内緒のお話2 SIDE BOYS
「カグラ殿は、今のところ、我が孫にはあまり興味はないという感じですかな?」
「ええ。今のところは……ですが。俺よりも気になっているとすれば、レーツェルでしょうね」
一見すると穏やかな遣り取りだが、言葉に含まれる意味は際どい。
「うぇ!?」
いきなり話を振られたレーツェルがぎょっとした。
「ほぅ。専属騎士殿がですか?」
すーっと周囲の温度が下がった気がして、レーツェルは本気で焦る。
「あ、はいっ! 魔法で未分化の子としてますが、私としてはとても可愛らしくて守ってあげたいと思います!」
レーツェルは実際に思った事を述べる。反応が可愛くてついついからかってしまった事だけを除いて。
「可愛い孫なので、お二人ともどうぞ気に掛けてやって下さい。問題なりそうな事などに巻き込まれていたら助けて頂けると有り難く思います」
幾分和らいだ笑顔で、ルゥインが二人に告げた。
「はい。勿論です」
「なにより、俺達は女王陛下より厳命されておりますからご安心下さい。害する者は徹底的に排除していきますから……どうぞ、その時は理事長の権限をお使い頂きたい」
レーツェルの言を継いで、カグラは交渉へと持ち込んでいく。
この学院の中では、第二皇位継承者という立場も実際はさほど強力では無い。
どんな権力を持っていても、学生と言う立場になれば基本平等に扱うのがこの学院の流儀なのだ。
ちょっとした場面なら(こういった内密なお茶会参加などは可能)何とかなるのだが。
表立って不正を暴いてみたりと言うのは難しい。
学院の規律を守る自警組織的(風紀委員)などが、それを従事するのでそう言った所に所属していないといけない。
王族に連なる者が、過去そう言った組織に入っていた例は少なからずあるのだが、カグラとしては正直面倒事を背負い込むのは避けたいので入るつもりはない。
なので、一番の権力者と繋がりを最初から持ってしまえばいいと言う事で理事長自身に交渉と言う訳だ。
自分の手に余る問題なら、丸投げOK状態にしておけば後々安心だ。
保険は一つでも多ければいいのだから。
隙の無い笑顔でカグラは、ルゥインの言葉を待った。
「カグラ殿、君はお父上以上の存在になりそうですな。陛下が次期王にと望む理由が解ります」
「……」
ルゥインはクスクスと穏やかな笑いながらカグラを評価すると、不本意そうに眉間に皺を寄せて反応した。
「良いでしょう。ですが、こちらの提示する条件を呑んで頂きます」
「何を?」
「あの子は、他者と関わった事が殆どない。故に、本気であの子を好いてくれるのならば構いませんが……お遊びなどであの子の心を掻き乱すのだけは止めて頂きたい」
「……」
ルゥインの言葉に、凍りつくレーツェルと対照的に平然とした態度でいるカグラを眺めながら、シエンが「ばかねぇ~」とぼそっと呟く。
「条件を呑んで頂けますかな?」
ルゥインの否定を許さない圧力に。
「ええ。俺はそのつもりですよ」
頷きながら、さらっと答えるカグラと。
「はい。肝に銘じておきます」
深々と頭を下げて、返事をするレーツェルだった。