激戦と現金化完了
敵は甚大なダメージを受けていた。
海上は潜水艦の大破で大炎上し、炎が広がっていた。あれなら、この組織を指揮しているリーダーも助かっていないだろう。
俺はそう判断した。
しかし、最後まで油断ならない。
残党はまだ数十はいる。
引き続き敵排除の為に、北上さんやその他のメンバーに狙撃を続けてもらった。
その間、俺はドローンの方を立て直して夜空から監視する。暗視映像から通常の映像に切り替えた。
今は潜水艦の炎上のおかげで視界が良好だからだ。
「千年世ちゃん、凄いよね」
「ああ、天音。北上さんのキツイ訓練は無駄ではなかったな」
「うん。おかげでみんな生きてる」
このままならロシア人共を撃退できるだろう、そう思った。
だが、北上さんの意見は違った。
「啓くん。敵があまりに弱すぎる。あそこまで武装していて、この程度とは思えません」
「そ、それはそうかもしれんが……」
――待てよ。あの潜水艦は本当に乗組員がいたのか……?
炎上していて分からないけど。
いや、まさかな……。
「潜水艦がオートで操作されているとしたら……?」
「北上さん、それってつまり……」
「ええ。海からの奇襲攻撃ではなかったということです」
次の瞬間、上空から戦闘機が飛んできた。
ちょ……嘘だろ!!
領空侵犯おかまいなしかよ!!
もう今更だけどな!
ミグが飛んできて、ミサイルをぶっ放してきた。
物凄い爆発を起こし、港を完全に破壊された。人的被害はないものの、防衛ラインを一気に狭められてしまった。
「クソッ! 夜だってーのに戦闘機を飛ばすとはな」
「啓くん。パイロットは夜間飛行訓練くらいしていますよ」
「そ、そうだったのか……。空軍の情報には疎いからな、俺」
しかも、戦闘機だけではない。
輸送ヘリも飛んでいた。
そうか、やっぱり上空から降りてくる気だな。
だが『RPG-7』を警戒しているのか、近くには降りてこない。
しまった……遠方から攻めてくる気か。
ドローンの映像で確認すると、ヘリからロープを下ろして、そこから降りて来ているようだ。
「かなり上陸されましたね……」
映像を見て唇を噛む北上さん。俺もこの上陸方法には予想外だった。
潜水艦はデコイだったのだ。
しかし、島の反対側からも攻められることを想定して、もちろん地雷はふんだんに撒いてある。
「地雷などのトラップで少しは時間が稼げる」
「ほんの少しでしょうけどね……」
その通りだ。このままでは危険だ。
ひとまず後退する。
北上さんと天音を連れて森の中へ。
山奥の小屋へ退避し、リコと万由里さんと合流を果たした。
「てっちゃん!」
「リコ、無事か!?」
「うん。万由里ちゃんと一緒に後方支援してたよ。結構倒した」
万由里さんも無事だな。
特にリコは、スナイパーライフルで敵をかなり排除してくれたようだ。リコの腕は北上さんも認めるほどだ。このまま狙撃を続けてもらう。
「早坂様、わたくし……怖いです。ぜんぜんお役に立てなくて」
はじめての戦闘のせいか、万由里さんは手が震えていた。腰を抜かしさえしていた。そうだよな、こんなの現実ではないと思いたい。
でも、奴らは確実に俺たちを狙ってきている。財宝を手に入れる為に。
だが、もう財宝はない。
さきほど月と星から連絡が入り、財宝の全てを売りさばいたと一報が入った。
これで完全に“現金化は完了”した。
「いいんだよ、万由里さん。君は俺たちに武器を支援してくれた大恩人だ。よくやってくれた」
話をしている間にも連絡が入った。
地下壕の桃枝からだ。
『――こちら桃枝。てっちゃん、敵が地雷を抜けて接近中』
「くそっ、さすがプロか!」
『トラップはほとんど意味をなしていない。どうする?』
「時間稼ぎのスモークをお見舞いしてやれ」
『了解』
半径百メートル以上にスモーク弾を設置してあった。それを遠隔で発動できるようにしておいた。メカに強い桃枝のおかげだ。
おかげで周囲は煙が充満して視界不良となった。ドローンですら捕捉できない。
よし、この状態なら『迫撃砲』で制圧射撃を行う。これで少しは時間が稼げる。