政府の闇・裏組織の存在
「日本政府について話があります」
北上さんは今度は日本のことを話してくれた。
しかし、日本政府って……やっぱり何か裏があるのか。
「どういうことだい?」
「そもそも、我々が宝島に流されてから日本政府の動きがあまりに遅くありませんか。しかも、政府は生徒たちのサポートをするわけでもなく、財宝の入手に躍起になっていたほどです」
そうだった。俺たちが無人島から生還しても、多少ニュースになったくらいだ。日本政府が取り上げることはなかった。いや、それが普通なのかもしれない。
だけど、ここまで扱いが雑なものなのか――?
もう少し親身になってくれてもいいはずだ。
「それと今回のことが関係あるんだな?」
「はい。今の日本政府の裏にはある組織が関わっていると思われます」
「なんだって!? それって……」
険しい表情を見せる北上さん。こんなに言い辛そうにする彼女を見るのは初めてだ。もしや、とんでもない陰謀でもあるというのか。
「哲くんは『八咫烏』をご存じでしょうか?」
「ヤタガラス? ……はて、聞いたことがないな」
「日本の裏組織とも言われている秘密結社のようなものです」
「そんなのがいるのか!?」
「はい。実在する組織です。かつては裏天皇とも呼ばれる存在がいたそうですが、戦後はGHQの接収などによって衰退したようです。ですが組織は存続したわけです」
まさか、その組織が今の日本政府を陰から操っているとでもいうのか。だから、ロシア人がこんな戦争を吹っかけてきても、知らぬ存ぜぬを貫き通していると……北上さんはそう言いたいわけか。
しかし、だとしたら……これはとんでもないことだぞ。
「その八咫烏が介入しているのなら、この国はとっくに乗っ取られているということか!」
「というより、八咫烏が暗躍しているというわけですね。表の日本政府はまったく手出しができない状況です。つまり、今の我々の敵はロシアと八咫烏というわけです」
そういうことか。ロシアは八咫烏と秘密裏に手を組んでいたんだ。だから、こんな派手なドンパチをやっても警察や政府の介入がないわけだ。
情報統制を行い、すべて隠していやがる。
ああ……くそっ!
どのみち、こんな腐った国にはいられないじゃないか。
日本にいても、その八咫烏が俺たちを狙ってくる。
「……なんてこった」
「だから、この国にとどまる理由なんてないんです」
「そうだな。よく分かったよ」
「では、急いで海外へ向かいましょう」
「ああ。だけどロシア人たちは俺たちをそう簡単には逃がさないだろう」
「ええ……。まだ戦闘は続くでしょう。彼らの気配を……殺気を感じますから」
ボルトアクションライフル『DSR-1』を静かに構え、突然撃った。
俺はびっくりした。
いきなり狙撃とは……!
しかも、敵がいやがった。
距離百メートルってところか。近いな。
「迫ってきているわけか」
「そうです。戦わねばこちらが全滅です」
逃げようととも考えたが、それは無理な話か。結局最後まで戦わねば勝利はないというわけだ。
今は戦うしかない。
八咫烏なんて組織を聞いたら、逃げている場合じゃなくなった。
俺は戦う。
戦い続ける。




