永遠の旅路に咲く花を探してたはずなのに、仲間がポンコツすぎて寄り道無限ループに突入した件!
短編小説その15
「よし!みんな、今日から俺たちは“永遠の花”を探す旅に出る!」
胸を張って宣言したのは、この物語の主人公である勇者リクト、18歳。
王様から「世界を救ってこい!」と押し付けられ、半ば強制的に旅に出ることになった。
「ところでリクト、その永遠の花ってどんな見た目なんだ?」
剣士ランスが飯盒片手に訊ねる。
「え?……なんかこう、光り輝いてて、すごいやつ」
「ざっくりすぎだろ!」
「おい勇者、それでよく出発したな!」と盗賊カナタがツッコむ。
「まぁまぁ、花を見つけたら“あ、これだ!”ってわかるから大丈夫だって!」
そう言った俺だったが、この後、仲間たちの“ポンコツ具合”を思い知ることになるとは、このときはまだ知らなかった――。
「こっちだよ!絶対こっち!」
フィアが自信満々に森の奥を指さす。
結果、三時間後。
「……完全に迷子じゃねぇか!」
「え?うそ?ほら、あの岩、見覚えあるし!」
「さっきからその岩、五回は見てるんだよ!!」
フィアの迷子スキルはもはや才能。地図を持たせても逆に混乱するので没収した。
「リクト!モンスターだよ!」
森の中から突如現れた巨大なイノシシ型モンスター。
「よしミミ、頼む!」
「まかせてっ!ファイアーボ――」
\ドガアアアアアアン!!/
「ぎゃあああああ!!」
「お前なんで自分を爆発させてんだよ!!」
「だって詠唱ミスったんだもん……」
結果、イノシシは無傷。俺たちだけ黒焦げ。
これはひどい。
次の戦いでは、巨大なスライムが襲いかかってきた。
しかし――。
「よーし、今のうちにシチュー作っとくわ」
「お前なんで鍋出してんだよ!?スライム来てるんだぞ!?」
「いや、こういうとき腹が減ってたら全力出せねぇし」
「死ぬ気満々か!!」
しかもこの後、シチューを吹きこぼし、さらに大惨事。
戦闘より飯を優先する剣士ってどうなの。
結局この日は、モンスター一匹も倒せず、森の出口すら見つからず、宿代もないまま野宿となった。
「……なぁ、リクト。俺たち、このままじゃ永遠の花どころか、永遠に出発地点から出られなくね?」
「……かもしれん」
俺は悟った。
この旅は世界を救うためじゃない。
**“ポンコツたちをなんとか更生させる旅”**なんだ、と。
永遠の花はまだ遠い。
今日も彼らは寄り道し、迷い、爆発し、飯を食い、そしてまた明日も進まない。
「おぉーい!こっちこっちー!」
僧侶フィアが森を抜けて叫ぶ。
「おおっ、やっと村に着いたか!」
昨日、丸一日迷子だった俺たち勇者パーティーは、ようやく人里にたどり着いた。
村の名前は――トバス村。
永遠の花の情報を仕入れるために寄ったのだが、村の入り口でいきなりカオスな光景に遭遇した。
村の広場はお祭り真っ最中!
「な、なんだこれ……?」
俺が立ち尽くすと、広場はすでに人でぎゅうぎゅう。
太鼓の音、法被姿の村人たち、踊る子供、焼きそばと焼き鳥の屋台、そしてなぜか巨大なお神輿。
村長らしきおじいさんが大声で叫ぶ。
「勇者様方!いいところに来た!ちょうど今から“天空祈願祭”じゃ!」
「天空祈願祭……?」
「おう、神輿を担いで神に願うのじゃ!選ばれし者は神輿に乗って、天へ飛ぶ!」
「飛ぶ!?」
俺が動揺している横で、ランスがきらきらした目でつぶやいた。
「やべぇ、絶対面白そうじゃん。リクト、やろうぜ!」
「やらねぇよ!!」
なぜか強制参加する勇者パーティー
だが村人たちに囲まれ、なし崩し的に俺たちは神輿を担ぐことになった。
「うおおおおっ!わっしょい!わっしょい!!」
剣士ランスはノリノリ。
盗賊カナタは「これ終わったら屋台荒らすからな」と不穏なことを言いながら必死に担いでいる。
フィアは方向音痴なので掛け声のタイミングすら合わない。
魔法使いミミはなぜか法被の下に爆弾を隠し持っている。
「なんでお前爆弾なんて持ってんだよ!」
「だってお祭りと言えばドカーンでしょ?」
「絶対やめろおおお!!」
そして、お祭りのクライマックス――“天空祈願”の時間がやってきた。
神輿の上に乗る「天空の勇者」を抽選で決めるらしい。
「では……今年の天空勇者は……」
村長が引いた札を高々と掲げる。
「勇者リクト様!」
「おおおおおっ!!」
「おめでとう勇者様ぁぁ!」
「いやいやいやいや!俺そんなの望んでない!!」
逃げる暇もなく、俺は神輿の上に担ぎ上げられた。
神輿、予想以上に本気で飛ぶ
「いっけーーー!!」
太鼓の音が最高潮に達した瞬間、神輿の下の魔法陣が輝き始める。
\ゴゴゴゴゴゴゴ……/
「え、ちょっ……これ、ガチで飛ぶやつ!?」
「リクトォォォ!!がんばれー!!」
「無責任に応援すんなあああああ!!」
次の瞬間――
\ドオオオオオオン!!/
神輿はロケットのように打ち上がった。
俺の絶叫が青空に吸い込まれていく。
空の上で発生するさらなる悲劇
「うおおおおっ!たっか!こわっ!!」
高度数百メートル。
眼下にはトバス村と、遠くに広がる大地。
そして雲の向こうには、巨大な光の花のような幻影が浮かんでいた。
「……あれってもしかして、永遠の花……?」
奇跡的にヒントを発見したと思ったその瞬間。
\ドカーーーン!!/
背後で爆発音。
振り向くと、ミミが放った誤爆魔法が神輿の推進魔法陣に直撃していた。
「ごめーん!手が滑っちゃった☆」
「お前だけはもう喋るなぁぁぁ!!」
結果、俺は神輿ごと村の外れの湖に墜落。
気がつくと、全身びしょ濡れで魚に突かれていた。
お祭りの後で
「……で、何も収穫なしか」
湖畔で焚き火を囲む俺たち。
永遠の花らしきヒントは見えたものの、場所の特定には至らず。
「いやいや、収穫はあったぜ!」
ランスが笑顔で串焼きを差し出す。
「村の屋台でうまい飯食えたし、最高の一日だったな!」
「お前らの中で世界救う優先順位、飯より下なのか……?」
俺は頭を抱えた。
そして悟った。
この旅はきっと、永遠に寄り道し続けるんだ。
ありがとうございました