武装する乙女たち
リビングに集まると、全員集合していた。
俺はさっそく桃枝から――ケムッキーさんから得た情報をみんなに共有した。
「……長野に!?」
一番に驚く艾は、顔を青くして震えているように見えた。
「どうした?」
「その……実家が長野だから……」
「マジか」
「うん。驚いたよ……」
そうだよな。もしかしたら長野が戦場になるかもしれないのだから……そう思うと、恐ろしい話である。
「艾ちゃん、大丈夫?」
天音が艾の様子を伺う。
今は任せて置き、俺は話を進める。
「北上さん、どう思う?」
「……あたしはずっと考えていました」
「なにを……?」
「今までのことです。だって、おかしいでしょう。船が沈んだり、飛行機が墜落したり……事件が起きすぎです」
確かに、偶然にしては出来すぎだ。誰かの“意図”を感じるよな。
神様? あるいは悪魔か?
――そんなワケがない。
そうだ。この一連の出来事には人間の意思が介在しているのだ。
「…………八咫烏」
ぽつっとつぶやくリコ。
誰しもが恐れるその単語に、桃枝がビクついていた。
「だよねえ、リコちゃんもそう思う?」
「うん、桃枝。だって、おかしすぎるよ……」
「このまま日本にいたら殺されちゃうよね。海外に逃げなきゃ!」
と、桃枝はもともとの計画を改めて提案する。
本来ならアメリカへ行く予定だったんだけど……風向きは変わってしまった。今は日本にいて、八咫烏を対決する方がいいかもしれない。
問題を解決してから海外へ移住する。
「あの、哲くん」
神妙な面持ちで俺に話しかけてくる千年世は、続けてこう言った。
「今、動けば八咫烏だけではなく、櫛家や警察などあらゆる組織が私たちを狙ってくるのですよね……?」
「そうだ」
「危険すぎるのでは!」
「そうかもしれないが、どうせ向こうからやってくるさ」
「…………むぅ」
それから何度も話し合ったが、多数決により――長野へ行くことにした。今までとは違い、船や飛行機は使わないから、移動に関しては大丈夫だろうという判断で。
それに、やっぱり八咫烏の正体を突き止めたい。
なぜ、そんなに俺たちにこだわるのか。
単に金だけの問題なのか。
明日には出発しようと決まったところで――『バリン!』と窓ガラスが割れて弾け飛んでいた。
「…………!!」
銃弾のようなものがガラスを破壊したんだ。
「早坂くん! 敵襲だ!!」
木下さんが声を張り上げる。
みんなはその場に伏せてやり過ごす。さすが訓練されているだけあり、対応が早い。
「……外に何名かいるようですね!」
腰からコルト・キングコブラを抜く北上さん。リボルバーはやっぱりカッコイイな! ――じゃなくて、反撃するのか!?
しゅたっと立ち上がり、銃を構える北上さんは発泡。
凄まじい音が部屋中に響き、鼓膜がどうかなりそうだ……!
『……!?』
外にいる敵もさすがに驚いて身を潜めたようだ。
「まずいぞ、絆。こんな場所で銃撃戦をしては、すぐに警察が来る!」
「木下刑事、車を出してください」
「無茶な! 八人も乗れるか!」
俺、天音、北上さん、千年世、リコ、桃枝、艾――そして、木下さんとと大所帯だからな。どう考えても四人乗りの車に乗るなんて無理だ。
「運転席に一名、助手席に二名、後部座席に三名、トランクに二名これで七名いけます!」
おいおい、本気で言っているのか!?
「北上さん、木下さんの言う通りだ。無茶だって」
「幸い、女性陣はほとんど小柄ですから、いけます……!」
そりゃ、桃枝と艾は体格も中学生並みだけどさ――って、目がマジだ!
桃枝と艾は「そんなの無理だよー!」と猛抗議していたが、外には複数の気配がある。さっさと逃げないと殺される。
「我慢してくれ、二人とも」
「な、なら……私はてっちゃんの膝の上でいい!!」
「あ、桃枝ちゃんズルい!」
桃枝も艾も俺の膝の上を巡って、言い争いを始めた。ちょ、そんな場合ではない!
外から発砲がはじまり、窓が完全に割れた。
この部屋にいるのも危険だ。
「とにかく脱出だ!!」
匍匐前進で部屋を出ていく。その間に、北上さんがリボルバーで援護。いつの間にか千年世もデザートイーグルで戦闘に加わっていた。
お前たち、いつの間に武装していたんだよ!




