脱ぎはじめる女刑事
今までと比べると小さな無人島。
周囲は当然だが『海』しかない。
とりあえず、歩いて回ることにした。調査は基本だからな。
今置かれている状況を調べねば。
「ねえ、早坂くん」
「どうした、天音」
「どうしてまた船が……。こんなことありえるの?」
そうだな、これで二回目だ。最初は修学旅行の日。今回は沖縄へ向かう最中だった。海外へ飛ぶために。
でも、船は嵐に負けて――沈んだ。
天音の言うとおり、こんなことが人生で二回もあっていいものか?
どんな運だよ、それは。
雷に打たれるより低い確率ではなかろうか。
ひとまず島の奥へ向かおうとするが、古森刑事がいきなり脱ぎだした。下着姿になっていた。
「……え」
「……み、見ないで!」
「どうして脱ぐ!?」
「水浸しだからよ。絞らないと……」
そういえばそうだったな。天音も同様だった。という俺も結構湿っぽかった。……島のことで頭がいっぱいで忘れてたな。
いったん、服を乾かすか。
「早坂くんはあっち行って……」
「え、でも。天音」
「わたしはいいけど、あの刑事さんの下着姿は見ちゃダメ!」
なるほどね。天音のヤツ、妬いているのか……?
こう言っては失礼だが、古森刑事は体型がちょっと幼いというか。年齢はきっとハタチは超えているんだろうけど、それにしては貧相というか。いろいろ足りない。
それに比べ、天音のボディはグラビアアイドル顔負け。
凹凸が激しく、俺の劣情を煽りまくっていた。水に濡れてなかなかエロいことになっていた。
「分かったよ。俺はあっちの物陰で服を乾かす。なにかったら、直ぐに頼ってくれ」
「うん、大丈夫。護身用の武器は持ってるから」
「それならいいか」
万が一、古森刑事に襲われても大丈夫かな。まあ、さすがに刑事だから、善良な一般市民にそんな手荒な真似はしないはずだが。
しばらくして天音と古森刑事が戻ってきた。
「お待たせ」
「おう、天音」
古森刑事の方は妙にソワソワしていた。
「どうしました?」
「…………ぁ、いや。その、下着まで濡れてて……うぅ」
そういうことね。――って、その表現はとても危険な気が! 水ぬ濡れてってことだろうけど、誤解を生む発言だそれは。
あぶねえあぶねえ、危うく変なことを考えるところだった。
くるっと背を向け、俺は前進する。
「……?」
古森刑事は分かっていないようだったが。なら、セーフかな。
この無人島は、ガチすぎる無人島で今までとは明らかに過酷だと理解できた。……やべぇ、材料もほとんどなさそうだぞ。
まだ北センチネル島あるいはオーハ島がマシに思えるね。
さてはて、どうしたものか。
海周辺はマジで何もない。
船の通る気配もなければ、飛行機も見当たらない。
北上さんたちの姿もねぇ!
連絡手段もねぇ!
なにもねぇ!!
「…………」
思わず眉間を指で押さえる俺。こりゃ参ったなぁ。
「ど、どう?」
「すまん、天音。ここは食料もロクにないし、大変かもしれんぞ」
「え……。脱出とか」
「イカダを作ろうにも時間が掛かるな。何日滞在することになるか分からん」
「そんな」
幸先が悪すぎる。今まで以上に過酷になるだろうと頭を痛めていると、古森刑事が俺の腕を掴んだ。
「早坂くん……。な、なんとかしてくれない?」
「え」
困った表情で古森刑事は俺に懇願した。ま、まさかこんな風に頼られることになるとは……予想外すぎる。
「このままだと刑事をクビされちゃうかも」
「そっちかよ。まあ、大丈夫でしょう。俺たちの尾行していたんでしょ? それが仕事だったんですから」
「……うーん。定期的に報告書を上げないといけないことになってるから……」
音信不通になったらマズイと古森刑事は、顔を青くした。
「スマホはないんです?」
首を横に振る古森刑事。どうやら、スマホも財布も流されたらしい。という俺も天音も全部失った。唯一、護身用武器だけはガッチリ身に着けていたものだから大丈夫だった。
「ひとまず、食料を集めよう。寝床も確保だ」
北上さんたちが俺らを発見してくれるのを待つしかない。
それかこの場所を通ってくれる船がいればいいのだが。
さて、まずは食えるものを探すとしようか。




