第十七話【2012年1月4日23時15分全文修正完了】
2013年5月6日更新
この世界の軍隊が置かれた特殊な事情について、表現が不足していたため追記を行いました。
また、誤字脱字についても修正を行いました。
2012年1月4日23時15分更新
修正を完了した第十七話を投稿しました。
ご指摘を頂いた皆様、誠にありがとうございます。
2012年1月4日21時22分更新
投稿済み文章の管理ミスにより、投稿していないと勘違いしていた第十六話の内容が掲載されています。
さらに投稿予定の文章に間違いを発見したため、新しい内容に修正次第タイトルを変更します。
最低文字数以下だとこの訂正文も掲載できないため、一旦そのままになっています。
大変申し訳ございません。
連合王国歴172年 青精霊王の月17日 昼 ジラコスタ連合王国 アルナミア街道
私の名前は、いや、私の名前などなんでもいいだろう。
筆頭鍛冶殿に曹長と呼ばれる私は、栄光ある領有兵士隊に所属する兵士長補佐だ。
もう若くはないこの身であるが、逆に歳を重ねたことによる経験を買われて兵士たちの取りまとめ役を仰せ付けられている。
「このような感じで、人間一人が収まるだけの溝を掘ってほしい。
この場所からあそこの岩まで、そこまできたら今度は奥の槍を三本突き立てている場所までだ。
すぐに掛かってくれ」
筆頭鍛冶殿の仰る塹壕というものの建設が始まった。
何とかすれ違える程度の幅しか無く、少し膝を曲げれば頭まで完全に隠れるという溝。
これを陣地を囲うようにして掘り、今後の戦闘や陣地内の移動は全てこの中を通って行う。
よほど接近されるまではファイヤーロッドを中心に攻撃を行い、接近されたら槍、それ以上接近されたら剣で戦うらしい。
剣は腰に下げておくとして、槍は各自の足元においておけば面倒が少ない。
そして、万が一ドラゴンが現れた場合には、速やかに伏せてブレス攻撃をやり過ごす。
なるほど、聞く限りは無駄もなく、そして何より兵士の命を守りやすい点が魅力的だ。
「聞いたなお前ら!
直ぐに穴掘りを始める、道具が壊れた奴は筆頭鍛冶殿に相談しろ!」
この私の息子ほどに若い彼の下について、実は余り時間が経っていない。
正直に言えば、初めてお会いした時には面倒な奴が現れたと思ったものだ。
敬愛する領主様の覚えめでたい、有能な鍛冶屋。
有能であることには何の問題もないのだが、なぜ鍛冶屋が兵士たちの指揮を取るのだ。
適当な騎士がいなかったからかもしれないが、それはどうでもいい。
適当に話をあわせて、仕事をしているつもりにだけなってもらおう。
当時の私はそんな事を思ったものだ。
だが、それは明らかに間違った考え方だった。
「筆頭鍛冶殿、糧食馬車の点検を確認して頂けないでしょうか?」
駆け寄ってきた補給班の兵士が筆頭鍛冶殿に声をかけている。
点検を確認してほしいということは、全て使い果たしてしまったのだろう。
ということは、またあの不思議なマジックアイテムから無数の食材が湧き出てくるという事だ。
数に限りがあるとはいえ、全く心強いことだ。
「ああ、糧食の残量は常に確認しておかないといかんな。
まだまだ余裕があったはずだが、つまみ食いなどしてないだろうな?」
答える筆頭鍛冶殿の背中は力強さに満ち溢れている。
あの御方についていけば、今後も生き残れるはずだ。
「ああ、ちょっと待ってくれ」
不意に彼は立ち止まった。
不思議そうに見る兵士に笑みを返しつつ、懐から取り出した瓶を口元へと持っていく。
あれは確か、最後の戦闘の前に料理鍋に入れていたものだったな。
ポーションか何かなのだろうが、まさか、我々の知らないうちに怪我でもされていたのだろうか?
「スマンスマン、さあ、確認に行こう!」
一息で飲み干すと、彼は兵士を連れて料理場の方へと足早に歩み去っていった。
「なあ、曹長さんよ」
掛けられた声に振り返れば、複雑な表情を浮かべたレルゴ工兵隊長だった。
「ちょいと質問をしてもいいかい?」
大工の棟梁から工兵隊長という厳しい名前に役職が変わっても、彼の言葉遣いはちっとも変化していなかった。
まあ、私はそれについて何とも思わないし、筆頭鍛冶殿も何も言わないのだから問題はないだろう。
「なんだ?」
一応軍隊としての序列では、私は副隊長的な地位にいるため、必然的に言葉遣いもそれに準じた表現となる。
まあ、レルゴは私が敬語を使おうがもっと粗野な言葉遣いをしようが、全く気にも止めないだろうが。
「筆頭鍛冶の言う塹壕ってやつは、まあ確かにドラゴンなんかを相手にして魔導兵を使うならば効果的だとは思う。
だけどよ、思いつかなかった人間が言うのも何だが、こんなこと直ぐに考えつくものなのかね?
ああ、もちろんアンタら軍人さんを馬鹿にしているわけじゃないぞ」
彼の言いたいことはわからないでもない。
筆頭鍛冶殿はその能力も含めて持ち物から発想まで全てが異常といっていいレベルだ。
ここに来る前は何をされていたのかは聞いたことがないが、なんにせよ普通ではない。
「正直に言えば、そう簡単に何でも思いつきはしないな。
まあ、筆頭鍛冶殿の仰る塹壕がどれほど大きな効果を生むのかはこれから知ることだ。
今のところ言えるのはこれだけだな」
私の言葉にレルゴは肩をすくめ、確かに言うとおりだと答えつつ作業へと戻っていく。
作業場所の移動に合わせて多重結界石を埋め込んでいく予定のため、彼らの仕事は非常に高速に進むことだろう。
「報告!報告!街道をこちらに向かう集団を発見!」
丘の頂上から叫び声が発せられる。
あそこには一番目のいい哨兵を置いていた。
彼が絶叫しているということは、何かを見つけたのだろう。
敵襲と言わないということは、少なくとも遠目には人間に見えるものが近づいてきているのだろう。
この陣地の構築に取りかかりはじめた頃には既に見えなくなっていた敗残兵たち。
その最後尾であればいいのだが。
67日目 夜 ジラコスタ連合王国 アルナミア街道 遅滞防御部隊の陣地
「なるほど、後続はもういないか」
先ほど収容を完了した最後尾の部隊は、驚くべき事にドルフ兵士長が率いていた。
とうの昔に本隊と共に撤退していたと思っていたが、彼は取り残される脱落兵をできるだけ拾いながらここまでたどり着いたらしい。
「それにしても、お前と、いや、筆頭鍛冶殿とここで再会するとは思いませんでした」
よほど疲れているのか、言葉遣いも忘れてしまいそうな状態らしい。
「まあ、これでも飲んで疲れを癒してくれ。
あと、言葉遣いは別に前のままでも構わんぞ。
厳密に言えば、この場での兵士の最高位はお前なんだからな」
苦笑しつつポーションを渡す。
体力回復と疲労回復の両方の効果がある逸品だ。
「すまない、いや、ああ、面倒だな」
ドルフはポーションを一気飲みすると、こちらを見てニヤリと笑った。
「まあ、口うるさい騎士様もいないし、お前が気にしないというならばいいか。
それで、状況は?」
全く、本物の軍人というのは違うな。
俺みたいのようななんちゃって士官ではなく、しっかりと戦争というものを理解している。
「地図を持ってきてくれ」
いつ休んでいるのかは分からないが、常に元気な曹長に声をかける。
当然だが、彼は声をかけるなり片手に持っていた地図を差し出してくる。
「ありがとう。
さあ、見てくれ」
篝火の明かりが届く場所に地図を広げる。
「どこまで知っているかわからないので、最初から行くぞ」
地図はアルナミアの街を中心に、国境付近までと主要な街道、ランドマークが記載されている。
「これは知っていると思うが、我々が現在いる場所はここ、街と国境のちょうど中間地点にある『母の丘』だ。
本隊は敵の攻撃に耐え切れずに潰走。
連絡が取れないのでどこまで下がっているかはわからないが、少なくともアルナミアの街付近までは下がっただろうな。
街の放棄はありえないので想定していないが、他国の軍は恐らく西の大河まで下がるだろう」
改めて確認すると、見事なまでの負けっぷりだ。
多国籍軍を揃えて駆けつけたはいいが、初戦で全軍潰走。
おまけに補給の失敗から、主戦力はそのまま自国まで逃げ帰るかもしれないという有様だ。
「現在の戦力はそちらを加えて200人弱、その大半が実戦を経験しているのはありがたいが、補給や補充は見込めない。
糧食は、そうだな、人数も増えたのでざっくり計算で半月分といったところだろう。
今すぐ全員で逃げ出したいところだが、神聖騎士様によると我々はここで踏ん張らなければならないらしい」
奥のテントに視線を向ける。
そこには最前線にもかかわらず、歩哨も立てずに全員で睡眠を取っている神聖騎士様たちがいる。
俺に仕事を任せた後は騎馬を兵士に預けて兜まで脱いでいたからおかしいとは思っていたが、まさか実戦経験を持たなかったとは驚きだ。
おそらく、失っても惜しくない人材なのだろう。
そんな奴は一生神殿から出さないか、あるいは最初に突撃命令を出して殺しておいてくれよ。
溜息を押し殺しつつ会話に戻る。
「それは困ったな、俺たちだっていつまでもここで見張りをしているわけにもいかんぞ。
何しろ丘といえば聞こえはいいが、ここは何も無い草原のど真ん中だ。
魔王軍に押し寄せられたら直ぐに全滅しちまう」
例え若干であっても高所に陣取ることは大切だが、ドルフの言うことはもっともである。
増援の見込みはなく、持久できる時間は限られ、これという解決策もない。
おまけに権威だけで能力の無い上官殿までセットでついている。
畜生、俺が何かしたかよ。
「大を生かすために小を切り捨てるとはよく聞くが、切り捨てられる側になるとたまったものじゃないな。
一応手は打ってある」
俺の言葉にドルフは表情を輝かせる。
どうでもいいが、無為無策ではないとかそういう話以前に、そろそろ俺に前線指揮官を任せることに異議を唱えてもらえないものか。
俺だけでも安全な後方に下げてくれとまでは言わないが、俺は鍛冶屋だぞ。
本当はそう言いたいのだが、目の前のドルフ兵士長も、見たことのない将軍様方も、この異常な世界の被害者なのだ。
軍隊があり、戦争もあり、魔王軍という現在進行形で進撃中の敵がいる。
そのような状況下で、伝統がある、実戦経験もある、という“設定”だけがある、歴戦の古兵という立場に彼らはいる。
今直ぐ対応しなければならない敵に対し、戦争を『運営』した経験のない軍隊を率いて、非戦闘員を守らなければならない。
全てはこの、突然産まれたとしか言いようのない異常な世界が悪く、別に俺のせいというわけではないのだろうが、できることはできるだけやらなければならない。
「俺の身元がわかるものを持たせた伝令を送ってある。
今すぐとはいかないが、何らかの反応は早い段階で帰ってくるはずだ。
纏まった人数の兵士をみすみす諦めるわけがないから、良くて俺たちも撤退、悪くても行動方針ぐらいは教えてもらえるだろう」
頼むから玉砕命令だけは勘弁してもらいたいところだが、それはないだろう。
ここにいる兵士たちは大半が辺境伯領の人間だ。
これだけの人数を一気に失えば、もう二度と領主様はまともな数の領民を揃えることはできないだろう。
口減らしを目論む可能性もないではないが、働き盛りや戦えるものから優先して減らすという事は考えにくい。
「それは心強い話だが、諸王連合が横槍を出したらわからんぞ?
今しがたお前が言った通り、大を助けるために小を切り捨てるかもしれん」
俺達も寄せ集めだったらそうなのだが、先程内心で思った事情が存在する。
それに、確かにここは主要街道だが、圧倒的に数に勝る上にドラゴンまで揃えた魔王軍相手に遅滞防御部隊が何の役に立つというのか。
そこまで考えて、俺は気がついてしまった。
今はなんだ?夜だ。
夜は何が起こる?モンスターが凶暴化する。
なんてことだ。
「部隊の半分を起こしてくれ、曹長」
傍らに待機していた曹長に声をかける。
「お待ちください。
おい、お前たちは直ぐに部隊の半分を起こせ、ああ、神聖騎士様にはゆっくりと休んで頂いて良い。
行け」
なんでどうしてと聞く前に行動。
おまけに役立たずは起きていても邪魔なので始めから除外する。
素晴らしい。
「ありがとう曹長。
すっかり失念していたが夜だ。
モンスターどもが凶暴化して襲いかかってくる可能性がある」
説明する時間がもどかしい。
ただちに篝火を増やし、全ての兵士たちに危険性を伝え、臨戦態勢をとらせなくてはならない。
多重結界石はあるが精神面での休養も必要だろうとか呑気なことをどうして考えてしまったのだ。
「直ちに篝火を増やします。
遠くからも見られますが、それはよろしいのですね?」
俺は前々から疑問に思っていたのだが、もしかして曹長もプレイヤーなんじゃないか?
それも、現役で実戦経験もある下士官とか。
頭の回り具合が不自然のレベルに達しているだろう。
まあ、プレイヤーかNPCかは俺にしか見えない表示を見れば直ぐにわかるので、それはないのだが。
「頼む。直ぐにかかってくれ」
命令を伝え、ドルフを見る。
彼も俺の言いたいことは理解してくれたようだ。
軽く頷き、脇に置いていた兜を手に取る。
「言われるまで気が付かなかったとは、俺も歳かな?」
俺はよほど思いつめた顔をしていたのだろう。
彼はおどけるようにしてそう言うと、自分の部下たちの方に足早に去っていった。
振り返れば、曹長は近くの兵士たちを捕まえて篝火を追加する準備を始めていた。
こうなると自分が救いようのない無能になった気がするが、周りが有能で助かったと思うと逆に気が楽になるな。
69日目 昼 ジラコスタ連合王国 アルナミア街道 遅滞防御部隊の陣地
結局のところ、数体の襲撃はあったものの、魔王軍の奇襲といえるような戦闘は発生しなかった。
それ自体は喜ばしいことであったが、その分のしっぺ返しは直ぐにやってきた。
「さて、どうしたものだろうな」
俺の隣で目を凝らしていたドルフが呟く。
伝令を出してから一日半が経過したが、増援どころか返事すら来なかった。
神聖騎士様は今日も朝からお寛ぎになられており、食料を消費するという観点からすれば生きているだけで害悪だ。
曹長を始め下士官兵たちは俺の怪しげな命令に従って陣地を作ったり訓練に勤しんでいる。
「魔王軍が来ないのはありがたい話だが、味方も全く目にしないな」
さすがにもう、逃げてくる友軍も出尽くしたようだ。
あるいは、もはや各個撃破されて俺たちがこの辺りでは最後の生き残りかもしれないが。
「しかし、伝令か援軍を期待してもそろそろ悪くは無い時間だよな?」
それはそうなんだが、そこで俺が頷くわけにはいかないだろう。
「いや、伝令を出してからまだ一日と半分ほどだ。
到着して、報告して、仮に即答で返事を貰ったとしても、まだこちらには到着しないだろう。
もし撤退命令ではなく援軍が来るとしても、さすがに早すぎる」
丘の頂上を見る。
四人の哨兵がいかなる兆候も見落とさないための監視を継続していた。
周囲の状況がわからないので偵察を出したいところなのだが、ただでさえ少ない戦力をこれ以上減らしていいものなのか。
いや、いいか。
何も分からないよりはましだろう。
「曹長」
少し離れた所で何やら兵士たちに命令を出していた曹長を呼ぶ。
彼は近距離ではあるが駆け足で接近し、元気の良い声で返事をかえしてくれる。
「二個分隊を偵察に出させる。
街道の町側と国境側の両方にだ。
人選は任せるが、国境側は出来れば目の良い奴を入れてくれるとありがたい。
ああ、偵察の範囲だが、国境側は暗くなる前に戻ってこれる範囲で。
町の方は行けるところまで行かせてくれ。
途中で友軍と会って脱走兵とみなされたら可哀想だから、俺が命令書を出しておく」
彼は承りましたと答えると、直ぐに先ほどの兵士たちの所へと駆け足で去っていく。
視線を戻すと、ドルフが目を丸くしていた。
「連絡が来ないなら自分から聞きに行くわけか。
確かに偵察ですと名乗れば、逃げてきただの何だのと言いがかりも付けにくい。
命令書に加えて、手紙でも持たせるんだろう?」
見事にお見通しのようだが、別に困らない。
逆に、俺が命令だからと思考を停止させて死守に拘っていると思われる方が困る。
「そういうわけだ。
自分の上官へ現状の報告書を出したとしても、おかしな事はないだろう?」
現在の部隊の状況、皆無に等しいが敵情。
そして神聖騎士様の命令に従って陣地を築いて敵を待ち構えているが、敵影は見られないので待機中であること。
読むのは誰か知らないが、200人からなる部隊が指示を求めて待機中ともなれば、何らかのリアクションはあるだろう。
俺はそこに、敗走中の混乱故の不正確な情報と、指揮官としての所感を書き加えておけばいい。
食料がもう残り少ない、明日にでも撤退できなければ全滅してしまう、かもしれない。
餓死をしていたずらに兵を失うぐらいであれば、総員を持って国境へと突き進み、魔王軍へ最後の突撃を敢行せんとす。
アリール辺境伯バンザイ。
そんなところでいいだろう。
「まあ、不正確ではあるが嘘は無いな」
文案を伝えると、ドルフは笑い出した。
失礼な奴だ。
戦時故の混乱で済まされる範囲に収まる表現を必死に考えたんだぞ。
「悪い悪い、しかしお前、よくこんな内容を即興で思いつくな。
撤退に成功したら吟遊詩人にでも転職したらどうだ?」
吟遊詩人か。
戦場にも行かなくて済むだろうし、うん、それもいいかもしれん。
そんな事を冗談めかして伝えると、彼は笑みを消して表情を真面目なものにした。
「お前の人生だ、俺が決めることじゃない。
だが、出来れば兵たちのためにも軍に残ってくれるとありがたい。
お前がいなければ、ここの連中はとうの昔に死んでいただろう。
俺だってどうなっていたかわからない。
できれば、頼む」
彼はいきなり頭を下げてきた。
こういう事をされると調子が狂うな。
「止めてくれよ、兵たちが見ている。
指揮官たるもの軽々しく頭を下げちゃいかんだろう。
それに、最低でもこの戦争が終わるまでは、俺は軍から足を洗うことはできないよ」
この戦争が終わるまで、あるいは俺の知る限りの知識を提供して、ゲームが現実になるという異常事態の影響が薄れるまで。
それまでは、俺が軍から去ることはできない。
別にこの世界の人々が無能すぎるとか、俺が全知全能の現代人様だからとかではない。
今の状況が異常であるという認識が俺しかない以上、少なくともその認識を諸王連合の上層部だけでも持ってくれなければ、この戦争には絶対に勝てない。




