漂着したカバンを手に入れた! 中身は?
タコを食って腹を満たした後は、島の“反対側”へ向かった。
まだ未調査の、未開の地である。
この先に、古森刑事もいるのだろう。
天音を連れて林を抜けていく。
ケガをしないよう慎重に。
そして見えてきた島の反対側。やはり、島自体がそれほど大きくないのか、直ぐに着いた。
「ここが反対側……」
立ち止まる天音は、そこを見て少し残念そうにしていた。
俺も同じ感想だった。
反対側も、やはり何もない。
だけど、まだ諦めるのは早いさ。
先へ進み、浜辺を歩く。すると、古森刑事の姿があった。なにか集めているようだな。
「来たわね、早坂くん。天音さん」
こんな場所でなにをしていたんだか。……ん、よく見るとカバンらしきものがいくつか。まてよ、これはもしかして。
「古森刑事、そのカバン」
「ええ。これは客船から流れてきた荷物でしょうね」
そうか、やっぱり!
船が大嵐で転覆し、沈没。その際に乗客の荷物が流されていたんだ。それが運よく、この島に流れ着いたものだろう。
いくつか、こちら側に漂着したと――そんなところだろうね。
「カバンの中に何かあるかも!」
期待に胸を寄せる天音。そうだな、これはチャンスだ。
もしかしたらお菓子だとか、スマホが残っているかもしれない。
可能性は十分にある。
「中身は確認したのか? 古森刑事」
「今、カバンを拾い終わったところ。合計三つ入手したわ」
そこには、黒いリュックサック、レディース用のハンドバッグ、ビジネスバッグの三つがあった。
十分すぎるぜ。
それだけあれば、なにかしら使えるものがあるだろう。
さっそくカバンをひとつひとつ確認していく。
まずは黒のリュックサックだ。
タオルやシャツなどの着替え……ペン、爪切りなど。チョコやガムなどのお菓子も複数出てきた。これは、ありがたいな! このリュックサックの持ち主はお菓子好きらしい。
「駄菓子が多いね」
「そうだな、天音。この人のおかげで少しは甘いものを摂取できるぞ」
「うん、本当にありがたい」
続けて中身を見ていく。
メモ帳、ポケットティッシュにハンカチ。小説の『そして誰もいなくなった』……これは、アガサ・クリスティの推理小説か。
絶海の孤島で起きるクローズド・サークル。おいおい、変なフラグはやめてくれよ。
「これだけか?」
「そうみたいね」
ため息をつく古森刑事。
最後に出てきた小説が不穏すぎてな……。
とはいえ、食料や小道具を得られた。収穫としてはなかなかだぞ。
「じゃあ、わたしがハンドバッグを見るね」
天音が名乗り出た。
そうだな、俺が女性物のハンドバッグを漁るわけにはいかない。
小さなハンドバッグなので、中身はあまり期待できないか……?
さっそく天音は中身を取り出して並べていく。
いきなり小型タブレットが出てきて、全員息をのんだ。
「こ、これは! 当たりじゃないか!」
「わぁ、タブレット。これ、電源がつけばワンチャンあるじゃない!?」
ようやく希望が見えてきた。
でも、こんな無人島にWi-Fiなんて通っているのか。
衛星インターネットの『スターゲイザー』でもあれば別だろうけど。
タブレットは後にして、残りだ。
「天音、続けてくれ」
「う、うん」
あとはコスメ類がいくつか。リップスティックだとか、ファンデーションだとか。……お、家のカギかな。
それと……スマホ!
スマホが出てきた!!
「あったわね!」
ようやく欲しいモノが出てきたと安堵する古森刑事。そうだ、これが一番欲しかった……!
よかった、持ち主は二台持ちの人なのだろう。
最新機種ではないから、サブ機として持ち歩いているとかだろうな。
しかも、スマホ用の防水ケースに入れられた残量53%のモバイルバッテリーもあった。助かったぜ……!
まさかハンドバッグの中にタブレットとスマホが入っていたとは。
「早坂くん、これで誰かに連絡取れるんじゃない!?」
「ああ。可能性はかなり高いぞ。とりあえず、もう少し荷物を探ろう」
「う、うん」
最後に『ビジネスバッグ』だ。
サラリーマンが使う標準的な手提げかばん。
タブレットとスマホを入手した現時点では、もう不要かもしれないが……念のためだ。
俺が中身をチェック。
書類、ペン……絆創膏や謎の粉。注射器など。
「この人は医者かな」
「かもしれないね」
と、天音も同調してくれた。しかし、古森刑事だけは険しい表情だった。
このカバンは以上だ。
よし、さっそくスマホとタブレットをチェックだ!




