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クラスメイトの美少女と無人島に流された件  作者: 桜井正宗
第七部:日本脱出

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名前も戸籍もない男たち

 暗闇の中から現れる二つの怪しい影。

 よく目を凝らすと黒装束だった。まるで忍者だな。


「哲くん、ここは人通りがあります。そこの裏道へ」


 北上さんの指さす方向には、更に薄暗い通路があった。建物と建物の間の狭い道だった。こんなところに入って大丈夫なのか? 行き止まりだったらアウトだが……銃撃戦を見られるわけにはいかない。


 Beretta 21A Bobcatを北上さんから受け取った。まさかこんなモノを持っていたとは。しかも、手のひらサイズしかなくて、スマホ並みにコンパクト。なるほど、これなら隠し持てるワケだ。


「二丁も所持していたのか。……ん、なんか生温かくないか?」

「そちらは、あたしのブラホスルターに仕込んでいたものですからね」


「――は!? ブラ……なんだって?」

「ブラジャーホルスターです。実在するホルスターで、銃を隠すには最高のアイテムですよ」


 そうじゃねえ!

 まさか、そんなところに隠していたのを俺に渡すとは。てことは、この肌のぬくもりは北上さんの……。


 ああ、チクショウ。ありがとう!

 もう片方の自分の分はガーターホルスターから取り出したようだ。


「た、助かったよ」

「はい、サイレンサー」

「マジか。こんな小さいハンドガンなのにサイレンサーつけれるのかよ」


 銃を受け取り、構えながら通路に後退していく。

 黒装束はこちらに向かってきた。

 ここでヤツ等を止める。そして、可能なら情報を引き出す。


「ベレッタの弾は十発しかないので慎重に」

「予備マガジンなしか」

「さすがにそこまで持ち歩く余裕はなかったのです」

「分かった」



 向こうも懐から銃を抜いてこっちへ向けてきた。あれはなんだ!? ずいぶんと古い拳銃だな。



「………………」



 顔はよく見えないが、黒装束は静かに歩いてくる。



「北上さんあの銃って」

「九四式拳銃ですね」

「え……それって」


「ええ。大日本帝国陸軍が採用していた拳銃です」

「そんなのが現存しているのか」



 驚いている間にも乾いた銃声がして、銃弾が横切っていった。撃たれたからには容赦はしない。

 ベレッタの銃口を敵の足に向け、俺は迷いなく反撃。

 しかし敵は上手く避け、物凄い勢いでこちらに向かってきた。……素早い。しかも足音がしない。マジで忍者みたいな動きじゃないか!


 後退しつつ撃ち続けていく。


 三発、四発と。


 マズい。もう弾が……。


 敵も弾を打ち尽くしたのか、今度はクナイを投げつけてきた。おいおい、やっぱり忍者じゃないのか、コイツ等。



「…………!」



 北上さんは余裕で(かわ)し、黒装束の一人に突撃。掌底を食らわせていた。

 おぉ、見事にアゴにヒットしたな。



「がふぅ!?」



 青酸カリを飲み込もうとしていたが、北上さんは阻止していた。

 よし、今度は俺の方だ。



「おのれ……!」



 もう片方の黒装束がそんな声を漏らしながら、手裏剣を投げてきた。そんなものまで! 銃を使ってきたから分からなかったが、ホテルのアレも今のコイツ等も“忍者”かもしれない。

 細かいことは後だな。


 飛んできた手裏剣が辛うじてベレッタが受け止めた。……っぶねえ。


 ベレッタは壊れちまったが、おかげで助かった。銃を捨て、俺は敵に接近して蹴りを放った。



「てやッ!」


「――――ごほおおぉぉぉ…………!」



 ゴロゴロと転がっていく黒装束。俺はフードを脱がせたが、しかし男は“カリッ”と何かを噛んだ。次には泡を吹いていた。コイツ、青酸カリを!

 なぜ、そんなあっさり命を投げ出せる。

 八咫烏とは、そこまで恐ろしい組織なのか。


 まあいい、もう一人が生きている。



「そっちはどうだ、北上さん」

「青酸カリのカプセルは取り上げたので、この方は無事です」



 フードを取るとソイツは若い男だった。まてまて、俺たちと変わらない歳に見えるぞ。高校生かギリ大学生か……。なんでこんなことを。


「……くっ、殺せ」

「殺さねえよ。お前、八咫烏のメンバーか?」

「話す気はない!」


「話さないと痛い目に遭うぞ」



 すでに北上さんが男の中指をへし折っていた。ベキリと嫌な音がした。



「ぎゃああああああああああああ!!」

「そんな拷問がはじまる。言っておくが、北上さんは容赦ないぞ。いいか、死ぬよりも辛いかもしれない。早く吐け……楽になるぞ」


「い……言うものか! あぎゃあああああああああああ!!」


 また一本折れた。

 北上さんに指を折ってもらえるなんてラッキーだぞ、お前。千年世なら、慈悲も与えず殺していたところだ。



「お前たちはなんだ?」

「…………が、がぁあぁぁ……」


 まだ言わないか。俺は北上さんに合図した。


「では三本目を」

「わ、分かった!! 話す! 八咫烏のことを話す!!」


 やっぱり『八咫烏』のメンバーだったか。


「で、どういう組織なんだ」

「お、俺たちは……『ニンジャ』と呼ばれる名前も戸籍もない使い捨ての駒なんだよ」


 そんなのが実在するのか。確か、江戸時代とかで暗躍していた忍者は大名に仕え、暗殺だとか諜報活動だとかしていたようだが。


 まさか現在のニンジャは、八咫烏に仕えているということなのか。


「暗殺依頼を受けて、俺たちを狙ったということか?」

「そうだ。お前たちはやりすぎたし、知りすぎたんだ……」


「今までのことか」


「ああ、全部だ。お前たちのせいでトップは怯えているようだ」

「怯えている?」


「詳しくは知らねえ。知りたくもねえ」


「そうか。他には?」

「だから、もうこれ以上は…………がはっ」



 突然、男が頭から血を流して倒れた。こ、これは狙撃されたのか! 口封じってわけか。なんて奴らだ!



「北上さん!」

「ええ、どこかに狙撃兵が潜んでいるようです。これ以上は危険なので我々も博多駅へ向かいましょう」


「決まりだな」



 そろそろ駅へ向かわねば、時間がギリギリだ。


 時刻は【22:55】……あと5分しかない。走って向かう!

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