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クラスメイトの美少女と無人島に流された件  作者: 桜井正宗
第八部:最後の無人島

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嬉しかった

 再び海へ潜り、海の底へ消えゆく古森刑事を救出。

 まさか二度も海の中へ入ることになるとはな。


 快晴であること、海が穏やかだったことなど奇跡的な条件が重なったな。


 もし、悪天候だったのなら天音も古森刑事も助けられなかったし……。そもそも、泳いで種子島に来るだなんて無謀(むぼう)なことはできなかった。

 これが海外なら尚更だ。サメとかいるだろうし。


 下着姿で意識を失っている古森刑事を浜に上げた。しかし、息がない。俺はすぐに応急処置――しようとしたが、天音が止めてきた。



「ダ、ダメ! 今の時代、知らない人の女性に触れると簡単に訴えられるんだからさ……」


 天音の言うことは正しいだろうな。

 AED問題とか度々話題になってるし。


「確かにな。後々、古森刑事に殺されるかもしれん」


 俺は、天音に応急処置を任せることに。

 やり方は北上さんから教わっているので、適格に進んだ。


 海水を吐き出す古森刑事。

 とりあえず、息を吹き返した。


 このまま見つめるのも悪いと思い、俺は宇宙センターの方を向いておいた。



「早坂くん、服ない?」

「え? どうして?」


「古森刑事の服、流されたみたいで……」


「マジか。下着姿のままJAXAに入らなきゃならないのか」


 あんな美人刑事が下着姿で現れたら、まず大騒ぎだろうな。さすがにネットニュースや新聞の記事になりかねん。それはマズい。


「ちょっと、早坂くん。なにを妄想してるの!?」

「あ、いや、未来のリスクを思考しただけだ。……このままでは警察のお世話になるな。俺のシャツを使ってくれ」


「でも、いいの?」


「構わん。男の俺なら半裸でも自然さ。泳いでいたとか誤魔化す」

「な、なるほど」



 俺はシャツを脱いで天音に手渡した。

 あとは古森刑事が目を覚ますのを待つだけだ。


 どのみち、服を乾かさなくちゃいけないが。


 三十分ほどして、古森刑事はようやく意識を取り戻した。



「…………」



 周囲を見渡し、俺と天音をぼうっとした表情で見つめた。まさに、意識朦朧(いしきもうろう)といった感じ。まだおぼつかない。



「あ、古森刑事。大丈夫ですか?」

「天音さん……ここは」

「種子島ですよ。無事についたんです」


「……そっか。警視庁ではなかったのね」



 夢でも見ていたのだろうか、古森刑事は現実を受け入れられずにいた。それより、その大胆な姿を早くなんとかしていただきたい。



「……」

「なによ、早坂 哲!」


 俺の視線に気づいたのか、古森刑事は警戒心を露わに。まだ気づかない。



「自分の姿を確認してくれ」


「…………え。きゃ!?」



 ようやく気付いた古森刑事は、刹那で赤面。自身を抱えるようにして伏せていた。……な、なんだこの乙女な反応。

 もっとブチギレられると俺は思ったんだがな。



「早坂くん!」

「わ、悪いって天音。あっち向いてるよ」


「うん。そうしないと今夜は、わたしが襲っちゃうからね!」



 それはそれで嬉しいっていうか……。天音が俺を襲ってくれるの!? ならば、大人しくしていよう。


 少し待つと、振り向いてよいと許可が出た。



「……お」

「くっ、屈辱だわ」



 俺のシャツを着る古森刑事。今にも異世界の女騎士のように“くっ、殺せ!”みたいなことを言いだしそうな勢いだった。


 なんだろう、妙な罪悪感というか背徳感。



「シャツ一枚とか……エロいな」

「……バカじゃないの!」


 と、相変わらず古森刑事は攻撃的だったが――。



「溺れていた古森刑事を助けたのは、早坂くんですよ」


「……な。……そ、そうだったの」



 申し訳ないと、ありがとうと小さな声で俺に礼を言ってきた。素直なのか、そうでないのか微妙なところだが。

 ひとまず、殺される心配はなさそうだな。



「いくぞ」



 俺は背を向け、先を目指す。

 スマホによれば、この先には『JAXA種子島宇宙センター 竹崎展望台』がある。つまり、文明がそこにある。


 助かる見込みがグンと上がる。

 きっとこの先に、いつもクールな北上さんや千年世たちがいるはず。小さくて可愛い桃枝にも会いたいな……。

 ああ、艾の淹れてくれる渋いお茶も飲みたい。

 俺を笑顔で見つめてくれるリコも忘れちゃいけない。


 アイツ等、全員無事だといいが。



 しばらく歩くと古森刑事が声を掛けてきた。



「あ、あの……早坂くん」

「なんだい、古森刑事」


「あー…。その、刑事って堅苦しいでしょ。普通に呼んでいいわ」

「え?」


「古森さんとか、呼び捨てで碧海(あおみ)でもいいわ」


「ね、熱でもあるのか?」

「ちゃうわ! 早坂くん、あのさ……改めて助けてくれてありがと」

「やっぱり熱が」


「だから違うって。命を救ってくれたからさ、嬉しかった」

「…………!」



 なんて柔らかい表情を。

 古森刑事ってこんな少女みたいな笑顔ができたんだ。

 不覚にも、古森刑事にドキドキしてしまう日が来るとは。てか、警戒心が解かれるとここまで変わるものなのか……!


 こうしてみると、可愛い女性にしか見えなくなってきた。刑事という意識が薄れてきた。


 そうだな、今だけでも協力してもらう方が得策だ。

 種子島を脱出する為にも――。

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