表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/70

仕込みはばっちり?


 豪華な廊下をてくてくと歩く。

 私の足元では、黒猫にみえる黒豹のソードがトテトテトテと付いて回る。


 あぅ~~。可愛いな~。

 思わず顔が綻ぶ。


「にゃぁぁ」

 目が合うと、ソードが鳴く。


 何だよって返事をされた気になる。

 たぶん、間違ってはいないだろう。

 外では猫として振舞うと言っていたので、その通りの反応だけどね。


 二人(今は一匹だけど)して、階段を使って一階へ移動する。

 建物は10階建てで、各階への移動手段はエレベーターと階段の2つだけど、この階段は音声認識でエスカレーターとなる。

 基本的には稼働していないので、上に乗った後『3階へ』と言えばその階まで移動してくれるという優れもの。

 自力で行くのを好む人は、そのまま上がって行けばいいと言う寸法だ。


 ちなみに私の部屋は2階にある。

 ソードの出入りは、窓からでも楽々な位置の部屋でもある。

 まぁ、家族の誰かが手を回してこの部屋に決めたのかもしれないけど。

 職権乱用はどこまでいくのかを考えたら、ちょっと頭が痛くなるわ、ホント。


 まず一番に散策する場所は、各寮で区切られた中庭だ。

 窓から見えた庭が、凄かった。

 イングリッシュガーデンぽい感じの作りだったので、お茶会したら映えそうと思ったのでじっくり覗いてみたいと素直に思った。

 事前情報で、それぞれの寮の区切り毎に庭も違うらしいとの事を聞いていたので興味が湧いていた。

 あと、お祖父様から「入寮したら中庭を必ず見においで」と言われていたのもあるので、最初は中庭に探索するのを決めていた。


 当初の予定と違うのは、黒豹のソードがナイト役を務めてくれることかな。

 勝手知ったる我が家っぽい足取りのニャンコ風な彼。

 てとてとてと……と歩いていても、寮内にいるすれ違う生徒の殆どは気にしていない様子が見てとれた。

 どうやら、箱に入ったのは仕込みみたいなものだったようだ。

 兄様からのメッセンジャーとして態々箱に入って、自己紹介したってワケみたい。


 中庭へと続くドアは、木製風の扉ではないが不思議な文様で細工されている。

 取っ手らしき箇所に手を触れると、シュインと自動にドアがスライドして開いた。

 外に出ると、石畳と緑の絨毯で出来た小道と植えられている花々が出迎えてくれた。


「わぁっ……」

 私は思わず感嘆の声を上げる。


 今の私は、本物の植物に触れる機会は少ない。

 だからかな、前世で見た時よりも何故か物凄く感動した。

 花や草木の匂い。

 さわさわと音を立てる植物たち。


 なんか、良いな。こういうの。

 晴れた日はのんびりここで、1日ぼーっとしていたい。

 和む。

 癒されそうだわ。


「うにゃあああん」

 前を歩いていたソードが振り返り、私を見て鳴いた。

 そして、てててと軽い足取りで先を進む。


「ん?」

 私は早足でソードの後を追う。


 薔薇のアーチを抜けると白い東屋が建っていて、そこの近くに座り花の植え替えをしている作業着を着た庭師らしい人が一人いた。

 ソードはその人に寄って行き。


「にゃー」

 と挨拶をする。


「おお、ソードかい。元気か?」

 背中しか見えないけど、老齢な男性の声が耳に届く。


「うにゃ!」

 元気だ! と宣言するかの如く答え、私の方へと駆け寄って来る。


「にゃ、にゃー、にゃあー」

 何かを告げる様な、鳴き声を上げる。


 作業をしていた人が立ち上って、こちらを向いた。

 好々爺した老人が。

 茶色い髪と翡翠色した瞳を持った、見知った人が穏やかに笑っていた。


 おおおおおお、お祖父様!!!

 なななななななななな、なんで!!

 こんなトコロで庭いじりなんてしてるのぉーーーー!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ