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無人島生活、一週間目のある日

 無人島生活が始まって一週間。

 少ない仲間――主に女子と共にたくましく生きていた。


 どうして男子がいないのだろうとか、どうして先生の一人や二人いないのだろうとか……疑問に思うことは多々あった。


 けれど、あの嵐だったんだ。


 奇跡的に生きていただけでも、幸運と言えよう。


 俺は、浜辺で釣りをしながら、一週間前の転覆事故を思い返していた。思えば、酷い経験をした。


 なにがどうしたら、船があんな風に逆さまになるかね。



「……それにしても」



 それにしても、良い尻だ……。

 俺の目の前には北上さんのキュートなお尻があった。


 彼女は大胆にも水着姿(ビキニ)で釣りを楽しんでいた。あのビキニは、転覆船から流れ着いた漂着物の一部らしい。

 たまたまサイズの合うものがあるとは驚きだが、なんにせよ、目の保養に最高だった。

 北上さんは、実に俺好みのお尻をしている。素晴らしい、芸術的だ。



「どうかしましたか、早坂くん」

「いや、海が綺麗だなって」

「なるほど。てっきり、あたしのお尻を楽しんでいるのかと」


「うぐっ……テレパシー使いかよ。やめてくれ」

「視線を感じましたからね」



 相変わらず鋭いというか、サバゲー女子にしては能力値が高すぎる気がする。やっぱり、軍人とかかな。下手すりゃ、異世界人の可能性も――なんてな。



 冗談はさておき、俺も釣り竿を上げてエサを確認した。



「だめかぁ。食われた」

「この辺りの魚は手強いですね」

「エサが悪いのかなー」


「かもしれませんね。やはり、イノシシ肉ではなくミミズの方がいいでしょう」



 少し前に捕らえたイノシシ肉を使ってみたのだが、ボロボロになったり、食われるだけで魚を釣り上げることは出来なかった。

 となると、ミミズを使う方がいいのかな。



「けど、あのニョロニョロ感が嫌なんだよなあ」

「気持ちは分かりますが、海釣りはミミズなどのニョロニョロ系が基本ですよ」

「詳しいな」

「サバゲー女子ですから」


 ドヤ顔の北上さん。なんていうか、たまに可愛いなこの人。

 いつもクールな表情であんまり笑わないけど、妙な仕草が胸にキュンと来る時がある。 ギャル系な風姿をしているけど、ギャルっぽくないところも、また良い。


「……」

「どうしました、早坂くん。見惚れちゃいました?」

「う、うるさいな……」


「ふふ。そういうところも可愛いです」


「……そ、それよりミミズはいいのかい」

「そうでした。一度、釣りを切り上げて……いえ、少し休憩にしましょう。ほら、今日は真夏日ですし」



 ギラギラと照り付ける太陽。

 今日も容赦なく日光を降らせてきやがる。

 夏は嫌いだ。

 単純に暑いから。


 一度、森へ避難して涼んだ。

 森の中は、日陰だから割と涼しい。風もそこそこ通るし、悪くはない。


「あぁ、クソ。水が飲みたいな」

「はい、どうぞ」


「え……この水、どうしたんだい?」


「これは蒸留装置を使って確保した水ですよ」

「蒸留装置って、まさか」

「はい。そのまさかです。落ちていたペットボトルを使い、小石、砂や焚火から出た木炭砂、布などを使って濾過装置を作ったんです。それを煮沸したものですので、安全ですよ」


「は~、蒸留装置をねぇ。俺の知識にはあったけど実際に作るとは」



 俺はありがたく頂き、水を飲んで喉を潤した。

 うめぇ……生き返るぅ!


 生きている喜びに浸っていると北上さんは、とんでもないことを口にした。



「ちなみに、それ、あたしの尿です」


「ブッ――――――!!!!!!!!!!!!!」



 な、なんだってえええええええ!?


 そりゃ、サバイバルの最終手段……。

 プライドと恥を捨て、飲尿する行為。――でも、それは食べ物も飲み物も無くなったときの極限状態で使う最後の、死を覚悟したときの究極的手段。


 今は、洞窟でも水を確保できるし、そこまでする必要はないはずだが!?



「冗談ですよ」

「……って、冗談かよ。でも、妙にしょっぱいような」

「海水を蒸留装置で水に変え、煮沸消毒したんです」


 それでしょっぱく感じただけか……。

 良かった、本物の尿だったらどうしようかと――いや、それはそれで……良かったかも。って、それでは俺がヘンタイになっちまう!



「お、美味かったよ」

「あたしの尿ですか」


「だ・か・ら・!」


「いつも天音さんばかり構うので、たまにはお返しです」

「うぐっ……。そんなことないと思うけどな? 俺、北上さんとは一番話しやすいと思ってるし」


「そ、それならいいんです」



 少し休憩して、ミミズを確保したところで――また浜辺へ戻った。今度こそ、なにか釣れるといいな。


 手製の釣竿で遠投をして、その時を待った。


 五分ほど経つと、直ぐに掛かった。



「うそ!?」

「おぉ、早坂くん。魚が食いついたようですよ」


「マジか!」



 グイッと釣竿を上げてみると、なかなか重かった。これは大きいぞ。

 力いっぱい引き上げると、海の中から魚が現れて釣り上がった。……おぉ、これは……なんだ? 綺麗な魚だな。


 ピチピチと跳ねる色鮮やかな魚。

 赤みがかかっていて綺麗だ。

 20~25センチはあるだろうか。

 なかなか良いサイズだ。



「それは“グルクン”ですね」

「グルクン?」


「沖縄での名称です。タカサゴと言えば分かるでしょうか」

「はぁ~、タカサゴか」


「臭みが少なく、美味しくいただけるようですよ。沖縄では『グルクンの唐揚げ』なんてソウルフードがあるくらいですから」

「さすが詳しい。そりゃいいな。新鮮なうちに食べちゃおう。みんなでね」


「はい。いい手土産が出来ました。でも、あたしとしては、早坂くんとデートできて最高に幸せでしたよ」



 最後、ぼそっと何か聞こえたような。

 北上さん、なにを言ったんだ?


 けど、今日の釣りはほのぼのしていて楽しかった。


 最近は拠点にしている洞窟の開発だとかで忙しかったし……。女子ばかりの空間で気を使っていてばかりだった。


 たまには、二人で活動するのも良いものだな。


 また釣りはやりたいな。


 その後、グルクンを何匹か釣り上げて最終的に四匹をゲットした。天音や千年世たちに振舞うには十分な数だ。



 洞窟に帰還後、魚は刺身にして食べた。

 これが大好評であっと言う間になくなってしまった。また釣りにいくか――!

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