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お風呂争奪戦。一緒に入る女の子は誰...!?

 洞窟から少し離れた場所にある貯水池(仮)。

 一般的な浴槽くらいの広さはある。ここを更に固めていく。



「――よし、まず砂を山にする。それから円形を作って……その中に海水を投入していく。あとは混ぜて泥にしていくっと」



 俺はそうみんなに指示を出す。

 次第に泥が出来てきて、俺はそれを手で受け取る。この泥を壁に塗っていく。



「へえ、そんな風に塗るんだ」

「天音はこういうの初めてか」

「うん、こんな作業はやったことないかも」


「おいおい、ウソだろ。子供の頃、泥遊びとかしなかった? ほら、学校とか公園の砂場で泥団子作ったり、砂のお城作ったりさ」


「ウチは、パパもママも過保護だからねえ。今もだけど。だから、そういう遊びはしてなかった」


 忘れていた。

 天音はアイドルだったのだ。子供のころから英才教育みたいな……我々一般人とは違う道を歩んでいたに違いない。


「とにかく、こう泥で固めていけば少しは強度が増す」


 セメントがあれば最強なのだが、生憎そんなものはない。

 だが、この洞窟前の土は、粘土っぽい地質。なので、水で簡単に固められた。俺はどんどん塗りたくり、木の棒を使ったりして引き延ばしていく。


 今だけは左官(モルタル)職人の気分だぜ。


「おぉ~、なんかそれっぽくなってきたね」

「どんどん泥を持ってきてくれ」

「了解~!」


 千年世と桃瀬に泥を作ってもらい、それを天音に運んで貰う。俺は受け取り、壁に泥を塗りたくっていく。


 そんな作業を繰り返して一時間。


 ようやく完成した。



「終わったぁ! 貯水池と風呂分の壁をやったから、大変だった」

「つ、疲れたです……」


 泥まみれの千年世は、ぐったりしていた。桃瀬も魂が抜けていた。女子にはちょっと重労働だったな。けど、俺ひとりの力では三日は掛かる。


 手伝って貰えて本当に良かった。



「ありがとう、みんな。あとは乾くのを待つだけだ」



 さすがの俺も疲れた。これ以上はなんともならないので、明日にする。



 * * *



 あれから、俺も含めて全員が昼寝してしまった。

 仕方ないよな。外は暑いし、長時間は出ていられない。暑さを凌ぐのなら洞窟内だ。この中はひんやりしていて天然のクーラーとなっていた。


 仰向けになって、ぐったりしていると外から複数の気配を感じた。


 どちらかのチームが帰って来たらしい。



「ただいまです」

「北上さんか。おかえり~。武器とか罠は出来たかい?」

「今のところは丸太を使った“槍柵”を考えています。この周辺に壁を作るんですよ」


「なるほどなぁ。洞窟の前を柵で固めるわけか」

「動物や危険人物から身を守るなら、それしかないかと」


 まずは防衛力を高めていくと。

 それはアリだな。


 特にこの島は動物が出現しやすいし。またいつかイノシシとか蛇も出てくるだろう。それ以外も突然現れるかもしれない。



「分かった。槍柵は任せるよ」

「はい、お任せください。……ところで皆さんお疲れですね」

「こっちは海水を運んだり、泥を塗りたくったりで重労働だったからね」


「ああ、貯水池ですか」

「そう。今は乾かしている段階で、明日には完成かな」


「それは素晴らしいです。水が使えれば生活に困りませんからね」

「ついでにお風呂も作っているから楽しみにしておいて」


「それなのですが、宝珠花さんが『ドラム缶』を発見したのです。今彼女たちが転がして来ています」


「ド、ドラム缶!?」



 そんなのが流れてきたのか。しかも、また宝珠花……ほっきーか。あの子、よく物を見つけているような気がする。そういう才能があるのだろうか。



「壊れてもいないようなので、ちゃんと清掃すれば『ドラム缶風呂』に出来るのではと」

「そりゃいいな! ……って、俺の自作風呂が意味が」

「いえいえ。この大所帯の今、二つとも使えますし」



 そう慰めてくれる北上。それもそうだな、今や十三人。お風呂ひとつだけでは、ちと大変だ。今のところ海水浴で済ませているけど、温かい風呂だって入りたいはずだ。その場合、ひとつで回すのはちょっと非効率だ。



「分かった。俺の自作風呂の横に設置しよう」

「賛成です。お風呂は多いに越したことはありませんし」



 そんな話をしていると、森からドラム缶が飛び出てきた。どうやら、八重樫たちが転がしてきたようだ。


「やっとここまで来れた。運ぶの大変だったわぁ」

「お疲れ、八重樫さん。ほっきー、リコ」


 三人とも汗だくだ。

 その場に座ってヘトヘトになっていた。


「早坂くん、このドラム缶どうかな。ほっきーが見つけたんだけど」

「ああ、さっき北上さんから聞いたよ。ところどころ錆びてはいるけど、穴は開いていないし、これなら問題ないよ。ドラム缶風呂に使おう」


 俺がそう提案すると、三人とも目を光らせた。



「「「お、お風呂ー!!!」」」



「あ、ああ……ドラム缶風呂さ。大きな石を囲ってその上に設置するだけで完成するからね。今夜にも入れると思う」



 感激する八重樫は「お湯のお風呂に入れるんだ!」と叫ぶ。その隣のほっきーも「やったぁぁぁ!!」と叫ぶ。疲れ果てていたはずのリコも「リコもお風呂入りあぁぁい!」と、もはや泣き叫んでいた。



 今まで海水だけだったからなぁ。塩水でベトベトするし、気分的にはよくない。やっぱり、きちんとアツアツの風呂に入りたいよな。


 なら、今日はドラム缶風呂を作ってしまおう。


 俺はノリノリで石を設置していく。洞窟の中に転がりまくっているからな。ドラム缶が載せられるよう、形のよい石をどんどん置いた。


 幸いコンクリートブロックほどの岩もあったし、それで囲った。


 (かまど)のように配置したところで、その上にドラム缶を固定。……うん、倒れない。


 ドラム缶の下に薪もセットして、これで後は海水でも注入すれば風呂の完成だ。



「よーし、みんな、風呂が完成した――え」



 振り向くと、背後に殺気が漂っていた。


 全員が睨み合い、今にも激突しそうな気配を醸し出していた。な、何事だ!?



「天音、どうした!」


「お風呂……誰が一番最初に入るか決めないとね」



 さっきまで疲れ果てていた天音が、そんな怖い声で言った。どうしてそんなケンカ腰なんだ!



「ちょっと天音さん。ドラム缶風呂を作ってくれたのは早坂くんですよ。彼が一番とし……まあ、あたしが一緒に入ってもいいですけど。試験的に」



 北上がそう言うとブーイングが飛んだ。



「あー、ずるいです!! 私だって一緒で構いません!!」


 千年世さん!?



「なによそれ! 私だって早坂くんと入りたいし!」


 八重樫さん!?



「僕も早坂くんとなら……」


 ほっきー!?



「ちょ、リコが一番って約束よー!」


 リコ……そういえば、そんな約束をしていた。



「こ、これはウチも負けていられないね! 愛ちゃんに対抗して、ウチも入る!」


 桃瀬まで……!




 俺、誰かと入る前提なの!?

 ど、どうなるんだこれ……。

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