表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/284

新たなる舞台へ

 ネット界隈は静かだった。


『ある島で暴力団の抗争か――!?』


 俺たちの小さな戦争は、そんな風に書き換えられていた。

 あのロシア人たちのことは一切触れられていない。

 櫛家のこともなにもない。

 派手に戦った俺らのことも。


 ただ、曖昧な表現でネット記事にはなっていた。だが、それも一瞬で風化。宝島の時とは違い、これといって話題にならなかった。


 おそらく、これは『八咫烏』の圧力に違いない。



 あれから三日後。



 俺たちは神造島を脱出し、一時的な避難先として『対馬(つしま)』を選んだ。 本州から離れているし、島だからすぐに逃げられる。


 それもあるが、俺含め負傷した天音たちの治療をしなければならなかった。

 偶然にも天音の知り合い、しかも医者が対馬に住んでいるということで、頼ることになった。


 それと少しは久しぶりに人並みの生活がしたいと思った。

 たまにはゆっくりするのも悪くない。

 金はだいぶ余裕があるし。

 みんなには休んでもらわないとな。



「しばしの間はスローライフってわけだ」

「どうしたのさ、てっちゃん」



 気だるそうな口調で桃枝は、こちらに視線を向けた。いそいそとタブレットを操作しているところを見ると、ネットで情報を収集しているところらしい。



「しばらくは普通の生活をしようかなと」

「いいね、どれくらい対馬に滞在するのさ~?」

「うーん。みんなのケガが回復するまでかな。天音はとくに重症だ」

「んだね。早くても二週間ってところじゃない」



 天音は入院中だ。

 軽症組は対馬のホテルに滞在し、それぞれ生活をしていた。俺は今、自分の部屋で桃枝と二人きりだった。

 別の部屋には北上さん。それに(ルナ)(ヒカリ)がいる。

 残りのメンバーは病院で手当てを受けたりだ。


「今は待つしかない。それまでは情報収集だ」

「んー、けどさー。あそこまで派手な戦闘があったのに、もみ消されてるって八咫烏ヤバくない!?」


「そうだな。都市伝説界隈では有名らしいが……ここまで激ヤバ組織とは思わなかったな」

「今頃は、私たちを探しているかもね」

「備えておかないと危険だな」

「早く日本を脱出した方がいいんじゃない?」

「ああ、もちろんだ。資金はもう十分ある。みんなで均等に分けてもとんでもない額だ。一生遊んで暮らせるぞ」


「いやさ、さすがに何十億も貰うの怖いって。誰かに管理してもらいたい」

「そうかな。まあ、その辺りの詳しい話はみんなが集まってからだな」

「おっけー」


 桃枝は再びタブレットに集中する。

 うつ伏せになったり、仰向けになったりゴロゴロと忙しそうだ。

 薄いシャツにショートパンツで妙に色気がある。

 ……いかんいかん。


 俺もスマホでいろいろ調べてはいるが、気になる情報はまるでない。



「ダメだ」

「こっちもお手上げ。海外掲示板もつまんない反応ばかり」

「そうか……」


「もういいや~。てっちゃん、このままシちゃおっかー」

「おう。……ん? なぬっ!?」



 いきなり桃枝から誘われ、俺はドキッとした。

 そういえば、ずっと戦闘続きでご無沙汰だけどな。

 というか、桃枝とはそういう関係はなかった気が……。



「いやー、私もたまにムラムラするわけよぉ」

「そうなのか」

「相手がてっちゃんなら別にいいかなーって」

「俺でいいのか」

「うん。好きだし~、他の男を魅力に感じないもん。日本人でてっちゃんみたいな最強の男、なかなかいないと思う」


 最強か。そんな風に評価されたのはこれが初めてかもしれない。

 とはいえ、悪い気はしなかった。

 桃枝は小さくて可愛いし、陰キャなところは俺と合う。


「なら、まずは少しだけデートすっか。対馬で」

「ほぉ。いいねいいね! じゃ、おんぶしてもらおうかな」

「なんで自分で歩かない!?」

「だって、歩くのだるいんだもーん」


 駄々っ子かよ。

 けど、仕方ないなぁ。桃枝をおんぶしながら、外を歩いてみますか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ