コラ半島超深度掘削坑
日本の――世界の真実を知った。
なんて恐ろしい計画を。
俺たちはこんなことの為に命を狙われていたのか。
八咫烏は……この組織は腐ってやがるッ!
「早坂 哲。お前たちは終わりだ……」
俺たちを連れてきた八咫烏の幹部は、不敵に笑う。
あれから長い戦闘の末に膠着状態に。
だが、絶望的の状況の中で“奇跡”が起きた。
「――さあ、どうかな。こっちには最高の味方がいるからな」
そうさ。仲間のおかげで今まで切り抜けられたんだ。
だからきっと……いや、必ず帰ってみせる。地上へ。
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異様に静かで、水滴のしたたる音しか聞こえない。
バスへ乗り込んでから目隠しをされていて、俺たちがどこへ向かっているのか分からない。
恐らく噂の『八咫烏の研究所』だろうが、正確な場所は不明。よほど知られたくないというか、秘密の場所なのだろう。
一時間か二時間経過した頃――バスは停まった。
目隠しは外されず、そのままバスを降りた。……外は静かで自然の音しかしない。風の音、鳥の鳴き声など。
「真っ直ぐ歩け」
あの黒子のリーダーの声だ。かなり低い声。30~40代、それ以上だろうか。
指示通りに俺たちは真っ直ぐ歩く。
これでは天音や北上さんに耳打ちもできないな。
今はただ歩くのみ。
言われたとおりに向かっていくと、ある場所で止まった。今度はどこだ?
「…………」
ふと、北上さんの殺気を感じた。今にも動き出しそうな気配だ。だが、今ではない。
いざとなれば、いつでも反撃できるぞ――そんな意志を感じた。
だが。
「やめておけ、北上 絆」
「……!? なぜ、あたしの名を……!」
「お前たちの個人情報を手に入れるなどたやすいこと。調べは済んでいる」
「……くっ」
となると、今までの俺たちの行動も全て筒抜けか。本当にあるのかもな、エシュロンなんてものが。
あらゆる情報が抜き取られていると思った方がよさそうだな。
だけど、心の中までは読めないはずだ。
さすがのコイツ等も超能力者ではない。ただの人間だ。
しばらくすると、床が急に振動をはじめた。これは……隠しエレベーターか。秘密の地下へ通じる通路ってことか。スパイ映画とかでよく見るやつじゃないか。
しかも、かなり地下へ向かっているようだ。
どこまで降りる気だ……?
長いこと待つと、ようやく到着したらしい。
また歩かされて少しすると、ようやく目隠しが外された。
「……まずは早坂、貴様からだ」
「なに? みんなは?」
「仲間はしばらく牢の中で過ごしてもらう」
「お前……!」
「そう感情的になるな。ここは一般人も立ち寄れぬ地下だ」
「どういうことだ」
黒子のリーダーは静かに笑うと、ついに素顔を見せた。……コイツは驚いた。もっと、おっさんかと思ったが……かなり若々しかった。つか、俺たちと年齢が変わらないんじゃないか、コイツ。
ロングヘアだが、美形なせいか違和感はない。
こんな俳優のようなやつが八咫烏のメンバーだと?
「驚いたか」
「……まあな。まさか若いとは思わなかった。そんなツラして声が低いとは」
「私の唯一の欠点かもな。だが、気にしていない。完璧な人間などいるはずもない。私の場合、たまたまこの声だったということだ」
八咫烏に加入していることもな。
「で、なにが言いたい? この地下はなんだ?」
「お前はソ連の『コラ半島超深度掘削坑』は知っているか?」
「知らん」
「だろうな。1970年にはじまった地殻深部を調べるプロジェクトさ」
そんな古い情報を俺が知っているわけがない。ソ連にもあまり興味がないからな。
「へえ」
「ソ連は地下を掘り続け、1989年には12,262メートルに達したという」
「だからなんだよ」
「教えてやろう。この“地下の秘密”を」
「……え」
ま、まさか……この場所が12,262メートルだとでも言う気か? いや、そんなはずはない。地下へ行けばいくほど高温になり、高圧になる。人間が住めるような場所ではない。
そこはまさに『地獄』だ。
だけど、この地下の目的はいったい……?




