表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
273/284

早坂くん、死んでッ!!

 無事にホテルへ帰還。

 門限ギリギリになったが、滑り込みセーフ。

 自室へ入ろうとすると、艾も当然のようにそのままついてきた。



「どうした?」

「一緒に……どうかなって」


「え」



 これはつまり……一緒に寝ようってコト!?


 そりゃ嬉しいけどさ、間違いが起きてしまうかもしれん。

 艾は優等生タイプの美少女。

 顔の輪郭(りんかく)も、体も細くて……特にお尻なんかいい形をしている。って、なにをじっくり観察しているんだ俺は。



「大丈夫だよ、早坂くん。一緒に寝るだけだし!」



 いや、声が震えているって。

 という俺も意識をし始めたら心臓がバクバクしてきた。


 結局俺は、艾を招き入れることにしてしまった。


 ・

 ・

 ・


 ベッドにちょこんと座る艾。

 ホテル用の寝間着(パジャマ)姿となり、準備完了。


 ……そして、沈黙。


 なんだろう、この感じたこともない緊張感。ドキドキが止まらない。


 たぶん、相手が艾だからだ。彼女は俺とは違う。たぶん、本来なら交わることのない関係だったはず。


 天音と北上さんは、グイグイくるから流れに身を任せればいいけれど、艾は違う。この圧倒的な初々しさ……! 正直、まぶしすぎるほどだ。



「ね、寝るか」

「うん……」



 シングルベッドだが広々しているので、二人くらいなら余裕だ。

 しかし距離がとてつもなく近い。

 艾の吐息が掛かりそうなほどに。



「…………」



 思考が強制的に停止する。

 頭が真っ白だ。なにを話していいか分からん……!



「えっち、する……?」


「ド直球だな、うぉい!!」



 いきなりすぎて心臓飛び跳ねたわッ!


 まさか優等生の艾がそんなストレートに誘ってくるとは思わなかった。想定外すぎる。完全に不意打ちだった。



「だって……好きだから」

「……っ」



 弱弱しい小さな声で告白する艾。

 まさかこんな風に気持ちを打ち明けてくれるとは。

 これはこれで嬉しい。



「今までたくさん守ってきてもらっているし、生きてこられた」

「……でも、本当は普通の高校生活を送りたかったんじゃ……?」


「そうでもないよ。今は毎日が特別で楽しい。お金もたくさん出来たし、将来の不安はもうないから」



 そう言ってくれると、今までがんばってきた甲斐(かい)があったと思える。



「ありがとう、艾。俺はみんなを幸せにしてみせるよ」

「うん。信じてるよ、早坂くん」



 嬉しそうに微笑む艾は、ぐっと距離を縮めてくると抱きついてきた。……良い匂いがする。


 頭が麻痺(まひ)してきた。

 いや、これは理性が飛んできた――という方が正しいだろうか。



「……艾」


「大丈夫。天音さんや北上さんには内緒にしておくから……」



 内緒もなにも、天音も北上さんも黙認状態だけどねっ……!



 ――そんなわけで、俺と艾は“激しい”夜を過ごしたのである――。



 ◆



『早坂くぅ~~~ん………』



 闇夜から血まみれの包丁を強く握りしめる天音の姿が……って、うわぁぁぁッ!?



『あ、天音!!』


『この浮気ものおおおおおおおお…………!』



 ブン、ブンッと包丁を振り回す天音。


 ちょ、あぶねぇだろうがっ!


 つか、ヤンデレ……? いや、まだデレてはいない!


 逃げるしかない。

 とは言っても、真っ暗闇で走っても走っても脱出できそうにない。くそっ、この空間に果てはあるのか……?



『どうしてこんなことに! これは夢なのか!?』


『早坂くん、死んでッ!!』




「うああああああああああああああ………!」



 目を覚ますと、ホテルのベッドの上だった。……なんだ、悪夢か。



 汗でぐしょぐしょだ。

 シャワーでも浴び――。



「早坂くぅぅん!」


「え……天音!?」


「この浮気もおおおおおおおおおおお!」



「ぎゃああああああああああああああああ!!」




 夢じゃなかったのかよおおお!!


 つか、なんで俺の部屋に天音がいるんだよぉ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ