1/1
序章
コンビニアルバイトをクビになった。
原因は大迫善治が俺に罪をなすりつけたから……それに尽きる。つまり明確だった。
大迫は40をとうに過ぎ、ホームレスの過去を持っていると語っていた。
バイトがこの1本しかない俺は親近感が湧いて、大迫のことを仲間だと思っていた。
店長からクビ宣告を受けた後で、男子トイレに向かった。俺はもはやスタッフではなく、客としてトイレを借りた。
男子だか女子だか教養だかよくわからないマークがついた三つのトイレで、迷わず男子トイレに入る。
大迫が立っていた。
「閉めろ、鍵」とだけ呟く。
大迫は俺を見るなりすみませんと何度も叫んだ。気狂いみたい。「俺にはもうどうしようもなくて」
俺だって同じだ。
店長の靴音が、間も無く聞こえた。トイレの中がなんだか騒がしいと思ったからだろう。
俺はせっせと逃げ出し自動ドアを潜った。もはや俺はホームレスだった。
もういい、こうなったら何がなんでも億万長者になったる。
雲一つない空を見上げ、俺は誓う。
そうだ。
目標は、一億円——。