表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/5

第5話


遠く獣の鳴き声が聞こえる、日本じゃ考えられないくらい静かな夜。

俺たちはだだっ広い草原を抜け、鬱蒼とした森へと辿り着いた。

セレナ達はなんどもこの道を通っているようで、この森を抜けるのが1番速いのだと教えてくれた。

ここで一旦野宿をする事に決めた彼女らは、良ければ一緒に、と誘ってくれたのでお言葉に甘えている。


「……これからどうしよっかなぁ」


色んなことがありすぎて眠れそうもないので、火の番を受け持ってはや3時間ほど。

俺はこれからのことについて頭を悩ませていた。

行くあてもないし、かと言って超絶一般高校生の俺にできることなんて限られているし。

うーん……と頭を抱えていれば、パキリと枝の折れる音が耳に入り込んできた。


「っ!?」

「よ!なーに悩んでんだ?」

「……なんだ、ライアンか、びっくりした」

「ははっ、すまんな!オレも何だか眠れなくてなぁ、外に出たらユーサクが頭抱えてるもんだから、何か悩みごとかと」

「うーん……悩みごとと言えば悩みごとなんだけど……」


昼間と同じくゴツイ甲冑に身を包んだライアンが、がしゃりと隣に腰を下ろす。

一見、少し能天気そうに見えるが、実はあの4人の中でも特に俺を気遣ってくれていたりする。


「俺、いきなりこの世界に来たからさ。知り合いとか友達も家族もいないし、常識も知らないから……この先どうすればいいんだろうって」

「確かにいきなり違う世界に連れてこられたら困るよな……とりあえず、常識とこならリィに聞くのが1番早いぞ」

「確かに……1番しっかりしてそうだ」


メガネをかけた赤髪の少女を思い出す。

俺よりほんの少し年上のリィは、びっくりするくらいしっかりしている。

早くに両親を亡くしたため、ほぼ自分一人でやってきたんだそうだ。


「もしユーサクさえ良ければ、オレ達の仲間になるか?」

「……えっ?」

「ま、すぐにとは言わけどさ。……さっき、友達もいないって言ってただろ?でもオレ達はもう、ユーサクのこと友達だと思ってるぞ」


次の町に着くまでに考えとけよ、なんて、俺の頭をクシャクシャに撫でて寝床に戻っていく。

右も左も分からない、もしかしたらライアン達だって俺を騙してるのかもしれない。

それでも、何も無い俺を気遣ってくれたのが嬉しくて、鼻の奥がツーンとしてきた。


「……仲間、か」


魔物や猛獣がいたり、山賊が現れるかもしれない、ということで町まで一緒になったライアンたち。

冒険者だと名乗る彼らは、その何ふさわしく腕っぷしも強かった。

そんな彼らと、俺が……?


「無理だよ、こんな一般人が……能力がある訳でもないし」


セレナやデルタのように特別な力がなくても、ほんの少しでも役に立てる力があれば……。

その瞬間、何かがチラリと頭の中をよぎる。

何かを忘れているような、変な違和感。


「能力……特別な力……あ!!」



――「あぁそうだ、お主らに簡単に死なれては面白くないからな。特別に力を分け与えてやろう。1人にひとつ、我の特別な力だ。役に立つ力もあれば、立たない力もあるかもな……」


1人にひとつ、特別な力。

こんな状況だけど、なんだか心がウキウキしてきた。

俺は早速火が見えるギリギリの所まで移動して、ボソボソと呟きながら試してみる。


「……ファイヤー!いや違うか……ウォーター!いやいやウォーターってなんだよ。あとは……」


アニメで見たことあるかけ声を試してみるが、一切何も起こらない。

能力についての説明なんてひとつもなかったし、手がかりすら存在しないことに、思わず膝をついた。


「……振り出しか」


せっかく、俺にも出来ることがあると思ったのに。

どんな力か分からなくても、出来ることが少しでもあるならば、俺を友達と呼んでくれたあの男たちと……。

一旦冷静に考えてみようと、汚れることも気にせず地べたにごろんと横になる。


「うわ、めっちゃ星見える……」


東京とはまったく全然違う、無数に輝く星々。

そんな星が浮かぶ空は、夜なのに真っ暗ではなくて、紫色や水色、ピンク色が混じった不思議な……それでいてとても綺麗な色だった。


……それにしても。


「なーんかチラチラちらつくんだよな、何だこれ」


ちょうどセレナからヒールをかけられた時だろうか。

ずっと視界の端を、変なあかりがチラついているのだ。

水面で目を確認しても特に何も無く、目を擦ったり洗ってみても一切消えなかったそれ。

あまりの鬱陶しさに、意味が無いと分かっていながらも思わず手を振り払った。


「……えっ!?」


これは一体どういうことか。

先程まで星空が映っていた視界の中が、文字で埋め尽くされた。

俺の名前、身長、体重が書いてあったり、レベルやスキルと書いてある欄もある。

これは、もしかして、もしかしなくても。


俺は震える手を伸ばして、スキル、と書いてある所を押してみる。

ポコンっと軽快な音を立てて、近いの文字が移り変わり……。


「スキル……カウンターストップ……えす、えぬ?」


"触れたものの時間を2秒間止めることができる"という簡素な説明と、右上に書かれたSNという謎の文字。

それが何なのかはいまは分からないが、とりあえず……。


「に、2秒間……!?」


俺のスキル、もしかして最弱では……?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ