最終作戦
目の前の男(?)が八咫烏の長だとすれば、俺はコイツを倒さねばならない。
日本の為ではない……俺たちの未来の為に。
きっと、俺たちは近い将来、八咫烏と対決することになるだろうと思っていた。そして、その時はついにやってきた。
向こうから案内してくれたのだ。
これは決して窮地ではなく、好機。
だから、俺は――
◆
【三日前:姶良市】
「――というわけだ、早坂くん」
姶良市を出る前、木下さんは俺に提案した。
みんなを集め作戦を立てておきたいと。
多分、これから八咫烏との最終決戦があるかもしれないと予想して。
「そうですね。現在、あらゆる組織に狙われていますが、一番の厄介者は八咫烏で間違いありません」
「ああ。暴力団や警察はそれほど重要ではない。君たちは一刻も早く海外へ逃げるべきだが……八咫烏を止めねば難しいだろう」
裏の国家権力が動いているのでは、空港も止められるだろうな。
だとすると、八咫烏を潰すしかない。
潰すことが難しいのなら、せめて“麻痺”させられれば……海外へ逃げることはできるはずだ。
「分かりました。そうします」
「行先は決まっているのかい?」
「……そうですね。俺個人としてはマレーシアかな、と」
「うむ。それがいいだろうね」
理由としては“住みやすい”これに尽きる。
英語が通じるし、物価も安い。
一通りの施設も整っているし、不便はない。
税負担もかなり軽いらしい。
更に、外国人でも不動産は購入できる。これが大きい。
ので、俺はマレーシアに目星をつけていた。
もちろん、他の国も選択肢に入れているが、俺たちのような大所帯では……今のところマレーシアしか考えられない。
快適に暮らすなら、尚のことだ。
「それで……作戦とは?」
「それなんだが、私は別行動をとる。途中で抜け出し、そして君たちを遠くから監視する」
「なるほど! それで八咫烏の居場所を突き止めるんですね」
「そうだ。噂によれば、彼らは長野県のどこか地下深くに施設を作っているとか」
「へえ、詳しいですね」
「桃瀬ちゃんから聞いたんだ」
そうか、桃枝が。
ケムッキーさんの情報を聞いたんだな。
だけど、八咫烏の拠点がどこにあるか特定はできていない。
となると、木下さんに俺たちを尾行してもらう方が都合がいい。もしも、俺たちがヤツ等に捕まれば……いや、多分そうなるだろう。
きっと捕らえられて地下に連れていかれる。
そんな“予感”がしていた。
俺の勘はよく当たるからな。
「分かりました。では、木下さんは遠くからついてきてください」
「ただし、私の単独行動になる」
「なぜ、ですか?」
「警察内部にも八咫烏の関係者が入り込んでいるらしい」
「マ、マジですか!?」
「残念だが……さすがの警察も八咫烏に立ち向かえるほどの権力はない」
それほどなのか、八咫烏。
ということは警察が動いて逮捕……というのも難しいのか。
犯罪組織ではないから?
そうでもなさそうだけど。
俺たちを殺そうとしてきているし。
「それは厳しいですね」
「だから、私は先に手を打つ」
「手を打つ、とは?」
「もう誰が裏切り者か分かっている」
「そうなんですか!?」
「古森の上司さ」
「本当ですか、それ」
「ほぼ黒で間違いない。私は彼を止める。そして、君たちに追いつく」
「……了解しました。どうか、木下さんも無茶なさらず」
木下さんは微笑む。
こっちのことは任せてくれと。
きっと大丈夫だ。木下さんならやってくれる。
それから、俺と木下さんは長野での作戦も緻密に練り上げていった。
俺も妥協せず――“隔離中”の仲間を使えることを話す。
いよいよ、月、星、雷に動いてもらう時がきた。たまにはアイツ等に動いてもらわないとな――!




