天音さん、大ピンチ!
翌朝――無人島での生活はまだ続いている。
そうか、夢ではなかったか。
今回のことが夢であったのなら、どんなに良かったか。しかし、嘆いていても先へは進まない。
やるべきことをやろう。
――しかし。
天音も古森刑事も姿がなかった。
俺を置いてどこへ……?
いや、探すのはよそう。
昨晩は、天音のトイレシーンを不可抗力ながら覗いてしまったのだから。
これ以上は蹴り殺されても文句は言えないぞ。
「仕方ない。火でも起こすか」
早朝は結構寒い。早く暖を取れるようにしておかないと風邪を引きそうだ。
昨日と同じ手順で火起こしを完了。
天の恵みファフロツキーズで入手した小魚を焼いていく。
朝食を作っていると天音が帰ってきた。
「あ、おはよ~。早坂くん」
「おはよう、天音。どこへ行っていたんだ?」
「海で水浴び。だってお風呂ないから……」
「そうだったのか」
「それでね、海を泳いでいたら――ホラ」
天音の手には八腕形目、軟体動物が握られていた。
つまり『タコ』である。
ほぉ、まさか食材を入手してくるとはね!
「凄いじゃないか! てか、触るの平気なんだな」
「うん。もう慣れたし」
虫も無限に沸くからな。いちいちビビっていたら無人島生活などできぬ。
うんうん、天音の成長が見れて俺は嬉しいね。
「タコは焼いても茹でても美味いからな」
「たこ焼きに出来たらよかったのにね」
「さすがに材料がなさ過ぎて無理だな」
さっそく調理しようとしたが、タコが突然天音の腕に絡みついていた。
……え?
「きゃ……!」
驚く天音は、右手をブンブンと動かすが――タコは吸盤で強力に張り付き、絡みついている。無理だな、ありゃ。
「俺が取ってやる」
「お願い!!」
取ろうとしたものの、タコは更に移動して天音の胸あたりに。
「へ」
「ひゃんっ……」
妙な声を出す天音は、頬を赤く染めていた。
ちょ、え……ええッ!?
こ、こ、これは……ま、まさか。
このタコ野郎、なんてヘンタイプレイを――!!
いわゆる触手プレイ!
タコは更に天音の引き締まったお腹の辺りに接近していく。
「ちょ、天音!」
「…………っっ。は、早坂くん……早く取って……」
なにかを我慢している天音は、ぷるぷる震えながら言った。なんだろう、声が妙にいやらしいぞ。
じゃなくて、ぼうっと突っ立っている場合ではない!
天音を助けねば、これ以上は危険だ!!
いよいよタコは天音の神秘に近づこうとしていた。
そこだけは許さん!!
「このタコォ!!!」
ついに俺はタコを確保。
天音から引きはがすことに成功した。
「…………ぅ」
「大丈夫か、天音!」
「お洋服がべとべとになっちゃった」
「……そ、そうだな。洗って乾かすしかないな」
「そんな~…」
しかし、食材は手に入れた。これでお腹を満たすことができる。
それにしても古森刑事はどこへ行ったんだ――?
まあいいか。
あの人は放っておいても自力で何とかしそうなタイプだし。
俺はタコを成敗し、ナイフで切り刻んでいく。
その間に天音は服を脱ぎ、上半身だけ下着姿に。……刺激が強いって。
俺はシャツを脱ぎ、天音に着せた。
「ほれ」
「え……でも」
「天音に風邪を引いて欲しくないからな」
「早坂くん、優しい。好き」
「お、おう。そうでなくては困る」
さぁて、タコ食って今日は島の反対側へ行ってみるか。
まだこの無人島の全てを確認したわけではない。
もしかしたら、なにか脱出方法があるかもしれない。
諦めないぞ、俺は――。




