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艱難汝を玉にす


――――時を遡る事少し前。


 眼前に映る船内のモニタリング表示画面は、大分減ったがそれでもあと10箇所も残っていた。

 だけど、もう時間が無い。

「コンピュータ、メインエンジンを廃棄のカウントをモニタに出した上で、音声指示して。この船が安全域に出れる様にナビゲートを」

『了解しました』


 私は顔を上げ、正面を見る。ヴェルトの背中を見詰めてから、少し大きな声を出す。

「ヴェルト操舵を頼める?」

 私の声に振り返って、少し考える様にじっとこちらを見るヴェルト。

「ああ、解った。操舵は任せろ。ナツキは多重シールドのタイミングや、衝撃後のカバーを。ティアは船の生命維持と緊急隔壁閉鎖を頼む」

「「了解!」」


 私は、ちらっと何も指示されていないフレアを見遣る。立ったままの状態で、とても不満げな表情を浮かべてヴェルトを睨み気味で見ている。

「……」


――――お門違いだよねぇ……。何も出来ない状況になったのは、自分のせいだという自覚が欠落しているってどーなのよ。

 私は小さくため息を吐き、コンソールに入力していく。


 ティアが声を上げる。

「各総員、安全ルームへ避難終了。緊急隔壁閉鎖します!」


『安全確保の為、隔壁を閉鎖します』

 コンピュータの音声が艦内へと流れる。


 エンジンルームからクルーが居なくなったのを確認してから、ピピピピピと、私はコンソールに指を走らせて行く。

「エンジンルーム減圧開始します。減圧完了後、メインエンジン廃棄します」


『カウントスタート。メインエンジン廃棄まで、あと60秒』

 全員の画面にはカウントが表示される。


「総員に告ぐ、衝撃波に備えて下さい」

 ヴェルトが船内に、警告を発する。


 そして、刻々と時間が減っていく。

『30、29、28、27………………5、4、3、2、1、メインエンジン廃棄します』

 メインルームに響くコンピュータの音声。


 操舵席のヴェルトが、船の運転を担う。

「サブエンジン出力最大。この宙域から離脱する」

 船内が刻みに揺れる。メインモニターに映される宇宙域の映像。


 警告音と、コンピュータの音声が船内に響く。

『廃棄したエンジンの爆発までおよそ、3分です』


「コンピュータ! 爆発の衝撃波に対して一番被害が少ない船の方向を割り出し、旋回調整を!! 船の後方中心に、多重バリアフィールド展開。」

 私はコンピュータに指示を飛ばしつつ、サブエンジンのエネルギーをバリアに振り分ける。

 モニター画面の小窓(別窓)に、宇宙船の背後の映像が出ている。

 宇宙空間に放り出され、弧を描きながらゆっくりと遠ざかる廃棄したメインエンジン。

 豆粒位になったところで、ピカッ! と光る。

 数拍おいて、ガタガタガタと激しい衝撃波が、船を襲った。例えるなら、ジェットコースターの横Gと、交通事故並みに吹っ飛ばされる感覚だ。

 横とも縦ともつかない、荒海の大きな揺れの様でもあった。


 ぶつんと、照明や、モニターの画面も真っ暗になった。

「え?」

 一瞬何が起こったのか理解できなかった。


『船体損害70%、乗組員の死傷者38名、航行不能及び時間内でのミッションを続行不可能の為、実習を終了します』

 抑揚の無い音声が響き、室内の照明が点灯した。



――――そして、私達の実習と言う名の実地テストが終了したのだった。


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