ハッキングして情報収集 Side:北上
前に倒したロシア人の男『ヴァーシリー』を調べた。
桃枝に頼み、ロシアの機関をハッキング。秘密警察のリストを抜き取ることに成功した。
辿っていくと数百人規模の組織だと判明。
その中のリーダーの名があった。
あたしはそれを見て驚いた。
いや、分かっていたことなんだ。
男の名は『ヴァレンティン』。
啓くんと天音さんが前に襲われ、会ったというロシア人の男。コイツこそが秘密警察を統べるトップ。
歳は31歳と若く、特殊部隊、民間軍事会社ワグネルに所属していたり、傭兵の経歴もある。
かなり軍事経験は長いようだ。
そして今は、あるはずのない秘密警察を再組織して運営していると……。
狙いはやはり、財宝だろう。
数百億にもなる宝だ。けれど、もう大半を売却済み。
お宝を奪うことは出来ないが、お金はまだ取りようがある。
こちらの情報を掴んでいる以上、金銭の要求をしてくる。しかも、自分たちは学生の身分。標的にしやすいという理由もある。
「ねえ、北上さん」
桃枝が退屈そうな口調で言った。
「はい、なんでしょう」
「このヴァレンティンって男、かなりのやり手みたいだよ。戦闘経験は豊富だし、政治もできる。将来の大統領候補だって噂もあるね」
「まあ、現大統領のフーチンもKGBに所属していましたからね」
「そ、そうなんだ」
だからこそ、ヴァレンティンは危険な男だ。
この男はきっと次は本気でこの神造島を奇襲してくるはず。
「桃枝、引き続きハッキングをお願いできますか?」
「いけないことはないけど、リスクも上がるよ」
「無理を承知でお願いします」
「分かったよ」
もっと秘密警察のことを調べるべく、桃枝には情報収集にあたってもらった。
そんな中、啓くんが監視業務から戻ってきた。天音さんと一緒に。
「北上さん、ドローンを飛ばしてきたんだが大変だ!」
「大変、ですか」
「ああ、この映像を見てくれ! 桃枝、ノートパソコンで見れるようにしてくれ」
彼は、桃枝に頼みドローンの映像を落とさせた。
データをコピーしてさっそく再生すると、そこには驚くべき映像が映っていた。
こ、これは……一瞬だけど、クジラのような大きな影が通った。
「……潜水艦ですね」
「やっぱりか!」
「啓くん、これはロシアの組織が用意したものかもしれません。近々、総攻撃に出てくるかも」
「マズイいな。こっちの態勢はまだそこまで万全じゃないぞ」
「いつ攻められてもおかしくないでしょう。早めに行動を」
事態は急変し、武器をヘリで運ぶことに。
簡易的なヘリポートを作ることになり、自分が志願した。
「じゃあ、俺も手伝うよ」
「ありがとうございます、啓くん」
「北上さんに任せっきりは悪い」
「さすがです」
そういう、さりげない心遣いが嬉しい。
だからこそ、ずっと信用できるし今までやってこれた。
啓くんと共に仮設ヘリポートを作るべく、工事を進めた。幸い、道路工事用の舗装機械がある。
半日で完成させ、まずは武器を空輸する。
これしかない。
――その後、無事にヘリポートは完成。
大量の武器の運搬が始まった。