこの世界に現れたのち、神子上が現れた、ということか。

それはさておき、黒の翻訳機に通信装置が付いてるとは知らなかった。


「この装置を知っているのは、この世界であなただけでしょう?

 だから、あなたを選んだの。

 あと、今日のあなたの様子を見て、問題なしと判断したことも、理由の一つよ」


チクショウ、昨日俺が学校に忘れ物さえしなければ!!


……いや、今のは嘘。

だが、俺が昨日忘れ物をしたせいで、

トンデモナク面倒くさそうなことに巻き込まれたなんて、

これっっっぽっちも思ってない。

と、言えば若干嘘になる。




神子上は改まったように座り直し、言った。


「私たちと友達になってくれる?」


「別にいいが、なぜシステムとやらの回復作業から、友達になってほしいにつながるんだ?」


「長期の仕事になりそうだから。

 それに、人と交流して色々経験するのも必要だと考えているから」

神子上は淡々と答えた。


その時、零雨が目を覚ました。


「普通に、友達として接すればいいんだよな?」


「もちろん!ただし、今の話は秘密ね」


「まあ、さっきもチラッと言ったが、俺は構わない」


友達が2人増えたと考えればいい。


「ありがとう、助かった。それと……」

神子上は続けた。


「今の話、理由なく口外したら、

 この世から消すとまではいかないけれど、これになってもらうわよ」

神子上は指を指す。


「マジかよ……」

俺は思わず声を上げる。


これって、殺される以上にむごいよ。

うん、むごい。

そして、この状態になることを、世間一般では「消される」という。

神子上が言う「消す」は物理的にその物体の存在を「消す」、

と言う意味だということも分かった。


「わ……、分かった」

俺は答える。

いや、ヤバいってこれは。


「ありがとう!」

満面の笑みを浮かべた神子上が指さしているもの、

そう、それはテーブルの上の砂だった。

2010年10月23日投稿

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