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防弾チョッキのおかげ

 ようやくヴァレンティンを撃破した。


 俺自身かなり血を流して、頭がクラクラしていた。……まずいな。

 倒れそうになっていると北上さんが支えてくれた。



「がんばりすぎです、哲くん」

「……北上さん、ありがとう」

「でも、そんな君が好きです」

「ああ、俺もだよ」



 そう告げると北上さんは耳まで真っ赤にしていた。

 嬉しそうに微笑み返してくれた。


「島を脱出しましょう」

「そうだな。さっさと島を出て……海外へ行こう」


 体を支えてもらい、俺は歩いた。



 やっと戦いが終わっ――『……ドォン!』と嫌な音が響いた。



 俺は腹部に違和感を覚え、脱力した。……う、撃たれた。



「哲くん!!」

「……ぐっ」


「まさか、まだヴァレンティンが!」



 北上さんは俺を支えながらも銃を周囲に向けた。よく見ると死体だったはずのヴァレンティンの姿がない。

 野郎、まだ生きていやがったか!



「……すまん、しくじった」

「大丈夫ですか、哲くん。弾は?」

「大丈夫だ。防弾チョッキのおかげで弾は貫通していない」

「良かったです。なら、しばらくすれば動けます」

「だが、負傷した俺を支えながらでは北上さんが戦えないだろ。構わず戦ってくれ」

「お断りです」

「……なッ」

「大好きな人を放置していけません。死んでしまったら一生恨みます」



 そこまで本気の眼差しを向けられては……俺は従うしかなかった。そうだな、俺もまだ生きたいし、北上さんのことが好きだ。みんなのことも好きだ。


 とにかく。


 ヴァレンティンもかなり深手を負っているはず。

 そう遠くへは行っていない。


 ヤツはあくまで俺たちの殲滅を目的としていた。

 だから最後まで醜く足掻いてくる。

 それがあの男の信念なのか。執念なのか……。


 なんにせよ、まだ勝ちは確定しないわけだ。



「まだ死ねないな」

「その意気です。しかし残念ながら、あたしの銃も全て弾切れ」

「どうする……」

「敵も同じでしょう。だから――」



 その時だった。

 物陰からヴァレンティンが現れ、ナイフを俺に向けてきた。



「死ねええええええええええええ!!」

「ヴァレンティン!!」



 俺が叫ぶと、北上さんはヴァレンティンの腕を掴んだ。

 まるで突風のように突進して彼女は、素早い身のこなしで対応していた。



「――てやッ!!」

「ぐううう!? ……女、貴様ああああ!」



 クルッとひっくり返るヴァレンティンだったが、後退して距離を取った。

 俺の銃弾で重症を負っているはずなのに、なぜ動ける。薬でもやっているのか……?



「なぜ生きている、ヴァレンティン」



 鋭い目つきを飛ばし、北上さんが聞いた。



「頭を撃つべきだったな。体は当然防弾チョッキで守られている」



 くっ、それもそうだったか。

 俺自身が着ているように、ヤツも同じだったわけだ。

 死んだフリをしてやり過ごしていたわけだ。


 敵の動きを注視していると、ヴァレンティンは再びナイフを向けた。


 だが、北上さんがまたも防いだ。



「ロシア軍人はこの程度ですか」

「……き、貴様……」

「母の敵、取らせてもらいます」


「なッ! なんのことだ!?」



 背負い投げでそのまま地面に落とす北上さん。

 俺はとっさの判断でナイフを奪った。



「ヴァレンティン、今度こそ最後だ」

「そうか。この女は……ヤツの娘か」


「北上さんのことを知っているのか」


「たった今、走馬灯のように思い出したんだよ。この女の父親は立派な軍人だった。だが、私の邪魔を何度もしてきた。だから殺してやったのさ……母親の方をな!」



 その瞬間、北上さんは何度もヴァレンティンを殴っていた。何度も何度も。



「……!」

「ごはッ! ごぶっ……ぶふぁぁぁ…………」



 当然の報いである。

 しかし、俺は北上さんを止めた。



「あとは俺が」

「……哲くん。でも」

「大丈夫。今度こそトドメを刺す。確実にね」


「分かりました。お願いします」



 俺はナイフを向けた。

 ヴァレンティンは不敵に笑った。



「……くく」

「なにがおかしい」


「ミグが使えていたら我々の勝ちだった」

「そういえば、ホテルの時は大胆に使っていたな。なぜ戦闘機を使わなかった……?」


「お前たちは何も分かっていない」

「なんだと……」


「本当に恐ろしいのは『八咫烏』なのだとな……」


「どういう意味だ」


「ヤツ等は直前になってミグの使用中止を求めてきた。結局、潜水艦しか許可が下りなかった……。まともに兵器を使えていれば、お前たちは壊滅するはずだった。運が良かったな……!」



 八咫烏が止めた?

 信じられんな。

 一応、手を組んでいただろうに。

 さすがに上空にロシア機の戦闘機が飛んでいたら、マズすぎると思ったのだろうか。そんな単純な理由なのか。



「もういい。ヴァレンティン、お前は今度こそ……」



 直後。


 ヴァレンティンの頭が吹っ飛び、鮮血を浴びた。


 俺も北上さんも真っ赤に染まり、驚いた。




「「な……!?」」




 そ、狙撃された!?


 いったい、誰が!!

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