希望が見えてきた
まずはスマホの電源を入れてみた。
数秒待っても画面がつく気配がない。浸水で壊れたか……。
「動かないね」
天音は残念そうに声を漏らす。
くそ……海水でやられたか。
それともバッテリー切れなのだろうか。
充電ケーブルがあるし、試しに充電してみるか。
「モバイルバッテリーで通電してみよう」
「ナイスアイディア!」
天音に充電を任せた。
モバイルバッテリーは残量がまだあるし、これでスマホが故障しているかどうか判断できるはず。
ケーブルを繋げ、充電を試みる天音。
さて、どうかな。
果たして通電は…………?
『………………』
無反応。ダメか……!
「どうやら壊れているみたいね」
残念そうにため息を吐く古森刑事。
俺もショックだよ。こうも上手くいかないとはな。だが、まだタブレットがある! こっちに期待するしかないな。
動いてくれれば、少しは希望がある。少しだが。
今度はタブレットの電源を入れる天音。頼むからついてくれよ……!
しばらくすると『フォン』と不思議な効果音がして――電源がついた。
「おぉ! 電源が入ったな!」
「やったよ、早坂くん。これ使える!」
しかし、Wi-Fiなんてないからなぁ……ネットは繋がらないだろう。電話機能もないはずだ。
あんまり意味はないかもしれない。
だが、このタブレットは幸い世界的に人気のある“Pear社製”の『SIMフリータブレット』のようだ。ワンチャンあるかもしれんぞ。
「ネットが使えるかどうかだけでもチェックしておこう」
「うん、そうだね。可能性がないわけではないもんね」
前向きに捉える天音は、タブレットを器用に操作していく。その様子を古森刑事も静かに見守っていた。
果たして使えるかどうか。
「……ちょ、電波入ってるじゃん!」
背後で叫ぶ古森刑事。
そう、俺もタブレットの電波状況を見て驚いた。
ウソだろ!!
電波が届く場所なのか、この無人島!
かなり微弱で、最低レベルのようだがギリギリでネットが使えるようだった。
「え、早坂くん。これって使えるってことだよね!?」
「あ、ああ……電波ありだ。天音、そのまま『マップ』をタップしてくれ」
「う……うん」
マップで今、俺たちがどこにいるか把握せねば。
操作を進める天音。
すると――。
【種子島】
そう表示されていた。
「え……種子島だって?」
つまりここは『JAXA種子島宇宙センター』の近く!?
だから電波が届いたのか……かなりギリギリで。
「た、種子島ですって!?」
さすがの古森刑事も驚いていた。
「らしいな。小島、カセ島あたりを指しているから、かなり近いぞ」
俺たち、ロケットの発射場付近の無人島にいたのかよ。
直ぐ近くには『JAXA種子島宇宙センター 竹崎展望台』というものがあった。まてまて、結構近いぞ。
「よかった……じゃあ、変なところにいるわけじゃないんだね」
「ああ、天音。泳いでいけば、種子島へ上陸できるだろう」
よし、少しは希望が見えてきたな。
天気もいいし、泳いで種子島へ行くか!
うまくいけば北上さんたちとも合流できるかもしれない。




