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PRINCEと宮廷治療師

 全くもって、意表を突いてくれる美少年だと思う。


 頭一個分位しか身長差がないと言うのに、さらっと抱き上げてしまうなんて結構力持ちなんですね、カグラ君。


 スタスタと歩いて、私をベッドの縁に座らしてくれた。


「カァッコイイ~、流石は王子よね~」

 ヒューヒューと、シエンが言うと半眼で彼を睨んだ。


「俺は王子じゃない。間違えるな」

「あぁら、王子も次の王太子も変わらないじゃないの」

 水が入った手桶のような物と、タオルの様な布を持ってケラケラと笑いながらシエンが言った。


「え?ええ?王太子?」

 目の前に居るカグラと、シエンを代わる代わる見詰めるとびっくりした顔で。


「え、名乗ってないの?王子!?」

「だから、王子は止めろ」

 そう言うと、はぁ……と息を吐いてからカグラは私を見た。


「俺の名は、カグラ・ジーノ・ラグナだ。ラグナ公爵家の長男だ。呼び方はカグラでいい」

「あ、はい。えっと、助けてくれて有り難う御座います。カグラ様」

「様はいらない」

「え、でも、公爵家の人なんでしょ?」


「い~のよ。様なんか付けて呼ばせたら、陛下に怒られるものねぇ?」

 シエンが私の足元に、桶を置いて布を1枚その中に入れ、乾いたもう一枚を私の脇に置いた。


「ああ。だから、俺の事は気にせず、カグラと呼んでくれ」


 シエンに頷いて答える、カグラを見ながらいいのかなぁって思うが、さっきの女王陛下の言葉を反芻してみる。


 『私の敬愛するお姉様の』って台詞から察するに、母様の事が好きなんだって事が解る。


 どんだけ、母様はこの国の中枢に食い込んでいるのやら。

 考えたくないなぁ~~。怖いもん。


「裾捲るけど良いかしら?」

 ぱちゃぱちゃと布を濡らして絞ると、シエンが私に告げた。


「あ、はい。じゃぁ、私、裾押さえてますね」

 擦り剥いた箇所まで、生地を捲り上げて両手で押さえる。


「ちょっと染みるかと思うけど我慢してね」

「大丈夫ですから、ぱぱっとやっちゃって下さい」

 痛い事はさっさとしちゃった方が良いものだから、私はそう答えた。


「じゃ、失礼して」

 にこりと笑って、シエンは濡れた布で血の汚れとかを拭き取っていく。

 傷口に触れた時、少し痛かったが問題なく我慢の出来るレベルだった。

 優しく、手早くしようというシエンの心遣いが見えた。


「はい、出来た。それじゃ、治癒しちゃうわね」

「お願いします」


治癒キューア

 シエンが私の傷口に手を翳して呪文を唱えると、ぽーっとした光が生まれる。


 まるで蛍の光の色に似ている。

 柔らかい輝きが、身体に染み込む様な温かさを私に与えてくれる。

 緊張の糸が解されていくのが解った。


「はい、傷の方はこれで良し!次は他の所ね。手を見せて」

 私はシエンの言葉に従って、両手を差し出す。

 良く見ると血は出ていないが、皮が擦り剥けている。


「ここも治しちゃいましょ。治癒キューア

 シエンはそう言うと呪文を唱え、私の掌を元通りの綺麗な状態へと変えてゆく。


「後は……ここね」

 じっと見詰めるシエンの視線の先は、首筋。


「えと、そんなに酷いんですか?」

「間違いなく、それを見た陛下は暴れるとは思うし、父上も賛同して何かをしでかすと思う位、良いとは言えない」


「わぁ、ステキ☆宰相様も参戦しちゃうんだ~」

 シエンが茶化して言う。

 ステキと言っているが実際、目は笑っていない。


 父様や兄様が見たら、号泣して大騒ぎにはなりそうな感じかもしれない。

 それはそれで、色々と問題がある。


「触れるけど良いかしら?」

 シエンが私に伺う。


 もしかしたら、シエンは私に拒絶されるのかもと思っているみたいだ。

「はい、お願いします」

 きっぱりと言ってお願いすると、シエンはきょとんとした顔をしてからニコリと笑った。


「ナツキちゃんは、度胸あるわねぇ~。普通は怖がるんだけどね~」

「シエンさんは、酷いことする人には見えませんし。何より、こんな姿を兄様や父様が見た時が大変ですから」


「じゃ、少し我慢してね」

 シエンはそう言うと、そっと私の首筋に触れてくる。


治癒キューア

 ほわん……とした温かさが首筋に宿る。


「はい、おしまいよ」

「有り難う、シエンさん」

「どういたしまして」

 ウインクして私に笑いかけるシエンは、派手な服装とは違い人を和ませる感じが強かった。


 不思議な人達だなぁ~と、私は素直に思った。


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