はじめまして。
ユサユサユサユサ。
ちょっと強い感覚で揺さぶられる。
――――だぁれ?まだ眠っていたいのに……。
バチーン!!と叩く音。
途端、激痛によって、あたしは覚醒した。
「おぎゃあ!《イタイ》おぎゃあ!《いたいよー》おぎゃあああ!!《なにすんのよ!》」
ん?
声が出てない?
言葉になってない?
口から出たのは、赤ん坊の泣き声だけだ。
「一時はどうなるかと思いましたが、これで一安心ですね。マスター」
そう言って布にあたしを包むのは、瞳と長い髪は瑠璃色の中性的な美人だった。
でも、感情が一切入っていない感じだ。
物凄く違和感がする。
「では、通常任務に戻ります。何かありましたらお呼び下さい」
「解っているわ。有り難うね、ラピス。外にいる二人を呼んでくれる?」
「はい。了解致しました」
あたしをベッドに横たわる人に渡すと、その部屋から出て行ったようだ。
どうして出て行ったようなのかって?
だって、首が回らないから、目で見える範囲しかここがどんな所か解らない。
視界は物凄く狭い。
見えるのは目の前にあるものだけだ。
左右には、あたしを包む布がもっさり(?)してる。
目の前には疲労の濃い顔をした、美女。
化粧はしてないのに、すっきりとした顔立ちと少しきつめの目元が印象的。
瞳の色はエメラルド、肌は疲労のせいだろうか青白い、頬にさらりと流れるストレートの白金の髪。
あたしを見詰めて。
「ああ、良かった」
安堵の声を上げて、微笑みを浮かべていた。
「母様!」
声変わりのして無い声がする。
「ユーナ!大丈夫かい?」
低いテノールの優しい声が、美女に掛かる。
「貴方!コウ!」
美女が破顔した。とても嬉しそうな笑顔だった。
声を掛けた二人が、どんな人なのか見たいな~と思っていたら、ふわりと体が浮いた。
視界がぐるっと回る。
目に飛び込むのは、真っ白い簡素な内装と、出っ張った壁らしき所にデスプレイ(モニタのようなもの)がはめ込まれ何かを映し出していた。
その下に、動く机の様な物の上に、ノートパソコンみたいなものと、太いペンみたいな物が置かれていた。
見たことも無い空間だった。
「父様!僕にも抱かせてっ!」
「だぁめ!俺が先だぞ、コウ」
あたしの真下の方で、男の子の声がする。
懇願をいとも容易く制するテノールの美声と共に、その声の主があたしを覗きこんで頬擦りした。
「逢いたかったぞ、俺の可愛い愛娘~っ」
嬉しそうに言うと、あたしを高い高い~ってして、頬にちゅっと口付けをした。
テノールの美声の主は、柔らかな金髪で、ちょっとタレ目の青い瞳で、肌は小麦色で、マッチョ過ぎない均整の取れた体格の美丈夫だった。
美丈夫の足元で、不満げな表情で見上げる美少年が一人。
「父様!ずるいーーっ!」
「レオン、コウにも抱かせてあげて下さい」
「しょうがないなぁ」
残念そうに言い、美丈夫ことレオンはあたしをそっと渡した。
きらきらとした眼差しを向けるコウ少年は可愛い。
瞳は青でサファイアの様、髪はサラサラした白金の糸の様、肌は白く、まるでお人形さんのようだった。
「僕は、君のお兄ちゃんだよ~。よろしくね~」
幸せそうな笑顔で、あたしに言った。
この3人があたしの家族なんだ……。
こそばゆい感じだけど、胸の奥がじ~んとなってしまう。
「あ、あ、あ、泣いちゃう?」
お兄ちゃんの慌てた声に、はっとなったが抑え切れなかった。
感情と意識と肉体とが同調しれてないから、泣きそうになったら止められない。
涙と声が爆発する様に出ていった。
「おぎゃああああ《うえぇぇん》」
「泣かないで、泣かないで」
「お兄ちゃんは怖くないよ~よしよし」
兄は必死に泣かないでと声を掛けて、父は、ぽんぽんぽんと背中を優しく叩いてくれる。
でも。
逆にその優しさが、一心に向けてくれる愛情が嬉しくて、涙が、感情が止まらない。
「おぎゃああああああ《うれしいのありがとう》」
あたしは泣き止む頃には泣き過ぎで疲れてしまい、いつの間にか眠りに落ちていった。
次回、主人公の名前が出ると思います。(>ω<;)
家族構成です。
母:ユーナ・アマハ
父:レオン・ルシェルシュ・アマハ
兄:コウ・ルウィン・アマハ