表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
263/284

やっと会えた

「――え、それホント!?」


 一度、ホテルの部屋に戻り、北上さんたちが無事かもしれないと話すと天音は喜んでいた。



「木下さんが見つけてくれた」

「え、あの刑事さんが?」

「そうだ。だから確かだ」

「よかった~…」



 本当にな。

 一刻も早く合流したいところだが、木下さんの準備もあるということだった。



 連絡があるまでは待機だ。



 一時間ほど待つとスマホに連絡が入った。

 木下さんだ。



『ロビーに来てくれ』

「分かりました。直ぐに向かいます」



 電話を切り、俺は仮眠を取る天音を起こした。



「準備できたようだ。行くぞ」

「ん~、ほんとぉ?」


「ああ、これでやっと合流できる」

「うん、楽しみ!」



 天音と共にロビーへ向かう。

 そこには木下さんの姿が。スマホを耳に当て、誰かと会話しているようだった。もしかして、北上さんか?



「さあ、行こうか。早坂くん、天音さん」



 通話を切る木下さんは、ホテルの外へ向かう。俺たちもついていく。

 外には黒い車が停車していた。


 その車の後部座席へ乗り込み――いざ、出発!



 ◆



 木下さんの運転する車は、鹿児島市内をぐるぐる回っていた。いつまで経っても到着する気配がない。



「あ、あの、木下さん。もうニ十分近くは市内をウロウロしていません?」



 俺はしびれを切らして木下さんに聞いた。

 天音も同じことを感じたようで、隣で不安になっていた。



「良い質問だ、早坂くん。念のための尾行チェックさ」

「え」


「こうしてグルグル回っていれば、つけられていないか分かるのさ」



 なるほど!

 だから、近くを回ってばかりいたのか。

 ルームミラーもやたら見ていたから、変だと思ったんだよな。


 木下さんは、尾行がないと確認したようだ。

 ようやく市街を抜けていく。


 そして三十分後には『姶良市(あいらし)』に到着。


 割と離れた場所に北上さんたちはいるようだ。



 やがて車は、姶良市の海側にある一軒家で止まった。



「ここは……?」



 ぽつりとつぶやく天音。


 桜島がよく見える広大な公園――『なぎさ公園あいら』というらしいが。


 この家にいるのか?



「さあ、車を降りてくれ」



 俺たちは車を降りた。一軒家の前に立つ。

 普通の家……だな。


 どこにでもある二階建ての家。けれど、外観は立派で綺麗だ。

 駐車場も広々としているし。



「誰の家です?」

「ここは私の家だ」



「「えっ、木下さんの!?」」



 俺と天音は同時に驚く。

 まさか、木下刑事の家が鹿児島市内だったとは……驚きた!


 いや、思えばオーハ島に姿を現したこともあった。この周辺でしか彼を見ていないような気がする。つまり、そういうことか。



「出身地が鹿児島だからね」



 やはりそうか。

 つまり、木下さんは北上さんたちを家に匿っているということか。


 さっそく家の中へお邪魔することに――いや、その前に玄関のドアが開いた。


 そこには懐かしい人物が立っていた。



「……哲くん! それに、天音さん!」



 まるで幽霊でも見るかのように北上さんは、驚いていた。こんな表情は珍しい。



「よう、北上さん。久しぶりだな」

「よかった、無事だったんだね」



 俺と天音は、直ぐに北上さんの元へ向かい抱き合った。感動の再会だ。



「信じていましたよ、哲くん。天音さん。二人ともきっと生きていると」



 珍しく涙ぐむ北上さん。

 俺も最近は妙に涙もろくて釣られていた。天音も。


 そんな中、懐かしい面々が次々に。



「あ、てっちゃん!!」



 桃枝が飛びついてきた。

 気づけば、リコや艾も。千年世までくっついていた。


 おぉ、みんな無事じゃないか!



「よくぞ生きていた! 桃枝、リコ、艾、千年世……!」



 泣きじゃくる桃枝は「うん、流されたんだけどね。絆ちゃんが緊急ロケータービーコンを持っていてさ、割と直ぐに助かったのさ。でも、てっちゃんと愛ちゃんが行方不明じゃん! ずっと心配していたよぅ」と、わんわん泣いていた。



 そうだったのか。

 遭難ビーコンを所持していたのか。

 あの晩、北上さんはビーコンを発信して、助けられていたということか。


 だけど、行方不明者ばかりだったような……?

 情報が錯綜(さくそう)していたせいか、それとも北上さんたちは人数に入っていないのか。



「教えてくれ、北上さん。ビーコンを使用したとはいえ、よく助かったな」

「ええ。あの晩、哲くんと天音さん、あの女刑事……あと複数の民間人が流されていました。あたしたちは奇跡的にも救命浮器(イカダ)で耐えていたんです」


「……なんだって? じゃあ、俺と天音が不運だっただけか……」


「ええ。高波にさらわれてしまったんです」



 そういえば、何度も波に襲われていた。たまたま俺と天音、古森さんが流されたんだ。厳密にいえば、岩崎(いわさき)も含むが。その他にも流された人がいるんだろうな。



「とりあえず、立ち話もなんだし、中へどうぞ」



 と、木下さん。そうだな、家の中でゆっくり話を聞こう。これからどうするかも決めねばならない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ