消えた天音
小魚のおかげで腹をそこそこ満たせた。
でも、そこそこだ。さすがに三人分ともなると厳しかった。
しかも日も傾き始めていた。
そろそろ拠点を作らないとな。
「天音、古森刑事。二人とも枝と葉っぱを集めてくれ。俺もやるから」
「うん、解かった」
「寝床を作るのね。了解」
二人とも理解してくれて、直ぐに行動に移してくれた。ありがたい。
今はとにかく協力するしかない。
しかも、天候も悪くなってきやがった。頼むから、嵐にはならないでくれよ……!
なんとか枝や葉っぱを集め、寝床を作った。
あと簡易的な屋根も俺が建てた。
小屋には程遠いが、多少はマシだ。
「やっぱり早坂くんは凄いね!」
天音に褒められ、俺は嬉しくなった。
とりあえず、これで安心して寝られるぜ。
古森刑事も渋々ながら横になって背を向けていた。どうやら、まだ警戒心が高いようだ。
それもそうだな。
俺たちは別に仲間になったわけではない。
無事に戻れれば、また狙われるだろうし。
「…………」
寝ているのだろうか?
まあいい。
「天音、なにか欲しいものあるか?」
「うーん。早坂くんがいてくれればいいかな」
めっちゃ嬉しいこと言ってくれるー!!
「そ、そか。そうだな、俺も天音がいてくれればそれでいい」
「うん……」
距離が近くなってキスをしそうになった。けれど、古森刑事が『ゲフンゲフン』とわざとらしく咳払いしていた。……起きていたのかよ。
さすがに気まずいのでキスは止めておいた。
俺たちも少し仮眠を取ろう。
今は無駄なエネルギーを使わず、体力温存が懸命だ。
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目を覚ますと真っ暗になっていた。
そうか、アレから結構寝てしまったんだな。
小さくなっている焚火を再び燃え上がらせ、維持した。これでまだしばらくは暖を取れるな。
暗くなると案外寒かった。
くそう……冷えるなぁ。
ホント、早く北上さんたちが俺たちを見つけてくれればいいんだが。
島を回っていなかったということは、別の島に流されたか……今もなお海の上を彷徨っているか。それとも奇跡的に誰かに救助されたか。その辺りだろう。
……?
そういえば、天音の姿がないような。
「天音……天音、どこだ!?」
拠点を離れ、天音を探す俺。
おい、どこへ行った……!
草木の中をかき分けていく。
天音、天音……お前がいないと俺は……!
頼む、無事でいてくれ――え?
そこには確かに天音がいた。……いたが、こ、この姿勢はまさか。
「――へ」
「あ、あの……天音」
しまったあああああああ!
天音のヤツ、トイレに行っていたのか!!
俺はそうとは知らず!!
「きゃああ!! 早坂くん、な、なんでええ!!」
涙目で叫ぶ天音。いかんいかん!
少し距離を取り、俺はひたすら謝った。
「すまん。わざとではないんだ……」
「わ、解かってるけど……! うぅ」
「なんであれ、無事でよかったよ」
済ませた天音はこちらに姿を現し、恥ずかしそうにしていた。というか、俺も気まずい。
「その……見たよね?」
「す、少しだけ?」
「も~~~!」
ぽかぽかと殴ってくるが、痛くはないし本気ではない。
天音、可愛すぎるぜっ。




