決戦まであと少し
武器の空輸が始まった。
ひとつ、またひとつと武器の入った箱が持ち運ばれていく。
だが、この作業が出来るのも一日が限界だろう。
向こうの潜水艦に悟られている可能性は非常に高い。
その前に可能な限り武器を集めるしかない。
それと防衛力を固める。
北上さんには、トラップを張り巡らせてもらった。
手榴弾や地雷の罠だ。
それと桃枝には、手榴弾を投下可能なドローンを操作してもらう。
「もう夕方か……」
「啓くん、もう体力の限界だよー…」
天音は、ぐてーと椅子に倒れていた。
他のみんなも顔に疲れが出ている。
という俺も、なかなか疲れた。
唯一、北上さんだけは元気だが。
「今日はこんなところでしょう。とはいえ、夜襲となれば今夜でしょうが」
「そうだな、北上さん。これで対応できるといいが」
「厳しい戦いになるでしょうね」
そうだろうな。
武器をそれなりに運搬できたとはいえ、これで足りるかどうか。
かなり心もとないが、今はやるしかない。
決戦に向け、いったん休憩を取ることに。
非常食の缶詰を食べて空腹を満たしていると、万由里さんが俺の方へやって来た。
「ちょっとよろしいでしょうか、早坂様」
「どうしたの、万由里さん」
「わ、わたくし……不安で」
「ああ、そうか。万由里さんは実戦経験はないんだっけ……」
「はい……」
ずっと平和に暮らしていただろうし、そりゃ普通の日本人なら銃撃戦なんてありえない。俺たちが非現実的すぎるのだ。
今まで俺たちは何度も戦ってきたからな。
仲間の為に命を懸けてでも必死に戦える。
だが、万由里さんは違う。
まだ俺たちの仲間に加わったばかりだし、命を懸けてまで戦う覚悟はないだろう。なら、俺は言えることはひとつだ。
「大丈夫。俺が君を守る。だが、いざとなった逃げてくれ。誰も君を責めないよ」
「早坂様は勇敢なのですね。高校生なのに」
「もう高校生とは程遠い存在だよ、俺は」
一般人とは呼べないと思う。
複数の女子を連れ、あらゆる島で銃撃戦サバイバルしている高校生は世界で俺たちくらいだろう。
いったい、俺たちは何者だろうかな。
トレジャーハンターとも違うし。
傭兵団でもないし……。
まあ、なんでもいいか。
「凄いです。早坂様は、こんなの多くの女の子に囲まれ、しかもきちんと守っていますし」
「いやぁ、北上さんも強いし。みんなも身も心もかなり強くなった。俺だけの力じゃないよ」
そうだ。俺ひとりではここまでこれなかった。
きっと死んでいた。
でも、俺は運が良かった。
自分のサバイバル術と仲間の知恵を借りてここまで生き残れた。
万由里さんの支援のおかげでもあって、今は神造島まで辿り着くことができたのだ。
しかも、財宝もあと少しで全てを売り切る。
本当にあと少しなんだ。
「みなさんお強いのですね」
「この戦いが終わったら、報酬を弾むよ。期待してくれ」
「嬉しいです! がんばりますねっ」
緊張が解れたのか、万由里さんは笑顔を取り戻していた。
「よし、武器の使い方を教えるよ」
「ありがとうございます」
北上さんには、天音や桃枝、リコの方を持てもらっている。
すでにマガジンに弾を込めていたところだ。
みんな着々と準備を進めている。
俺たちも直ぐに終わらせるか。




