核戦争をもくろむ者 ◆Side:ヴァレンティン
……ありえない。
日本の……ただの学生風情がここまで応戦してくるとは、完全にあなどっていた。やはり、あの『宝島』や『北センチネル島』で生き抜いただけはある。
正直、これほどの武器やドローンなど準備できるとは。
バックに支援者がいるのだろうが、この銃規制の厳しい日本では限界があるはず。
――いや、まてよ。
この国には暴力団という組織がある。もし仮にそのような組織の力を使っているのなら、これだけ反撃できるのかもしれない。
しかし、だとしても。
こちらは精鋭の特殊部隊。負けるはずがないのだ。
「……神造島。思った以上に地形が悪い」
「失礼します。ヴァレンティン大佐」
「どうした」
「敵の抵抗が予想以上に強く、こちらの戦力も削がれております。この霧のように濃いスモークでは突入も難しいかと……」
五分前に敵はスモークを焚いた。
視界が奪われ、行動不能にすら陥っていた。
このままでは突入も難しい。
スモークが晴れるのを待つか。
――いや、この煙を吹き飛ばせばいい。
こちらには爆薬が大量にあるのだから。
だが、まだその時ではない。
今は熟考を重ね、勝利だけを見据える。
「しばし待機だ。私の合図で爆弾を投下し、このスモークとうっとうしい木々をなぎ払うのだ」
「了解しました」
これで良い。
あと十分もすれば、この地形は跡形もなく変わるだろう。
そして、学生共は隠れる場所を失い、ゲリラ戦も不可能となる。
かつてベトナム戦争でアメリカ軍は、こういうジャングルで苦戦を強いられたという。結果、実質上の敗戦となり……撤退したのだ。
自然は思った以上に脅威というわけだ。
しばらくして部下が戻ってきた。
「それで、爆弾の方はどうだ?」
「はい、大佐。準備完了です」
「よろしい。では、合図をまて」
「はっ」
もうすぐだ。
もうすぐ財宝が……そうでなくとも大金が我々のものとなる。
偉大なロシアを取り戻すために、私はこのような組織まで作り上げたのだ。
大統領になり、核戦争を引き起こす。
それが“最大の目的”なのである……!
「後手に回るな。先制攻撃あるのみだ! 爆破開始……!」
「作戦を開始します」
部下は、他の者にも合図を送り、設置した爆弾を――あるいは空からドローンで爆弾を投下して大量爆破した。
『ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…………!!!!!!』
爆風がスモークと木々をなぎ倒す。
まるで突発的に起きた大噴火のようだった。
素晴らしい……。
素晴らしい光景ではないか!
爆発は一分以上は続き、自然を破壊しつくした。
「……これはこれは。山が吹き飛んでしまった」
「大佐。これで奴らの隠れる場所はほとんどなくなりました」
「うむ。よくやった。小隊を向かわせろ」
「了解しました。では、前進します」
約束は今度こそ果たされる。
盟友『橘川』との約束をな――。