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『神造島』脱出計画

 全員無事に集合した。

 大きなケガもなく、むしろ敵は大ダメージを追っていた。

 あれから攻めてくる気配もない。


 暗黙の一時休戦というわけだ。


 けれど、すぐに戦闘は開始されるだろう。


「周囲に敵の気配なし。ここは安全です」


 外の様子を見に行ってくれた北上さん。敵は撤退したわけではないが、立て直している最中なのだろう。

 こちらも同様に立て直す。


「このまま戦闘を続けてもジリ貧だ。そろそろ神造島からの脱出も考えねばならないかもしれない」


 俺がそう提案すると、桃枝が「マジで……」と意外そうに声を漏らす。


「うむ。どのみち相手はプロだ。こっちの人数も少ないし、それに……誰も死なせたくないんだ、俺は」


 全員で生還してお金を分け合いたい。

 そして海外へ移住して悠々自適に暮らすんだ。

 日本にいても俺たちはきっと命や金品を狙われる人生だ。そんなの暮らしにくいし、誰も幸せにならない。


 行くべき場所は決まっている。

 マレーシアだ。


「そうですね。哲くんの言う通りです。我々はなにも勝利を得るために籠城しているのではありません。生き残るために戦っているんです。だから、生きて帰りましょう」


 マガジンを取り換える北上さんは、そんな風に言った。

 みんな納得した。

 そうだ。

 俺たちは戦争がしたいわけではないんだ。


「でも、どうやって脱出するの?」

「いい質問だ、天音。実は……」



 俺はこの戦闘が始まる前に『(ルナ)』と『(ヒカリ)』と連絡を取っていた。彼女たちには今、兄貴の『雷』(いかづち)がついているらしい。

 会ったことはないが、三人は沖縄から脱出したようだ。

 財宝をすべて売りさばき、ついには膨大な金を手に入れてくれたのだ。


 と、同時にこの神造島へ向かってくれていた。


 そう、俺は“脱出”も想定して三人に依頼をしていた。

 おそらく船がこちらに向かっているはず。


 そのことを俺はみんなに話した。



「……よかったです」



 胸に手をあて、万由里さんは安心していた。

 そうだよな。戦闘経験がない彼女からすれば、この状況はあまりに異常。非日常すぎる。無事に帰れるかもしれないと分かり、目尻に涙がたまっていた。


「すまないな、万由里さん」

「いいのです。わたくしが手伝いたくてついてきたので」


 櫛家の支援のおかげで、俺たちはここまで来れた。万由里さんには感謝しかない。


 そんな重苦しい空気の中、千年世が報告に入った。


「起爆装置のセット完了しました」

「よくやってくれた、千年世!」


 そうか、やっとセットが終わったか。

 念のためと神造島の広範囲に高火力の爆弾を設置してあった。これは脱出用に使おうと考えていたものであり、今まさにその時が来た。


 一度起動すれば、五分後には大爆発を引き起こす。

 多分、島ごと吹き飛ばす威力だ。

 だから最終手段なのである。



「とりあえずさ、少し休憩していいかな」



 疲れた顔で腰を下ろすリコ。

 顔も迷彩服も汚れていた。

 というか、全員が疲弊していた。

 そうだな、少しは休憩しないと。


「分かった。しばらくみんな休んでくれ。俺と北上さんでこの地下トンネルを死守する」

 俺は銃を手にして、出入り口付近へ向かう。

 北上さんも一緒についてくる。


「……哲くん。ひとつ言っておかねばならないことがあります」

「なんだよ、突然。怖いな」

「敵の親玉のことについてです」

「え? 親玉って……秘密警察(NKVD)?」

「そうです。ヴァレンティンのことを話さねばなりません」

「アイツか。アイツは何度も俺を狙ってきた。天音も襲われた。今でも許せねぇよ……」

「あたしもです。彼を殺したい」

「……! 北上さん、それってどういう……」


「今こそすべてを話しましょう。彼の本当の目的も」


 もしかして、北上さんは最初から知っていたのか。あの男、ヴァレンティンのことを。きっと今まで話せない事情があったのかもしれない。

 こんな時だからこそ、話す気になってくれたのか。

 よし、まずは事情を聞こうじゃないか。

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