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夫が前世の記憶を取り戻したようです。私は死亡ENDモブだそうですが、正ヒロインをざまぁして元気に生きたいと思います。  作者: 越智屋ノマ@夜逃げ聖女【重版】1巻2巻
【第2章】ヒロイン乱入。ミュラン様が狙われてます!

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【28】ミュランの勘違い

こうして偽聖女フィアは捕まり、アスノーク公爵夫人リコリスは無罪を言い渡された。ミュランとリコリス、そしてアスノーク家の妖精たちは、ようやく平穏な日常に戻ったのだった。


   *


最愛の妻リコリスと久々に夜をともにしたミュランは。翌朝目覚めた瞬間に、重大なことに思い至った……


「もしかすると! この世界は、ファンディスクのほうだったんじゃないか……!?」


ミュランにくっついて寝息をたてていたリコリスも、目を覚ましてしまう。

「ふぁ……どうしたんです、ミュラン様。朝っぱらから騒いじゃって。怖い夢でも見ました?」


夫婦の寝室で。

寝ぼけ眼でモソモソと毛布をかき寄せ、幸せそうにまどろんでいる妻リコリス。

ミュランは、青ざめながらリコリスを見つめていた。


「……ミュラン様? だいじょぶですか? ……ふぁんでぃすくって、何ですか?」


「ファンディスクというのは、ゲームの番外編みたいなものだよ。そのファンディスクのストーリーでは、リコリスが主人公だったんだ!!」


「うわ……またミュラン様が、おとめげーの話を始めちゃった……」


ファンディスクとは、ゲーム本編をプレイしたユーザーを対象とした、お楽しみ要素の強い番外編ゲームのことである。ゲームファン(Fan)に向けた、お楽しみ(Fun)のためのディスクだから、ファンディスクと呼ばれていて、本編の続編やパラレルワールドなどが描かれることが多い。


「一言で言うと、ファンディスクの物語は「リコリスを幸せにするためだけのご都合ゲー」だ。本作ストーリーの17年前が舞台で、リコリスを愛でて応援するためのゲームだと言われていた!」


リコリスは首を傾げて、きょとんとしながら聞いている。

「……わたしのための、物語?」


「乙女ゲーの本編では、リコリス夫人は意外と人気のあるキャラクターだったんだ。……だから、リコリスを主人公にした「もしもの世界(ifストーリー)」を描いたファンディスクが販売された」


リコリスは戸惑いがちに、「わたしが人気?」とつぶやいている。


「人気って……でも、リコリス(わたし)は脇役だって言ってましたよね? ほとんど出番のない、影の薄い女だって聞いてましたけど。そんなわたしが、どうして人気者になれるんですか?」


「君があまりにもひどい死に方をするものだから、逆に注目が高まったんだよ」


夫に無理やり孕まされて精神を病み、自ら命を絶ってしまうリコリス。リコリスの設定がエグすぎる! と、ゲームのファンから非難が殺到した。


セリフすらないモブキャラであるにもかかわらず、リコリスは薄幸の美少女としてファンを獲得していた。出番の少なさがむしろファンの想像力を掻き立てたのか、リコリスを描いた同人誌なども多数出回っていた……はずだ。


「残念ながら、前世の僕はファンディスクを未プレイだったから、詳細については分からない。だが……確かリコリスは、妖精女王の生まれ変わりとしてチート能力に目覚めたり、国を救う大活躍をしたりして、たくさんの男性たちから愛される逆ハーレムな物語だった……と、思う。アルベリヒ陛下や、エドワード王太子も攻略対象だったかな」


ミュランが言うと、リコリスは「ひっ」と声をひきつらせた。


「ミュラン様! わたし、逆ハーレムとか絶対イヤです。ミュラン様以外の人なんて、考えただけで鳥肌ですから!」


「あ……ありがとう」


そのファンディスクでは、リコリスが男性陣から愛される一方、悪役令嬢として本編ヒロインのフィアが暗躍しまくっていた。聖女どころか偽聖女として、呪いを駆使して災厄を振りまくフィアの姿は衝撃的で、「フィアのイメージを壊すな」とファンから不満が爆発していたはずだ……


前世のミュランはファンディスクを「なんかクソゲーな気がする……」と否定的にとらえ、購入しなかった。だから、物語のあらすじ程度しか分からない。


「それで……あの……」

もじもじと、頬を染めたリコリスが、言い出しにくそうにしていた。


「なんだい?」

「その「ふぁんでぃすく」の物語では……わたしとミュラン様の間には、双子ちゃんは生まれますか?」


白い肩まで赤く染めて、リコリスは少し不安そうに尋ねてきた。ミュランは、思わず言葉に詰まる。


(……ファンディスクの物語では、リコリスと僕の間に子は授からない。そもそも、ゲーム開始直後にミュランは呪い殺されて、リコリスは未亡人になっていたからな……)


本編でもファンディスクでも、ミュラン=アスノークは最低最悪の夫のまま人生を終える運命だった。


沈黙してしまったミュランを見て、リコリスは泣き出しそうな顔になる。


「あの……ミュラン様……?」

「授かるよ」


ミュランはリコリスを抱き寄せて、そっとキスをした。


この世界は、すでにゲームの筋書きとはまったく違うモノになっている。死んでいるはずのミュランが生きていて、リコリスと愛し合っているのだから。娯楽で作られた運命ものがたりなんかに、怯えていたって意味がない。


「大丈夫。絶対に授かるよ。何度でも愛し合おう」

ミュランが微笑むと、リコリスはとろけるような笑顔を返した。


「大好きです。ミュラン様」

「愛してる、リコリス」


互いの肌のぬくもりに甘え合い、唇を重ね合う。

互いに愛をささやきながら、2人は再び重なり合った。



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