拳など不要!! 駆逐するのみ
真っ白な閃光がとどろく。
あまりにまぶしく、俺も向こうも腕で視界をさえぎったほど。
しかし俺は、こんなこともあろうかとサングラスをもっていた。すぐに掛け『DSR-1』の引き金を引いた。
ソニックブームのような轟音をともに、弾丸がヴァレンティンへ。
「…………ぐ、がああああああああぁぁぁぁ……!」
鮮血が飛び、ヤツは転がっていく。
弾の尽きた『DSR-1』をその場に置き、俺はリボルバーのスターム・ルガーSP101を構えた。これで決める。
「これで!!」
「……こ、この程度で終わる私ではない! お前たちを全員この世から抹殺し、偉大なロシアを取り戻すのだ……!」
目こすりながらヴァレンティンもハンドガンを取り出し、俺に向けた。
あれはソ連の拳銃『マカロフ』か。
先に撃ったのはヴァレンティンだった。
弾丸が俺の頬ギリギリをかすめていく。
……っぶね!
あと少し距離が違えば俺は撃たれていたかもしれない。今のは焦った。だが、奇跡的にも命中することはなかった。今だけなら神を信じるかもしれない。
「……ッ!」
「な、なぜだ! なぜ当たらん!!」
「軍人なら知っていると思うが、拳銃の命中率なんて意外とたいしたことないんだぞ」
「そ、それはそうだが……今のはあまりに理不尽だ」
納得いかんとヴァレンティンは、神を恨むような目を俺に向けた。俺を恨まれてもな。けれど今ので反撃する隙が出来た。
再びスターム・ルガーSP101を向けて撃ちまくった。
「おのれ!!」
向こうもギリギリで回避していた。
そう簡単には当たってくれないか……!
「哲くん、敵をよく見るんです!」
背後から北上さんのアドバイスの声がした。おかげで俺は冷静な判断が下せた。そうだな、落ち着いて照準を合わせる。
そして、敵よりも早く撃つ。
負けない。
負けてなるものか。
天音のためにも。
みんなのためにも。
未来を勝ち取るためにも。
俺は撃って、撃って、撃ちまくった。
するとヴァレンティンの左腕に命中した。
「ぐおォおおおおおッ!」
だが、スターム・ルガーSP101の弾が尽きた。すぐに予備の弾を装填。しかし、ヴァレンティンの反撃が俺の右腹部に命中。
「ぐううううううぅ…………!」
互いにダメージを受け、膝をついた。
ち、ちくしょ……。
血がにじむ。致命的なダメージではないものの、長期戦はもう無理だ。三分以内には決着をつけないと俺が死ぬ。
ヤツもきっと長くはない。
左腕から血をかなり流している。
お互いにもう余裕はないのだ。
「…………日本人のガキが……。なぜ、ここまで……」
「そこらの高校生と一緒にすんな。俺をただの子供と侮ったな、ヴァレンティン」
「認めよう。お前はただの一般人ではなかった。貴様は立派な兵士だ」
「違う。それは間違っている」
「……なに?」
「兵士ではない」
「なら何者だ」
「俺は――」
――と、答えた。
銃弾の音で掻き消えてしまった。
「……はぁ、はぁ…………」
頭から血を流すヴァレンティンは、まだ生きていた。
呼吸を乱しながらも俺の方へ向かってきた。
なんて奴だ。
俺は銃を向けた。
「なにを……」
「早坂 哲、その引き金を引く前にひとつだけ言わせろ」
「なんだ」
「正直、ここまで追い詰められたのはこれが初めてだった。私は軍や特殊部隊に所属し、辛い訓練にも耐えてきた」
「そうか」
「ロシアを最強にする為に。その願いを叶えるべく、裏組織を編成し……日本の八咫烏さえも利用した。おかげでお前たちの情報が手に取るように分かったのさ。宝島の一件や北センチネル島のこと、オーハ島のことも全て分かっていた」
そこまで監視されていたとはな。
俺たちの動向を注視し、ここまで部隊を整えたというわけか。だけど、俺たちの反撃が思った以上だったと。
でも、そんなことはどうでもいい。
「それで何が言いたい」
「これが最後だ。この私と“拳”で戦え! 男らしくな!!」
「…………」
なるほど、理解した。
俺はスターム・ルガーSP101の引き金を引いた。
『ドォン!!!』
銃声と共にヴァレンティンは倒れ――絶命した。
「………………かはっ」
拳など不要。駆逐あるのみ。
馬鹿だ。こっちはまだ弾が残っているんだぞ。
戦いはこれで終わりだ。
あとは残党をすべて駆逐し、神造島から脱出する――!




