子供作るよ
ドローンでいろんな角度から見ていく。
怪しい船とかは今のところ見られない。
う~ん、問題はないか。
神造島全体が見え、眺めがいいくらいだ。
「これといって不審船もいないね」
「眺めが凄いねえ~。衛星写真みたい」
「そうだろう、天音。高度150mを維持して飛ばしている」
「すごいなー。ドローンってこんな飛ばせるんだ」
「もっと上昇できるけど、これ以上は危険だ。風も強くなるしな」
「早坂くん、詳しすぎでしょ!」
天音は感心しながらも、ドローンに興味津々だった。
監視用に一応持ってきて良かったな。
……さて、変化がないのならそろそろ撤退しよう。
そう思った時だった。
「ん……?」
「どうしたの?」
送信機の画面に怪しい影が映った。
海の底に“何か”黒い物体が見えたような。
一瞬だったから、分からないけど……これは北上さんに相談した方がいいかもしれない。
「急いで拠点へ戻るぞ」
「え!?」
ドローンを撤収させ、俺は天音の腕を引っ張って拠点へ戻った。
急いでキャンピングカーへ戻り、北上さんにドローンの録画映像を見てもらう
桃枝のノートパソコンにデータを落としてもらい、画面に映し出してもらった。
「なるほど、空撮をしていたのですね」
「ああ、ドローンで周辺を監視してみたんだ。――で、五分ほど飛ばしていた時なんだが、ココを見てくれ」
画面の右端に“黒い物体”が映っていた。
それは直ぐに海の底へ消えていく。
「クジラっぽいですが、この辺りに迷い込んでくることはないでしょう。なので、これは『潜水艦』の可能性が高い」
と、北上さんは適格に判断した。
やっぱりか……!
全員が騒然となった。
「マジで……!」
「啓くん、これはロシアの組織が用意したものかもしれません。近々、総攻撃に出てくるかも」
「マズイいな。こっちの態勢はまだそこまで万全じゃないぞ」
「いつ攻められてもおかしくないでしょう。早めに行動を」
北上さんと万由里さんの“交渉”を早急に進めてもらわないと。
今日から監視体制を大幅に強化。
ドローンや盗聴、パッシブソナー、アクティブソナーによる索敵を開始した。
敵が攻めてくる気配はない。
おそらく、こちらの様子を伺っているといったところか。
一日経ち、万由里さんが話しかけてきた。
「あの、早坂様」
「万由里さん、どうしたの?」
「お爺様の件なのですが」
「お、どうかな。武器とか」
「はい、なんとか手配できそうです」
「おぉ!」
「ただ、潜水艦が神造島周辺にいるかもしれないという情報を伝えると……顔色を変えまして、難しいかもしれないと」
「だよなぁ。一時的にも追い払えればいいんだけどな」
「はい。このままでは船を攻撃されてしまうかもしれません」
撃沈されれば、損害はとんでもないことになる。世間にも知れ渡り、なんと説明すればいいやら……。
そんなことはさせない。
だが、どうしたものか。
「う~ん……」
「あ、そうだ」
「ん?」
「海ではなく、空から武器を運ぶのはどうでしょうか!」
「! 万由里さん、天才じゃん!」
「お爺様のヘリコプターなら飛ばせるかも」
「自家用ヘリがあるの!?」
「はい。お爺様の趣味でして」
凄いな。さすが櫛家。そんなものまで所持していたとはね。
「多くは運べないにしても、武器とか弾薬がある程度は物資輸送が可能か」
「はい、少ないかもしれませんが」
輸送機でも飛ばせればいいんだが、さすがに滑走路がないとなぁ。
こんな自然いっぱいの島では無理だ。
となるとヘリだ。
簡易的なヘリポートくらいなら、なんとかなる。
「じゃあ、頼むよ」
「はい、分かりました!」
万由里さんは素直に応えてくれた。
本当に良い人だ。
ここまで尽くしてくれるだなんて、いずれはお礼をしないと。
その間に、俺は作戦を立てていく。
近い内に攻められる可能性があるのなら、徹底的にやらないとな。
それに死者は出したくない。
全員生還する。
もうすぐで財宝も全て売れる。
そしたら海外へ飛び、自由に暮らす。
その為にも……俺は悪魔なろう。
そんな中、水着姿のリコが隣に座ってきた。
「ねえ、てっちゃん」
「なんだ、リコ」
「あたし、てっちゃんの子供作るよ」
「ブッ――――――!!!!!!!!」
真剣な表情と声で言われ、俺はコーヒーを噴いた。な、な、なんだってぇ!?
「だってさ、下手すれば死んじゃうかもしれないじゃん。あたしだけでも、てっちゃんの子供作って……安全な場所で暮らそうかなって」
「き、気持ちは嬉しいけど……でもなんで」
「なんでって、てっちゃんほどの最強遺伝子を残さないとか、世界の損失だよ!?」
いやいや、俺ごときの遺伝子では、産まれてくる子供が可哀想な気が……。けど、そういう願望がないわけではない。
確かに、これだけの女子がいるし……みんな俺を慕ってくれている。
だから、一人や二人と子供を作っても、おかしくはない状況だ。
「そこまで言ってくれるなら嬉しいけど、でも、今は戦力が欲しい」
「そっか~。そうだよね、ロシア人が攻めてくるかもだもんね」
「ああ。財宝を全て売り、ロシア人を倒してから海外へ行く。それからだな」
「分かったよ。ごめんね」
「いや、いいんだ。リコはみんなと話して精神的なケアをしてくれているって知ってるから」
「あ、バレてたんだ……」
「まあな」
リコは、カウンセラーみたいな立ち位置になっていた。もともとそういう仕事で就きたいと感じていたようだ。
俺もたまに診てもらっていたし、楽になっていた。