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戦争勃発!? 集結する者たち

【櫛家】


 (くし) 千国(せんごく)の訃報が流れ数週間。

 むろん、それは“偽情報”であった。


 彼は密かに数人の配下を連れ、早坂一行を狙っていたのである。


 そのうちの一人、岩崎を送り込ませていたのだが――彼が裏切ったとの情報が耳に入り、千国は激怒していた。



「岩崎め、恩を仇で返すとは何事か……!」



 杖を地面にたたきつける千国。

 四人の組員も、その鬼気迫るその表情に怯えていた。


 重苦しい空気の中で、宮下という若頭が口を開く。



「裏切り者には死を。岩崎は、組織の中でも下っ端。消しても問題ありやせん」

「そうだな。代償を払わせれば済むことではある。だが、単に命を摘むだけでは許されない。相応の罰を与えねば……」


「もちろんです、頭。ヤツの襟首には発信機を仕込んでありますんで位置は割れています」


「ならばよろしい。岩崎と……それと千年世という娘を連れてこい。このワシが自らバラす。でなければ、万由里は浮かばれんのだ」



 千国は、宮下と配下に命令を下した。

 宮下は「直ちに」と返事をして、銃を懐に仕込む。そして、家の外へ出ると配下の一人が宮下にこう言った。



「宮下さん、ヤツ等ァ……丁度、福岡にいまっせ」

「ほう。まさかこの“聖地”に来るとは、いい度胸だ」



 九州――特に福岡といえば、指定暴力団のメッカとも呼べる場所である。そのため、福岡で事件がある度に暴力団が揶揄(やゆ)されるほどだ。


 特に、櫛家は名の馳せた家柄であり、恐れられていた。


 彼らは、更なる武器を持ち出すために、まずは港へ向かった……。



 ◆ ◆ ◆



【福岡県警察本部】



 古森(こもり) 碧海(あおみ)は、今回の事件について上司に報告するべきか悩んでいた。

 このまま詳細を打ち明ければ、間違いなく本部は動く。

 どんな形であれ、早坂たちを捕らえるであろうと。


 古森は気持ちを落ち着かせるため、デスクでコーヒーを一口飲む。

 このまま警察に委ねるべきか、それとも個別で動くべきか。古森は二択を迫られていた。


「……どうすれば」


 深いため息を吐いていると、刑事課の部屋に一人の男が入ってきた。



「古森、戻って来ていたのか」

「は、はい……先ほど」



 男の名は、村石(むらいし) (とおる)。古森の上司であり、凄腕の刑事としても有名であった。



「聞いたぞ。船が悪天候で転覆し、無人島に流れ着いたとな」

「なんとか帰ってこられました」


「それは何よりだが、報告書はまだか? お前は宝島の生存者である学生たちを追っていたはずだ。学生たちは数々の違法行為を続けているようだし、事件も起こしている。確保せねばな」



 村石の言っていることはもっともであると、古森も痛感していた。だが、救ってくれた恩もある。

 少なくとも早坂は、危険を顧みず助けてくれた。古森は、数日前の光景がずっと離れなかった。むしろ、もう一度会いたいという気持ちさえ芽生えていた。なにか協力できることはないか――と。

 しかし、刑事としての立場も考えると難しかった。

 数々の難事件を解決してきた村石を誤魔化せるはずもないと考えていた。



「……そ、そうですね」

「ヤツ等は“トー横キッズ”と変わらん連中だ。どうせ、市販薬でもキメ込んでいるのだろう」


「そ、そんはずは……」


「これから私も出る。世間を舐め腐った学生共を一斉補導する」

「……っ」



 この状況は古森にとっては厳しいものであった。

 正義が絶対であり、一度決めたことは貫き通す村石を止められる者などいない。そう分かっていたからだ。



「古森、お前も同行しろ。情報を持っているのだろう」

「…………」


「その様子では、学生共に(ほだ)されたか。くだらん感情は捨てろ。お前は刑事なのだから」

「……わかりました。ご一緒させていただきます」



 当然、古森は補導には納得していなかったが、同意しなければ捜査を外されることになるので従うしかなかった。



「いいか、古森。学生共を捕まえられれば“上”が相応の対応をしてくださる。期待を裏切らないことだ」



 背を向け、そう村石はつぶやく。


 その“上”という言葉に、古森はずっと違和感があった。上とはいったい、なにを指しているのか。捜査一課長なのか、それとも警察本部長のことなのか、それとも更に上の立場の人間なのか。


 気になった古森は村石に「上とはなんですか?」と気になって聞いた。すると、村石は「(からす)さ」と意味深に答えた――。

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