都市伝説界隈の大物ケムッキーの有力情報
梯子を降りていくと、そこはテニスコートの半分くらいはあるんじゃないかという空間があった。
なかなか広いな。
ゲーミングチェアに座り、パソコンと向き合う桃枝は世話しなくキーボードを打っていた。
「よう、桃枝。なにしているんだ?」
「ああ、てっちゃん。来てくれたんだ」
「まあな。約束だし。で、それは……」
「うん。ほら、ケムッキーちゃんねるのケムッキーさんとDMしているんだよ」
そこにはDMの内容があった。
Ms.モモ:ケムッキーさん。八咫烏について詳しいよね?
ケムッキー:もちろん。表に出ていない情報も持っているよ
Ms.モモ:さすが! ねえねえ、情報料払うから教えてくれないかな~
ケムッキー:いや、モモちゃんなら無料でいいよ。その代わり、面白い都市伝説を頼むよ
Ms.モモ:いいよ! じゃあ、特大ネタを話すよ
ケムッキー:助かるよ。それじゃ、八咫烏のことだけど……
おぉ、ケムッキーさんから聞き出せるかもしれないのか。
都市伝説界隈の重鎮とも名高い彼なら、きっと普通では知らない情報を持っているはず。なんなら居場所だってな。
俺は動向を見守った。
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「ケムッキーさん、凄すぎるよ……」
送られてくる情報に驚愕する桃枝。という俺も、背後から目を通していたが――これは……マジか。
「八咫烏は『長野県』にいる可能性がある……!?」
「みたいだね。ケムッキーさんよると、帝国陸軍の地下研究施設があるってさ。そこを利用している可能性が高いと」
「旧日本軍の施設に身を潜めているのか」
凄い情報だな。
もし本当なら……八咫烏は……旧日本軍と関係があるのか?
それとも単に根城にしてるのか。
「どうする? 行ってみる?」
「うーん、北上さんたちと相談してからだな」
「うん、わかった」
情報がここまで引き出せただけでも十分だ。
上手くいけば、八咫烏の本拠地に乗り込めるかもしれないな。
「それにしても、良い地下室だな」
「木下刑事の趣味みたい。お金掛かってるし、すごいよねー」
俺もいずれこんな地下室が欲しいなぁ。
防音もしっかりしているから、どんな爆音でも地上には伝わらないようだし。
「いつかこんな家を建てたいな」
「そうだね。――ていうか、てっちゃん」
「ん?」
「ここなら二人きりで誰にも見られないよね……えへへ」
悪そうな表情で俺に抱きついてくる桃枝。こ、これは……参ったな。
というか、そもそもの目的がこれかっ!
男としては非常に嬉しいけど。
「そ、その……シたいのか?」
「そりゃーね。だって、てっちゃんのこと好きなんだもん」
そんなハッキリ言ってくれると嬉しいな。
俺も桃枝のことは好きだけどね。
油断していると、桃枝は俺の服を脱がしてきた。
「ちょ……気が早いな」
「私に身を委ねてね、てっちゃん」
俺は、甘い言葉に負けてそのまま桃枝と深い時間を過ごした――。
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もう何時間経ったのか分からない。
みんなはとっくに寝ているだろう。
俺ももう眠い……おやすみ。
気づけば昼を回っていた。地下室には桃枝の姿があり、パソコンに向かっていた。
「ん、おはよう。桃枝」
「あ、おはよー。昨晩は気持ちよかったよぉ」
「……そ、そうか」
そや、桃枝と最高のひと時を味わったのだった。
「そろそろ戻ろうか。みんな心配しているだろうし」
その通りだった。上の方から気配があった。北上さんだな。
「哲くん、そろそろこちらへ」
「ああ、北上さん! 重要な話がある!」
昨日手に入れた話をみんなにしなければ。




